
オーブルデザインは20年先をいく理想的な仕様を安価に提供できるように、「緑の家」として仕様をつくりお勧めしてきた。実績として2008年に現在の断熱等級7相当の超高断熱住宅をすすめており、15年前の2011年には全棟が超高断熱高気密住宅(旧Q値0.9以下Ua値0.29以下で現在の断熱等級7相当)に移行している。また耐震性も28年前の創業時1998年から全て許容応力度設計による構造計算を行って最低耐震性を耐震等級2相当以上として全棟お勧めしてきた(2020年から耐震等級3が最低となり、県内に至っては等級3の1.1倍が最低)。あれから15年経た今、ようやく耐震性も温熱性も「緑の家」と同じ水準が必要であることが理解されてきていると思う。そこで次の目標は劣化防止の理想を考えた仕様をお勧めしたい。劣化防止性能は、耐震性能ような絶対的な安全性や温熱環境のような快適性といった住んでいて直ぐにわかる性能とは違い、各人の価値観でによって大きくかかわる。この為従来通り高基礎による高い劣化防止性の木造住宅の「緑の家」をお勧めしていくと同時に、さらなる劣化防止と維持管理の高みを目指しS造(主体構造が鉄骨)を正式に追加してお勧めしていきたい。
先ずなぜいまS造なのか?であるが、その理由を3つ程上げたい。
1.主要構造体であるスチールはカビが生えない
最近↓のような情報に触れたことがあるはず。

「ある有名な建築で木の格子が朽ちた。そこで付け替えを同じ木で検討したが、耐用年数が短くアルミの格子に変えた」
これは屋外暴露で使われたための極端な例であるため参考にはならないと思うが、木は天然の有機物であり、このような天然の有機物生物は生物からの攻撃を受け必ず劣化する。その代表例がカビと白蟻である。カビは相対湿度65%以上で活性化し、RH80%を超える状況だと一気に増える傾向がある。室内は確かにRH80%を超えない環境をつくれるが、壁の中や床下内はとても難しい。特に超高断熱化すればするほど壁内で、又は床下内で高湿化する可能性が高く最悪結露する。これはS造でも避けられない。しかしS造であれば柱や梁、床などの構造体に直接カビが生えることはまずないが、木造は異なる。主体構造が木であるためカビは柱や梁に生えるとても可能性が高い。カビは木を腐朽させず耐震性が守られるが、カビ臭が発生してどうしても古い家の匂いが残る。この匂いこそ建て替えの原因となる可能性が高いと考えている事は10年前からお伝えしている。その考えは今も変わらない。その時にS造であれば柱と梁、コンクリートの床を残してリフォームしてもカビ臭が残ることはない。それも2年前に下のとおり実証済み。

2.S(スチール)はシロアリに加害されないので半永久的に耐震性が確保される
今までの「緑の家」は土中型シロアリ(イエシロアリ、ヤマトシロアリ等)に対し万全なメンテナンス性と半永久的効果がある予防措置を提供しているが、近年被害が多くなり今後も増え続けるアメリカカンザイシロアリに対し、残念ながら無力である。でもこれは「緑の家」に限らずS造、RC造を含めほとんどの木の材料を使う家に対していえる事。しかし木造特有の問題は、構造材がシロアリに侵されたときに耐震性が脅かされ、安全性が担保できないことが最大の問題で深刻となる。これに対しS造やRC造はその心配が全くない。木の部位が加害されても構造材のスチールは加害することはできず、シロアリ由来の耐震性の安全性は半永久的に確保される。一方で木の構造でもホウ酸塩による防御があれば問題ないとの意見があるが、そのホウ酸塩塗布の先進国の米国ハワイ州では、少しコストに余裕がある家の多くがRC造やS造を構造体としている。この理由はアメリカカンザイシロアリとその気候である。気候については別にまたご紹介したい。また獰猛なイエシロアリに対し一部のホウ酸塩は少し弱い面もあるとの報告もある↓。
https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/wp-content/uploads/2026/03/ピレストロイドとホウ酸塩.pdf
仮にS造で使用された内装木材部がカンザイシロアリの被害を受けた時にでも、木材部分を全て撤去するようなリフォームを行えば、リフォームの確認申請を必要としないことも可能なほど、主要構造部には影響がない。このことは当事務所S造リフォーム記録見て頂ければわかる。そして最も強く申し上げたいのが、アメリカンカンザイシロアリは駆除工事が容易にできない理由がある事と、完全駆除も大変難しいことにある。この理由が「緑の家.S」の仕様を勧めする理由となる。その理由を下に示す。
理由① 近所の目があるのでアメリカカンザイシロアリの駆除ができない
アメリカカンザイシロアリは元々日本には存在しなかったシロアリ。そのシロアリは輸入が盛んになった昭和以降(統計的には1976年に東京都で被害報告)である。統計を取ると港周辺から広まったとされるが、時には内地に点在して発見された例もある。これは輸入された家具や木材に取り付いて内地まで運ばれたとみられている。↓リンク先にはアメリカカンザイシロアリのいる主要都市名があり、具体的に上げると東京都、仙台市、尼崎市、神戸市、西宮市、粉河町、古座川町、すみさ町、延岡市、熊本市とある。
https://www.hakutaikyo.or.jp/ebook/bak/no_177/#page=13
更に公益法人日本しろあり対策協会の公表しているアメリカカンザイシロアリの地図は下のとおりである。

