家庭用エアコンの査読論文から①

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来ました・・・。この査読論文は読み応えあります。

以下ご紹介する図は日本建築学会環境系論文集(査読論文)の2012・11に掲載された「実使用時のルームエアコンコンディショナのCOP評価」 細井昭憲、三浦尚志、澤地孝男、住吉大輔ら(いずれも博士)による研究論文からの抜粋、出典です。

この研究者は住宅用エアコンの実効率などの研究において国内で最も有名なグループです。私もエアコンの研究論文を発表していたときは、助言質問など頂き、大変感謝しております。

さて、今回の査読論文は、COPの評価でそれも除霜暖房運転中も含めての内容と、冷房運転の評価なので大変興味深く読みました。

まずは冷房運転中の実測から・・・

実測調査したのは和室の設置されたエアコンで、所謂8帖用です。定格COP冷房で5.43です。家の性能は表5で、このスペックは二世代前の家(旧省エネ基準)で、この家の仕様ならQ値は4~5くらいと、大変低い家でしょう。エアコンの実測はエアコンの挙動(消費電力、吹き出し温度、冷媒温度)を測定しますが、最近のエアコンは吸い込み温湿度を監視して運転状況を決めている機種が多いので、厳密には家の性能も関係あるかもしれません。

上が実測結果です。これだけ見ると何が何だかおもしろくないと思う人は多いと思いますが、私にとっては宝の地図と同じように見えます(笑)。

まず最近のエアコンは図13のように能力に対して吹き出し風量が比例するように設定されています(というか、風量が増えないと熱交換が小となる)。でよく見ると連続した風量変化ではなく、ステージ毎に4つの風量を設定しています。風量を増やさずに冷媒温度下げる事で除湿が多く可能な(SHFが低くなる)領域が増えると考えられます。なぜそんな事を言うのか・・・それは・・・
最近の研究では冷房空間は、高温中湿が体に良いとされているからです。図12でもわかるとおり最近のエアコンはCOPを上げたいが為に除湿をしない冷房運転をするモードが多いようです。このエアコン(機種により違う)も、部分負荷率が1を超えないと除湿にならないようなアルゴリズムであり、効率優先だともいえます(私好みの機種ではありません)。

除湿をする為には冷媒温度を下げる必要があり、そのため冷媒を高圧縮しする事になり、その結果COPが悪くなりますが、再熱除湿ほど悪くなる事はありません。例えば車のエアコンがそのようなモードで運転しており、車のエアコンはインバーター制御ではないため、常にONかOFFです。従ってON、OFF以外の中間的制御として風量で調整しております。よって冷えすぎた冷媒に少量の風量では時々霧が吹き出される程になります。除湿モードのまま弱冷となるわけです(快適さは室内が狭いので??)。

COP一辺倒ではなく、冷媒温度もある程度手動でできるようになりませんか?メーカーさん。但し、問題はエアコンの冷風を受けにくい配置で且つ家中の温度がムラにならないようにできる計画が同時に必要です(これが難しい)。

この論文筆者も文中で述べているように、家庭用エアコンの挙動は冷房中が難しく、暖房時の挙動は単純です。これはいつも私も建て主さんに申し上げて降ります。「暖房計画は簡単ですが、冷房計画は難しい・・」と。

でもこの言葉を建築業界の人にいうと、皆一様に「はてな?」の顔します。快適な冷房計画の方が難しいのですよ!絶対!

そういえば今日片貝の家の建て主さんに、夏の家の快適さには脅かされたと言われました。多分のこの事だと思います。

 お湯は全てガスのため単純に6月から8月に上がった料金ははエアコン代と考えられる。

片貝の家のエアコンの電気料金は最暑期の8月で1万円弱。この料金で24時間家中冷房空調状態で、寒くもなく暑くもない状態・・・。家の大きさは60坪弱で6人で暮らしております。

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コメント

  1. オーブル浅間です。 より:

    坂口先生
    お越し頂き、加えてコメント感謝です。ありがとうございます。
    エアコンは今後最も注目の設備機器と思っております。そんな研究をさせて頂けた赤林先生、坂口先生には心から感謝しております。
    先日講習を受けた「準寒冷地版 自立循環型住宅へのガイドライン」というマニュアルで、主に「前先生」の担当の所で結構細かくエアコンの事が書かれておりました。今度ブログでとりあげます。

  2. 坂口淳 より:

    最近の住宅用エアコンのことを確認するため、エアコン博士の浅間さんのブログを拝見したところ、赤林先生のコメントも見つけました。なるほど、勉強になりました。

  3. オーブルデザインの浅間です。 より:

    赤林先生
    ご指摘を頂きまして大変ありがとうございます。
    >この論文の結果で、例えば家を設計した際にどのエアコンを使用すれば最もCOPが良くなり、電力の消費量が少なくなるのか判るのでしょうか。
    消費量、機種選定は全くわかりません。カタログのCOPから実COPを推測するためと目的にもかかれているので、多分目ざす方向が違うのでしょう。
    >エアコンのCOPに関しては浅間さんも含めて我々が最初に測定手法を開発したのに、参考文献に載っていないことにもこの著者らの常識の無さを感じます。
    おっしゃるとおりです。
    6年くらい前の学会の大会で、赤林先生が忠告していた事が思い出されます。確かにこの実測調査の大元に当たるところですからおっしゃるとおりです。
    最近はエアコンの消費電力表示があたり前になりましたが、冷媒温度も表示され、その温度を任意に設定できるといいなと思っております。

  4. 赤林伸一 より:

    この論文の結果で、例えば家を設計した際にどのエアコンを使用すれば最もCOPが良くなり、電力の消費量が少なくなるのか判るのでしょうか。エアコンのカタログ値から実使用時のCOPを推定するのでは無く、COPの値を外気温(温湿度)と室内温湿度から計算出来る式或いはテーブルをメーカが用意することが重要では無いでしょうか。この研究事態全く実用的な研究とは思えません。エアコンのCOPに関しては浅間さんも含めて我々が最初に測定手法を開発したのに、参考文献に載っていないことにもこの著者らの常識の無さを感じます。

  5. 赤林伸一 より:

    この論文の結果で、例えば家を設計した際にどのエアコンを使用すれば最もCOPが良くなり、電力の消費量が少なくなるのか判るのでしょうか。エアコンのカタログ値から実使用時のCOPを推定するのでは無く、COPの値を外気温(温湿度)と室内温湿度から計算出来る式或いはテーブルをメーカが用意することが重要では無いでしょうか。この研究事態全く実用的な研究とは思えません。エアコンのCOPに関しては浅間さんも含めて我々が最初に測定手法を開発したのに、参考文献に載っていないことにもこの著者らの常識の無さを感じます。