2010.11.17 一番下に私なりのまとめを追記しました。 同じく茶色は放射と反射を間違いました。お詫びします。
このブログ内の表や写真はいずれも下の論文からの抜粋や転載です。カラー部分は当方が着色しました。
今年の2月の査読された論文集の中に「屋根の遮熱技術の導入効果の確認」という論文があるのを昨日見つけました。
今年の夏のブログ内で「屋根に使う遮熱材(輻射熱反射材)の偽科学は×!」と過激なタイトルでお伝えしましたが、こちらの論文は(反射材を含む)遮熱技術の効果の一定の効果があると言う「まとめ」です。逆の結果にさて内容は・・・
査読された論文ですから内容はそのとおりです。私どもような実務者が内容の事実に対しなにか言える事はありません。しかし事実と真実は若干違いますのでそのあたりを少し説明をします。
まとめからみますとと
と青字のところで「温熱環境改善のため・・・有効」とあります。つまり遮熱技術(材でない)はある一定の効果があるよとの事です。一見すると先回載せた論文と真っ向から対立するくらいの迫力です。
さてこの論文にどういう背景があるかから見ていきます。
まず発表者の名を見ますと連帯発表者の中に「遮熱技術」を研究している会社の名前があります(一番上の写真)。
次に比較した条件をみますと
地域がⅤ地域という九州などの温暖な地域での測定と断熱設定です。先回の論文はⅣ地域という新潟を含む関東などの地域です。基準の断熱性はⅣ地域の方が高く、断熱材は厚くなります。
次にこの論文内の比較した2棟の条件を見てみます(表3)。
表中赤丸、黄色丸は多分間違いです。AとBが逆の数値でしょうね。査定論文でもどうでも良い箇所の間違いはあります。反射率の定義を間違えてとらえてました。申し訳ありません。まるで囲った部分が注意するする数値です。反射材を設置したB棟の屋根の通気層が反射材を設置しないA棟の倍大きくなってます。通常通気層が大きければ熱は伝わり難いし、換気も促されます。有効開口面積を見てください。出口面積では15倍も大きいです。これでは同条件の比較といえるかどうか?。どうして同じ通気層(換気面積)で比較しなかったのでしょうか?これでは反射材の影響か換気の影響か、外壁や屋根の色の影響かはっきりとしません。つまり遮熱材(反射材)単体の性能ではないということです。
また反射材の反射率放射率の数値が0.06と鏡面並の放射率です。これは塵や埃など一切無い条件です(新築後直ぐくらい)。やはり0.1~0.2が実務的でしょうが、別にこれはこれで実験ですから特に支障はないでしょうが。
実験結果は正しいでしょうが何となく府におちません。多分これは「その4」という報告なのでその1から3にこの事の説明があるのかもしれません。探して見ます。
しかし・・・じっくりと、この論文の主タイトルをよく見ると、「・・・の計算法に関する研究」とあるので、計算式を算出するには、ある程度極端な事例で比較することは良くあることです。よってこの論文の条件が何か偏った事でこの評価が思わしくないとまでいういことではないとようやくわかりました。
このように、似たような論文でも主旨が大きく違う事が良くあります。それを調べると、研究目的が違うので測定条件が違っていたり地域、方法が違っていたりします。この辺を読み解く事が技術系実務者には求められます。この結果をもって、熱反射材の遮熱シート一枚あれば遮熱技術はOKではないと言うことはしっかりわかるはずです。
当方のまとめは・・・
遮熱技術は温熱改善に有効であると言うことは事実である。遮熱技術の費用対効果はまだ発展途中である事と、遮熱材一枚で断熱材が要らないくらいの効果はないと言う現実(真実)でしょうか?
このような論文は面白いです。関係者様に感謝です。
この論文はここまたは建築学会から「環境系論文集Vol75 No648」で購入購読できると思います。
コメント
まずご指摘ありがとうございます。私の反射率に対する認識の間違いでした。関係者にはご迷惑をおかけしすみませんでした。
さて、いつもありがとうございます。
おっしゃるとおりその気持ちを押さえて客観的の評価が必要です。ただ今回の論文は目的が「計算法に関する研究」ですからこのような極端な差がひつようだったのでしょう。逆にこのくらいの遮熱技術を組み合わせて効果がでると取れますし、結構コストアップになるのかな~とも思います。
論文というのは、期待する結果にしたい気持ちがどこかに出るものなのでしょう。ご指摘の通り、通気層の厚さの影響は無視できないと思います。ところで、黄色と赤マークの日射反射率は、ブラックよりシルバーが大きな数字になって良いと思うのですが、この表の数字はすでに訂正したものなのでしょうか。