また今年も1月17日がきます。6000人以上が建物の圧死で亡くなった阪神淡路大震災から早16年です。そしてこの寒い時期だからこそ身にしみる「断熱の話題」を絡めて読み解きます。
建て主さんがお読みになると大変ショックかもしれませんが、多分本当の話です。
昨年の報道では「省エネ住宅義務化」と宣言されておりますが、記事をよく見ると2020年を目処にとなっており、義務化と言ってもまだ9年先のことです。住宅は一度建てられると30年以上は存在するため、一番早く手を打たなければならない存在です。地球温暖化、低炭素社会が急務の中なぜこんなにゆっくりとしたペースで義務化が行われるのか・・・それを解説してみます。
9年先に義務化と言っても実はこれは一般住宅だけで、大型建築や大規模分譲地を手がけるデベロッパーさんの住宅には昨年から既に届け出の義務を含む義務化とトップランナー方式が始まってます。
なぜ一般住宅だけこんなに遅いのか・・・。
それは一般住宅にはある秘密があるからです。
それは・・・
耐震性をチェックしなくてよい「4号特例」と言う法律
これは・・・
現在一般の住宅は、その構造安全性を行政でチェックしなくてもよい決まりになってます。
「建物に耐震性があろうがなかろうが行政は関与しないよ」
という法律です。
ですので、今たっている建物が建築基準法で定められた耐震性があるかどうかは設計者にしかわかりません(長期優良住宅に認定された住宅を除く)。
建物で一番大事なのは「安全性」に尽きると思いますが、
その一番大事な安全性を行政がチェックしていないのに、
快適性、省エネ性の要素で「しかない」の「省エネ性」のチェックを義務化できるはずがない。
と言うのが最大の理由です。
「しかない」としたのは安全性に勝る他の性能はないからです。
これは議論の余地はありません。
たしかに宣伝ではバランスがよい建築をと私も訴えてますが、
省エネ性が欠けても生命の危機はありませんが、
安全性の欠如は即、生命の危機となります。
では耐震性のチェックを行政がすればよいのでは・・・
と思いますが実はこれは行政側は賛成なのですが、
建設団体が猛反対しているのです。それは
①確認申請が大変
②確認申請料のアップ=建築が減る
です。
行政(確認審査機構団体)は②の確認申請料アップは大変喜ばしいことで、
今後人口が減り住宅着工数が減る中、売り上げを増やさなければ
団体の存続の危機です。
今の住宅の確認申請の半分以上は純粋な行政ではなく、確認審査機構である
株式会社や財団法人です。売り上げが減れば利益がなくなり大変な事になります。
だから売り上げが増える確認申請料アップは諸手で賛成となるわけです。
一方建設団体は確認申請のアップは実はそれほど大変ではありません。
アップした料金は建て主さんから頂けば問題ありませんし、
このような理由のアップを拒否する建て主さんも少ないはずです。
またこの理由で建築も減りません。仮に5万円確認申請がアップしても
2年前に施行された瑕疵担保法の保険料10万/件のほうが2倍も高いのに
建築件数は減りませんでした。
では最大の反対の理由はなんでしょう。それは・・・
①の確認申請が通らなくなるからです。つまり今まで適当に行っていた
建物の安全確認では確認が通らないので困るからです。
果たしてこんな事で阪神淡路大震災の教訓を生かせるのか?
犠牲になった人の事を考えると、こんな理由で安全性の向上を
先延ばしさせる建築業界団体なんて
要らないのではないかと思います。
その業界を支えているのが実は地方の中堅中規模建設会社なのです。
私は同じように4号特例の廃止は反対ですし、省エネ義務化も先送り反対です。
特例廃止は建て主さんの更なる出費となるため反対。
本来設計者が法を準拠した耐震性のある建物を作ればよいだけ。
今でも当たり前に行わなければならないことです。
廃止にしなくても今の法律守るだけで耐震建築はできます。
何のための建築士という免許、資格なのでしょうか?
そして法に違反したら、建築免許停止又は免許返納という
重罰則にすればみんなしっかり耐震性をチェックしてしっかりした建物が
できると思います。入り口を狭くする日本独自の規制ではなく、
違反したら罰則を重くし、業界から退場して頂く。こちらのほうが
建て主とって凄くメリットがあります。
建物の設計業務委託契約とは民間同士の契約です。そこに行政の
更なるチェック強化はふさわしくありません。
契約違反したら賠償や罰則を大きくすればよいという、
世界では当たり前の考えです。
6000人の尊い命を無駄にすることなく次の世代に引き継がなければなりません。それが生きている私達の使命です。
是非罰則強化か最悪でも4号特例廃止を・・・