このアメリカカンザイシロアリが出た家の駆除をするとなると、大掛かりな駆除となる例が多い。これはアメリカカンザイシロアリの生態特徴にあり、このシロアリが群飛も不定期で且つコロニーを分散してつくるため、他の土壌型シロアリより駆除を広範囲にしなければ効果がうすく、再発する可能性が高い。このエビデンスは公益法人日本しろあり対策協会の技術レポートである。

上写真の公益法人日本しろあり対策協会の公表している機関紙「しろあり」2022年の7月号をご覧頂ければわかるだろう。読めば読むほどに駆除が如何に困難かわかる。
画像をクリックしなくても下にそのまとめを置くが、この報告書は現地で実際に行った駆除記録なので、実験室内でもなければ机上の空論ではない。だからこそ肝が冷える思いである。日本の事情という住宅が狭い敷地に隣接される条件では、特に下の赤線で示された箇所は、アメリカカンザイシロアリ駆除は事実上困難ということ表現になる。

特に私が恐怖するのはその報告書にあった下の写真である。

私はこの写真で驚愕した。なんと和室の見える柱や障子の桟にも加害が及んでおり、ここはホウ酸塩ををはじめとする薬剤処理には不適切な場所であることだ。今までの土壌型シロアリなら柱の加害はあってもこのような断面の小さい障子枠などには加害することはほとんど見られない。特に週に一回でも可動する部位の障子戸には蟻道が破壊されるので取り付くことはない。しかしながらアメリカカンザイシロアリは乾いている木を食べることができるので、このような小さな断面の障子戸の枠まで加害できる。つまりこのくらいの木の断面があればそれは全て加害対象(白アリの巣)となる。木製の机、ベット、書箱、椅子、箪笥・・・木でできていれば樹種を選ばず加害対象になる可能性がとても高い。このことから薬剤では完全防御と駆除はできない。完全駆除ができなければ、アメリカカンザイシロアリが居残った箇所からまた羽ありが空中を飛び、増えていくのである。これを踏まえアメリカカンザイシロアリに対し最も効果的なのは燻蒸処理で、最低でも発生した家を丸ごとラップして行い、できればその近隣でも駆除を行わなければ再発の可能性があると上で紹介した報告書では指摘している。しかしもしそんな家をラップし燻蒸した光景をご近所さんが目にすれば、ただ事でない事態であることがわかり噂が広まる。
「Aさんのお宅から特殊なシロアリが出て駆除したらしい・・・」と。もしそれで他のご近所さんから数年遅れでアメリカカンザイシロアリが発見されたなら、「Aさんが持ち込まなければ私の家も被害がなかったのに・・・」となる可能性がある。このような人の心理は新型コロナで多くの人が経験している。だからアメリカカンザイシロアリの駆除は近所に知れないようにひっそりと行わなければならなくなり、それは部分駆除と言え、そのため再発する可能性が高い。そしてこのとこは理由②の予防措置も難しいにつながる。従来から日本いた土壌型シロアリならこうはならず、どこにでもいるゴキブリと同じような感覚であるが、近年輸入材が原因で発生したアメリカカンザイシロアリは、発生源の特定をされやすくそれが噂になりやすい。この為シロアリ駆除会社さんも処理した住所は市町村レベルに留めており、発生しているピンポイント(町内)はわからないのである。
理由② あらゆる木が加害対象のため予防措置も難しい
