査読論文から
無垢材とアルコール(塗料)

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今日のブログの図や記事はこちらの論文からの抜粋

春の連休も近いのでゆっくりと論文でもご覧いただければと思い、今年発表された査読論文から面白そうなものを取り上げる。第一回目は「無垢材とアルコール(塗料)」とし、「緑の家」でも大量に使われる木材の揮発性化学物質についてご紹介する。

上は論文の目的が記される部分なので全文を載せる。
私がこの論文に興味を持ったのはいつも無塗装で使われる「緑の家」の床のヒノキや、窓枠材の杉が、アルコール成分が入っている塗料を塗布したときにどの程度体に影響のある揮発性有機化合物を発生しているかを明らかにしているためである。

無垢材にアルコールが塗布されると、ADHにより人体に害をなすアセトアルデヒドが放出されるという。ADH(アルコール分解酵素)とはAlcohol Dehydrogenaseともいい、人が酒を飲んだときにアルコールを最初に分解する酵素である。これが無垢材のヒノキや杉にもあるという。よってアルコールをそれらに塗布すると、ADHの働きでアセトアルデヒドに変化する。このときに酸っぱいような匂いが感じられるとのこと。なるほど・・・。

上のはじめにの続きである。

論文によっては実験方法が少しおかしな事もあるが、今回の論文筆者らはこの分野で相当数の論文を発表しているので安心できる。方法を簡単に述べると対象物(木4種とステンレス)に対してアルコールを塗布前と塗布後で揮発性有機化合物の濃度をはかり、また人の臭覚も評価の手段(官能評価)として、それを実験結果としている。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 230424.jpg

下図はその濃度結果。杉、ヒノキ、シナ、針葉樹合板の4種類の木材と比較するためにアルコールを分解する酵素のないステンレスにも同様に行なっている。

この表を見るのが面倒な人のため簡単に解説すると、アセトアルデヒドに限れば、シナを除く3種類の木材がアルコールを塗布後のほうが濃度が高く、シナだけ低くなっている。なぜシナが他の木と真反対の結果になるのかについては大変興味深い。

人が容認できるかのグラフ。アルコール塗布前と塗布後。

論文では、細かく評価しているので必要とあればご覧頂きたいが、まとめるとシナを除く木類では一様にアルコール塗布によるアセトアルデヒド濃度が増大し制限値を越える。一方その状態でもヒノキでは、125分越えると官能評価では不快でないとの評価に変わり、ヒノキが放出する天然系の香り成分でマスキングされるのではないかとなっている。わずかな対象実験であるが「緑の家」が使用する標準床材の「ヒノキ」が日本人暮らした生活において最もなじみある香りであるともいえ、25年間ヒノキの無塗装の床をお薦めしてきて良かったと思っている。オイル拭きを含め塗装はやはり問題がありそうなことがわかる。

但し、ヒノキはその強い香りゆえ人によっては強すぎる揮発成分となり、その場合はヒノキより穏やかな香り成分の杉がよいと思われる。

ご興味がありご連絡いただければ全文のファイルをメイルでお送りする。

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