無塗装の木の魅力 超仕上げ その2

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写真ではわずかな違いだが触れたときに違いがわかる木の表面。左側は特にあとで説明する脂線も見える。

その1では市場に超仕上げの木の製品が少なくなっていると説明した。

その理由は・・・

その理由は?の前に・・・私と超仕上げの木材との出会いを少し振り返りたい。

写真は2013年の管理している山の杉伐採時で、この大きさで樹齢70年くらい。

無垢の木の床を扱ってからはや33年が経過する。最初の出会いは樹齢800年を超える「米ヒバ」の丸太を板状にわり、その後釜(いわゆるDry Kilun)に入れて人工乾燥。それを取り出してからしばらく外気に放置して馴染ませ、粗挽きしてからモルダーで板状にする。そして超仕上げ機に通すと・・・今まで見たことがない木の面をみることになった。これは私がまだサラリーマンだったころ、その勤めていた会社にはそのような製材施設があり、ある案件で建て主さんから支給された丸太から床材をつくって戸建て住宅に使用する計画の設計責任者だった。その時に木のその素面に感動した。しかし・・・

私は凡人なのでその感動をそのまま何かにつかうとの考えまでに及ばなかったのである。これが変わったのは自宅の建築である。現在築32年の拙宅の家は、無塗装の木がそのまま使われている。当時の無垢の木は「ラワン」だったが、カンナ仕上げがまだ出来た時代のため、ラワンのカンナ面に触れる生活したことが、「緑の家」の原点になっている。なぜラワンのカンナ面に触れる事ができたかというと・・・

当時経済的に余裕がない中で、どうしてもまだ特殊な建築方法であるため単価の高い「高断熱高気密住宅」を作りたくて、塗装費用を削減するしかなかったのである。しかも当時は大工さんによるカンナ仕上げがまだ普通に行われていたので、ラワンといえどもカンナ仕上げだったのである。この木に塗装をしない選択をした事が無垢材の無塗装を推進する結果になるとは思わなかった。当時子育てまっただ中で、時代も塗装した木の積み木より無塗装の木の積み木を選ぶくらいだから、自宅の無塗装の木の触感はツボにはまる。当然この平成初期は床で無垢材なんてつかっている住宅はなく、一般的な床にはフローリングと呼ばれた合板に塗装した床であり、窓枠は塩ビシートが貼ってある合板だった。しかしこの後急激な円高で海外の無垢材の価格が下がることになるので、現在のように手軽に無垢材を使うようになる。

さて、「自然・無垢材の中で」超仕上げのすくない理由だが・・・

A.室内のインテリアで針葉樹がすくない。

B.木を無塗装でつかっていない。

C.超仕上げは手直しができない。

と考えられる。

広葉樹で落葉樹の代表格であるナラ(オーク)の床材の無塗装面

まずAの針葉樹とは・・・になるが、針葉樹と対比する意味に広葉樹があるが、ここでは針葉樹=準寒冷地の常緑樹とする。準寒冷地の常緑樹対比するのは準寒冷地の落葉樹となる。枕詞に準寒冷地(日本の本州程度)とつくのが重要で、準寒冷地の常緑樹と熱帯地の常緑樹とは別物と捉えてほしい。何が違うかというと・・・氷点下の気温になるところでの常緑樹なのか、氷点下になることのない環境の常緑樹なのかを想像するとよい。つまりここではAの針葉樹とは「杉」「ヒノキ」「松」「ヒバ」等の樹木を指す。一方Aの針葉樹以外の広葉樹は落葉樹である「ケヤキ」「ナラ」「ポプラ」「カエデ」「サクラ」「栗」などの樹木を指す。日本の建築物は常緑樹と落葉樹を組み併せて適材適所で木を使っていた。特に杉、ヒノキは癖がなくまっすぐな木なので使いやすく貴重だった。今でこそ杉は安価であるが、明治以前はお金持ちの建築物のみで杉やヒノキの大木が多く使われていた。一方古民家はどこにでもある雑木で、加工に手間がかかる曲がり木(広葉樹で落葉)を小屋組につかい、お城や武家屋敷には製材したヒノキや杉(針葉樹で常緑)を小屋裏にも使う事があった。話を戻すと柱や見える梁は杉のようなまっすぐな木を使うので、目に見える部分は針葉樹が多くなった。これが和風と呼ばれ杉やヒノキがあると和の感じのインテリアになりやすい。一方ナラ等を床や戸枠に使うと洋風に見えやすくなる。近年は和風を嫌うので洋風インテリアが多くなる。

広葉樹で落葉樹である無塗装のナラの木に水を拭きかけると木の繊維が浮き出て毛羽立つ。

そこで次のBであるが、針葉樹はそのまま無塗装で使って肌触りが良いのであるが、ナラなど落葉樹は無塗装で使うとざらつきがでる。それを試したのが上の写真。このため表面になにか塗装をする事になって、塗装(オイルでも)のノリも良かったので、着色して更に洋に見えるインテリアになる。ここで広葉樹で落葉樹のナラを何故塗装をしなければならないかというと、「落葉樹」だからである。立ち木の内部の半分の重さは水分である。冬寒い中でこの半分を占める水分が凍ると自身が破壊され死んでしまう。これを防止するために自身から余計な水分を取り去るために葉を落とし活動を休眠する。これが落葉樹の特徴である。一方常緑樹である針葉樹は、冬も葉が有り活動しているので氷点下になったときに水が凍らない工夫が必要になる。それが「脂」である。木の表面の水分を脂に変え凍結させないようにしている。脂は所謂「油分」であり、常緑樹である針葉樹は木の中に脂をもっているのが、落葉樹と決定的な違いである。葉を落とすことで身を守れる油分の必要がない落葉樹は、伐採後に水にふれると細かいササクレがでやすい。これは油分以外に導管構造のせいでもあるが、やはり油分がない事も大きな原因と言える。

「緑の家」で標準的なヒノキの床材から滲みでる「脂」≒「油」濡れ色が脂。
こんなに光って脂がでているのに、手で触ってもベタツキはないのがヒノキや杉材の特徴

この脂(油分)は木を伐採しても木自体にあり、上の写真のように黄色い筋となり目に見える。「緑の家」の見学会でも常に見ることはできる。また脂というとあのベタベタするものと想像してしまうが、ベタベタする脂は松に多い。海外の木なら米松、SPFやホワイトウッド。一方日本のヒノキと杉、ヒバは脂をもつがこの脂はベタツキが非常に少ない。そのため脂があるまま使える。つまり正真正銘の天然オイルが既に塗られている樹種といえ、この油が足の裏でこすれて伸ばされ艶になる。 飽きてしまいそうなくらい針葉樹の説明が長くなってしまったのでこのあとのことは「その3」で案内する。

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