木造では柱や梁、筋かいや、構造用合板等が加害されれば耐震が損なわれることがS造やRC造との最大の違いと申し上げた。では「木造でもこの部位を加害されないように守れば大丈夫ではないか?」との疑問がわくと思う。特にホウ酸塩を使えばよいのではないか?と考えるのが当たりまえ。確かにホウ酸塩を全構造材に塗布すればとても高い可能性で守られることは間違いない。しかし昨年ホウ酸塩による全構造材丸ごと塗布をした経験では、構造材を隈なく塗布することは現実的に難しい。ホウ酸塩予防は基本的には表面シールド方式なので、部材毎に塗布するのが最も効果的。その木造の構造部品としてはプレカットされた木材の部品だけでも数百本ある。もし水平面構造材をつくる条件の合板も含め垂木、更には鉛直面構造材の構造面材支える間柱(合板継手部分)も構造材と考えられるので、その数はさらに増え1000部品以上にもなろう。それらを一本一本、又は一枚一枚切断面を含み組み上げる前に、部品の状態で塗布するコストや手間、天候※を考えると途方もない労力がかかることは明らか。なら「全構造材が組みあった時に塗布すれば大丈夫ではないか」との意見には、これもNG。構造が組みあがり各部位が入り組んだ複雑な状況では、刷毛で細部まで隈なく塗ることは困難ためスプレー噴霧が考えられるが、スプレー噴霧は外風があると近隣に飛散し、ホウ酸塩なら白い粉をまき散らすことになる。よって建物全体をある程度囲って塗ることになる。仮にそれを注意深く行っても、構造材だけの施工を他の工種を待って終わらすことは大変非効率になる。よって実際はスプレーではなく刷毛で塗布し、施工も最低4回程現場に入って塗り、更に可能であれば大工さんが施工しながら塗らないと、細部まで塗ることは現実的でない事は、現場で実際に施工した方ならわかる事。
※ホウ酸塩は水性のため雨などの濡れはNG

加えて刷毛で塗布しても、スプレー塗布でも、白い粉は先行した先張りシートなどの気密施工に、大きな影響を及ぼす。シートが可変型透湿シートなら界面活性剤等の化学的な影響は推測できず、また気密テープでの施工は粉を確実に葺いて綺麗にしないと密着が不可能。つまり構造材に残さず塗布することは非現実的な作業なのである。仮に細部の塗りのこしがあれば運悪くそこから侵入されるかもしれない。塗布型予防はそのような欠点をもつ。一方アメリカカンザイシロアリの足に塗布したホウ酸塩がつき、それを自身が舐める習性があることで、構造材全体に塗ってあればそこを歩くので予防効果があるというご意見が正しければ、ホウ酸塩を40年以上前から使っていたホウ酸塩先進地域のハワイ州の住宅で未だRC造やS造が多い理由が、気候的なもの(ハリケーン)だけとは考えにくい。つまり木造の構造材が完全に食べられないように予防することは現在でもほぼ不可能なのである。もし筋じかいの端部に食害受ければその部分の耐震性は著しく劣化する。
全構造材をスチールで施工するS造はシロアリにとって食害できない材料の一つであることは誰でも認める。シロアリの食害を受けない建築素材はガラスと陶磁器とスチールそして優良なコンクリートくらいしかない。このことからS造であればシロアリに対し万全の構造体と言える。仮にS造の建物にアメリカカンザイシロアリがいても、それが原因で地震時の耐震性が下がることは理論上も実際上も半永久的にないといえる。確かに木の内装は食われるが、安全性を損なうことはないのである。
3つ目の理由はその②に記載するが、この2つの事だけでもS造(鉄骨造)を勧める理由として十分だと考えている。

