UA値0.16w/m2kでのインナーバルコニー土間

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インナーバルコニー土間の外手すりを施工途中の原村の家。木造では珍しい2方向張り出しのバルコニー。

本年最初の仕事は長野県諏訪郡原村に建築中の原村の家の工事監理。完成間近であり仕上げ前のチェックと建具の打ち合わせがメイン。

インナーバルコニー土間がこの家の最大の特徴である。

建具屋さんとの打ち合わせが終わると各所のチェックとなる。今回の建具は杉無垢材にこだわった仕様。しかも無垢の感性が建て主さんと同期して楽しい。鏡板の取り方一つでも仮に変形してもいいから杢目で一致。うれしい限りである。さてそんな楽しい打ち合わせを終えて半室内土間となるインナーバルコニー土間※をチェック。ここも「無難な」理論で仕様を決めている。
※七輪が使える半屋内土間のこと。半屋内のため真冬は無論、夏の夜も使えるバルコニーとなる新発想のバルコニー土間

出入り口の扉越しにインナーバルコニー土間をみる。

インナーバルコニー土間へ通じるドア越しにそこをみると、氷点下の中で日射で満たされた空間が見える。

日射があれば真冬でも室内のように暖かくなるインナーバルコニー土間

当然建物出隅に設けられているのでコーナーサッシがとりつく。しかしここは半屋外で本来のサッシではない。ここで七輪を使って煙が立ち上るアウトドア料理を楽しむことができる土間床となるので室内でもなく屋外でもない。外気が氷点下でもサッシを閉めれば暖房無しでこのインナーバルコニー土間は暖かい。

寒さを確かめるべくサッシを全開にすると・・・

サッシを全開すれば普通の屋根付きバルコニー。アウトとインで段差0。また天井には最大風量600m3/h以上の排気換気扇と専用給気口でCO対策。

流石にここではアウトドアー料理を楽しむためには防寒着が必要となることがわかる。つまり自然環境が「美しい」=「厳しい」ほど、安全装置がある遊び場が気軽に楽しめ、使えるバルコニーとなり、安全装置がない場合は完全武装しないと楽しめないことになる。

このサッシは完全に壁の中に引き込まれるので、開ければ最初からサッシがなかったバルコニーとなる。よくこのような完全引き込みサッシを室内リビングに使っているのを見かけるが、あの形態では最初こそ開けて使うが、あるときあることに気づいて使わなくなる。そう、虫がダダ漏れになるから使わなくなる。多くの人が新築するまでは知らないと思うが、最近の高気密住宅はゴキブリはむろん、スーツに穴をあける蛾の幼虫もいない。つまり虫が外から入る隙間がなく、網戸がしっかり閉まるので持ち込みさえしなければゴキブリはいないことが半永久に続く。しかし上のような全開サッシをつかい網戸無しで過ごすと、ゴキブリは入ってくるし、羊毛を食べる蛾が入り、防虫剤を使う事になる。よってゴキブリや防虫剤を嫌う人は全開サッシを全開で使わなくなる。

インナーバルコニー土間の床はモルタル50mmと厚く多少の直火が落ちて触れても問題ない。当然水洗いも出来るようにFRP防水を仕込む。一方バルコニー床はアイアンウッドで両方とも裸足も靴もOK。

ところがこのようなインナーバルコニーならこの全開サッシが生きる。氷点下でのアウトドア-的雰囲気も味わえるし、夏の夜は網戸を取り付けて虫を防ぎつつ虫の音色は聞こえる環境を楽しむことが出来る。そしてドアを開けて家の中に入ればそこは空調の効いた低湿度の快適な空間となる。これは「て・こあ」の曖昧な屋内空間の良さと「「緑の家」の快適空間の合体である。

アウト側のバルコニー床はアイアンウッド製でメンテナンスフリー。手すりで触れるところは氷点下20度の環境で素手による凍傷がないようにウッドとする。

手すり支柱はメンテナンスフリーのステンレス製の特注品で、手が触れる笠木の部分だけアイアンウッドを施し、氷点下で不用意に素手で触れた時の凍傷を防止する。インナーバルコニー土間は暖かいのでつい素手で触れがちであるが、濡れた手で氷点下10度以下の大きな金属に触れると、表皮に損傷が起きる場合がある。また階高が低い二階なので、手すりは風景を阻害しないように最小限にしている。もし危険性を感じる環境条件となれば、網をはればよいだろう。

インナーバルコニー土間で火気を使用する時に最も注意が必要なのはCO中毒である。対策として排気量600(350)m3/h以上のシロッコ換気扇を設置。部屋の気積は六帖部屋程度である。同様の気積で単純なプロペラファンの475m3/h程度の換気扇での実測結果※によると、練炭や木炭を連続燃焼させてもCO濃度は100ppm以下で安定。七輪での木炭燃焼でも同様と考えることができ、弱の換気量の350m3/hでも強火以外なら問題は無いと思うが、強のシロッコファンの換気量の600m3/hなら大型の七輪でも問題ないと考えられる。
※エビデンスは東京都生活文化局消費生活分生活安全課資料による。

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