「緑の家」の窓について 3 
「真」南以外ならメイン窓の方位は北がよい

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私は設計を業としてからこの35年で数か所の一軒家で暮らした。この「暮らす」とのことが大事で、一日体験したとか、データを取っただけではわからないことが沢山ある。今回の3ではご批判もあり賛否両論あると思うが、私の窓に対するスタンスは省エネより窓先景観を優先するのである。

2013年8月15日午前9時頃撮影。建物が完全に真南なら大きくない庇で午前中の低い太陽仰角でも室内に直射日光は入らない。

「て・こあ」という建物はほぼ真南を向いて主窓があったので、この時は本当に真南のありがたさを感じた。それは一年中を通じて窓から入る日射のコントロールが絶妙であり、ほしいときにしか日射は室内に入ってこない。冬季は日射がしっかり部屋奥まで入るし、夏季は少しの庇の出があれば(この場合600mm)ほとんどの直達日射をその庇で防いでくれる。また北側も日射があたりじめじめ感はない。これが15度でも触れると途端に仰角が低く室内に不要な日射が入ってくるようになるし、北も終日日影ができじめじめ感は起きる。いままで真南に建物の合わせられるような理想的な敷地で住んだことがなかったので、推測はできたが実際体験するとその利便性に驚く。また東南に主窓がある「otomo vie cent」では太陽光の仰角が高い夏季でもやはり午前中に日射が入りやすくなる。「て・こあ」と比較し住んでみるとその違いは歴然である。しかし東南道側が最もよい景観と庭配置なのでここに主窓がある。

ドレーキップ+FIXの連装で製作最大寸法の窓が真西にある。

西に主窓がある自宅(寺泊)では、方位など全く無視して景観の良い方向(ほぼ真西)に省エネ思考では考えられないほど大きな窓があり、この敷地条件でこれ以外考えならない窓配置である。北側は日射が当たらないあが、「て・こあ」と違い山など抱えていないのでじめじめ感は気にならない。

このように窓配置は日射が入りやすいことで主窓を決めることは少ない。ただし同条件であれば南方位(東南から南南西の約70度)を優先することは特に関東ではある。

偶然にも真南と視界が開けた東南方向がほぼ同じ神奈川県の家。しかしそれでもガラスは遮熱型を採用している。これでも実際には冬季でも暑くなり過ぎ・・・。
東南の方位の景観が最もよい。

一般的に都市部の1戸建て住宅の標準的な敷地(50坪以下)では道路側がメイン窓の方位になる。周囲3方は隣地であることが普通だ。この場合は特にメイン窓の方位は選べず道路側がメインになる。

次に郊外の家の場合は、敷地の大きさが50坪以上あるのでメインの窓方位は選べることがある。この時に「緑の家」では南方位を優先することはほとんどない。通常はその敷地で最も視界が開けた方位を主窓の位置として計画する。決して南側優先ではない。このことは先回の「「緑の家」の窓について2」でもお分かりとおり南側からの日射供給を主としては考えていないからである。南側以外の窓は小さいほうが良いと一括りにまとめる超高断熱高気密住宅はあるが、私はその考えには賛同できない。

仮に南側に3m程度空き地ができたとして、その先に隣家の窓がきていれば南側に計画した窓は日中もカーテンが閉めっぱなしになってしまい、期待した日射による熱の供給は2/3から半分になる。私はカーテンがなくとも視線を気にすることのない窓ができたほうが、その家に住んでいて気持ちがよいと感じる。但し人の価値観は多様で、窓外に全く興味がない方もいるので、その場合はカーテンを常時しめていてもよいため南側窓が主となることもあろう。

よく教科書的に南側の窓から冬季の日射の恩恵を受けることを優先する考えが大手を振っているが、実際の敷地においてそのように住まうことは難しい。冬季の日射の仰角は0~31度程度であり、お隣に2階建てがきっちりあれば、一階窓からの日射はほとんど望めない。敷地60坪以上ありかつ隣棟間隔が6Mは最低ほしいところであるから、冬期の日射に期待するのは難しいのである。

逆に90坪くらいの郊外的な敷地では、緑豊かな風景を期待して家を建てるので、その時に窓にカーテンがある前提だとつまらない。そこで南側方位に限らず緑が最も見える方位を探して主窓を設けるのである。

結局のところ「緑の家」ではどう考えているのか?

冒頭のとおり一番は北側にカーテンを閉めなくとも良い景観があることが最もよく、また真南であれば同一で一番となる。その他はどの方位に主窓があってもみな同じだと考えている。ただし周囲環境により北側にじめじめ感が大きくなりそうなところはケースバイケースとなる。

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