当初Ua値0.14と表記しましたが0.16の誤りでした。
4ヶ月前から実施設計を始めた原村の家・・・ようやく設計に一区切りをつけ完成した。Ua値は0.16w/m2kと突き抜けた数値になった。
設計図書の枚数はA2サイズの情報量で82枚となり、過去には金沢戸板の家の100枚を超える建物からみれば、特別多い枚数では無い。しかしその内容は濃く、以前お伝えしたとおり、自然に囲まれた山の中のためいつもと違う価値観が必要となる。
例えば外壁・・・。上の写真のとおり大自然の中では木の外壁・・・と普通は思うがこれが違う。お選びになったのは「SGL」。しかも完全にフラットになるスパンドレルのSGL。
建て主さん曰く 「木の外壁は大好きであるが、以前の家の時に、キツツキに悩まされた。木はキツツキの格好の巣穴作業の標的となり痛むので今回は金属としたい」とのこと。私もこれは同意である。大自然に深く囲まれれば囲まれるほど住まいは人工的なシェルターの方が落ち着くのである。一般にメディアで紹介される家では、緑豊かなところを存分に楽しむため、開放的な窓や庭と地続きの部屋を想い浮かべる事が普通だろう。しかしそれは住んでみるとわかるが間違いである。安らぎを求めるときに深い大自然は驚異でしかない。その驚異の中で安心して暮らせる住まいがあるから、大自然を堪能できる。安心感がなければ大自然は驚異だけになる。SF映画を堪能できるのは絶対的安全な所に身を置いてとても危険なドキドキの映像を見るから楽しいのであるのと同じ事。
さて、外壁がフラットな理由は、当読者さんのコメントにもあったとおり、巷で見かける陰影の出来る溝があるタイプだと、溝に蜘蛛の巣が無数にできる恐れがあるから。メンテナンスは出来るだけ長いスパンになるように素材と施工形状を決めている。また外壁がキツツキ防止でSGLなら軒裏も同様にSGLとする方が無難。しかもSGLならスズメバチも営巣し難い。スズメバチはぶら下がる巣の構造上、その接合部分の密着性が悪いと巣を大きく出来ない。よって木の肌のように、また垂木が露出して凸凹があるような軒裏を好んで巣を作る。SGLのように表面がつるっとした部分をあえて避ける。とはいえ決して造らない訳ではないが、驚異は出来るだけ避けるほうが安心できる。
庭と地続きにならなず宙に浮いたような今回の住まい。これも大自然の中での安心感を得るための工夫でもある。家の性能が超高気密でも虫はなぜか入ってくる。アリや時にはムカデなど昆虫はどこからともなく家の中に入る。この時2階のように地面から離れれば離れるほど危険な昆虫は少なくなる。亜熱帯地方の森の中の住まいは地面から縁を切るように居住空間があることが多い。これも地面からの害虫侵入防止であり、同時に地面からの湿気の影響を少なくし風通しを良くするため。少し地面から離れるだけ蚊も少ない。
また南側にあるバルコニー(上写真左部分)には風除室のような大型のガラスで仕切ることができる。完全に屋外でくつろいで気持ちよい季節は意外と少ない。少し仕切って使う季節が多いはず。建て主さんからは冬でもこのバルコニーを七輪等料理に使いたいからインナーバルコニーとしてできるように仕切りたいとのご要望があり、その気持ちはよくわかるので大賛成だった。床はコンクリート(モルタル)にして水も流せるように「半土間キッチン化」している。
このように深い自然の中に建つ住まいほど、外部とのあいまい部分はある一部分のコンタクトだけにしたほうが良い。そのコンタクト部分以外は高い遮断性が居住環境を逆に豊かにすると私は考える。今回はバルコニーがそれに該当する。しかしなぜそこまでして深い自然環境に住まおうとするのか?それは一度本物の深い自然を知ると他では満足できないのかもしれない。原村の家の建て主さんも今回同様の林の中に暮らしていたと伺っている。その時の紅葉の素晴らしい庭やアプローチの写真を見せて頂いたが、キツツキや時折降る雪、寒さ、そして夏の多湿環境は厳しかったという。しかしそれでも同じような豊かな林に住まうことを望まれたのである。同じ「自然」でも本物しか表現できない魅力ある瞬間がある・・・と私は考えている。
コメント
拙宅でもガルバの溝に、蜘蛛の巣が作られております。(涙)
でも、北側だけなんです。
黒系の色なので、温度の関係から北側だけなんでしょうね。