2023年建築学会梗概集からの 論文⑤ 床下暖房その2

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このブログにある図や文は全てこちらの梗概よりの転載

さて床下暖房の続きでその2である。

その1とおなじ再び家の概略図を載せる。

この床下暖房の仕組みは図を見る限り床に半分埋め込まれたエアコンで床下空間に温冷風を吹き出して更に床への吹き出し口は自然なガラリではなく送風ファンをつけている。エアコンの送風量は通常800m3/hを超える設定も可能なので、どのような風量の送風ファンを設置しているか知りたいところであるが、記載はない。仮に1つあたり100m3/hであると1階で500m3/hで2階で400m3/hと、差圧はほとんどない状態。また床下の有効高さ(容量)も気になるところ。

クリックで拡大。夏期冷房時のエアコン吹き出し温度が高い(20℃前後)。もし冷房モードならこれは顕熱比が高く除湿はほとんどない温度である。

図6の熱流の収支(上面と下面の熱移動量)で洗面所が特に収支が合わない。スラブ下面では-4Wであるが上面では-10Wとなっている。つまり垂直に熱が移動している上下量がほぼ同じでないとつじつまが合わない。熱流計は測定面状況で精度が良くないときもあり、このときのために同じ場所のスラブ上下に熱電対で温度も同時に測るとよいと恩師に助言されたことを思いだした(この実測でもあるとおり)。この箇所は上面は断熱材がある面での測定であり、下面はスラブ下の面であるが、スラブ下の面の状況は打ち込み時に機器をセットしないと無理だと思うのでその状況がわからない事が欠点である。もしかしてスラブをくり抜いてセット出来るようになっているのか・・・。それなら逆に本来触れている土(砕石又は防湿シート)が触れずに空間が空き、正しい状態(一般的なスラブ下の環境)での測定はできないと思われる。または、その1でお伝えしたとおり概ね外気から2m未満スラブ端部は、この垂直方向に熱が移動するに加え、鉄筋なども含めた外気に接する水平方向に熱が移動する可能性が結構あることになる。

次ぎに各条件での温度分布である。暖房時は総じて床下ACから遠い部分で条件④が低く見える。一方冷房時は誤差の範囲かなと感じる。つまりこの基礎条件で暖房時には基礎仕切壁がない方が温度が隅の方までいく。一方条件①のみスラブ中央部に断熱材有りだがスラブ中央断熱材の有無では温度的にはそう変わりないように見える。

次ぎに24時間換気のSAが床下に吹き出されているが、この吹き出し位置で冬期は床下空間の温度に変化があるとのこと。また中央に追加された基礎壁の影響もこの建物条件ではあり(スリットならその隙間はわずか30mm程度)、壁があるとそのさきは暖気や冷気(SA)などが行きにくくなっていることがわかる。これらは基礎の断熱性能や床下と1階との隙間、エアコンの吹き出し風量にも影響を受けるので、今回の条件では上の図となる。

温度に影響を与える因子が多すぎてこれを他の床下暖房の家として見ることは直ぐには出来ないが、傾向はよくわかる。床下エアコンの実測は時間がかかり、しかも一年サイクルとなることで数年の実測が必要となる。これは論文テーマとしては厳しいこともある。にもかかわらずこのような長期実測を行ってまとめて頂いたことに実務者として大変ありがたい。

ただ・・・持論であるがなぜ新鮮空気をわざわざ床下にいれたがるのだろう。これはいつも疑問に想うことである。

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