キッチン上の勾配天井にある謎の扉。矢印の上を歩いて行けるように。
その4では換気や空調のことをお伝えします。
まずは上の写真・・・。
変なところにドアがついておりますね。
これ・・・必ず見学会で聞かれた事です。
当ブログを隅から隅まで見なくても、エアコンの使い方のところをよくご覧頂いている方には直ぐわかるでしょう。写真を見ると右天井付近にエアコン設置されております。「緑の家」のエアコンは何時もメーカー最高機種ですから自動お掃除機能があります。しかしこの機能があっても一年に一回はメンテナンスが必要です。
なぜこんな上にエアコンが設置されているかというと、こちらにあるとおり、この位置は冷房と除湿を考えた最も良い配置です。この位置を優先して且つメンテナンスを簡単にできるように考えなくてななりません。すると今回の回答は・・・・通常はキャットウォークでわかり易いのですが、こちらは食器棚がキャットウォーク代わり・・・だからこの位置に扉があるのです。本当は目立たないように壁色にするつもりでしたが、3層パネルオンリーの家なのでこの戸になりました。
次に換気装置・・・
天井付近にあるのがダクト換気のリターン。脱衣所の戸裏にタオル掛けがあるのも「緑の家」ならでは。
こちらの写真は24時間換気システムのリターン※の格子(上)です。「緑の家」の換気計画は単純で、リターンは必ずこのような脱衣所で一括集中します。 そして新鮮空気は主に寝室で一人あたり20~25m3/hを取り、その残りを家族の間(リビング)などへ分配します。よって部屋の気積の大きさに対する0.5回/h換気からすると計算上合いませんが、人が寝ているときは自分から新鮮空気を吸いにいけませんから、この寝室への新鮮空気を一番大事にしております。
※・・・リターンとは空調機の環流空気取り込み口のこと。一般用エアコンなら上部吸い込み口がリターンとなる。
最近とても残念な事がありました。ダイキン製のデシカの換気空調計画で、私がこのように一括でリターンを脱衣所に設けると、ダイキンさん(以下ダイキンさんの指定施工販売会社を含む)の他県の方から
他県ダイキンさん
「脱衣所(洗濯物を干す)にリターンを設ける事は基本的にできない。脱衣所の空気には他の部屋より湿気が多いので、長期間使用した場合そのダクト内にカビや雑菌が繁殖する可能性が高いから・・・」
私
「へっ・・・」
「デシカのリターンは脱衣所に設けられないの?それではデシカの意味はないし、それが本当なら未完成の換気(メーカー曰く空調機器ではない)機器になってしまうのではないか?」
実は私の脱衣所のリターン配置は、新潟のダイキンさんから「リターンの脱衣所配置は全く問題ない」とお墨付きを頂いて設計をしておりますから、上の会話はこの他県のダイキンさんに電話で直接聞いたものです。又聞きではありません。
ダイキンさんは結局間違いを認め(この方は勘違いといっていたが、電話で説明した時間が20分以上あったのでとても勘違いとは思えない)、デシカでもリターンは脱衣所に配置する事が出来ました。
通常今回の「緑の家」で使った全熱交換型換気扇又はデシカ等は、その全熱交換の機構上、お風呂とトイレからリターンは取る事ができません。これは・・・
トイレは匂いが水蒸気と共に新鮮空気に混じる恐れがあるため×です。お風呂は湿気と共に大量の空気中の結露した余剰水分(湯気)がダクトに入りやはり悪さををするので×です(短期間なら全く問題ない)。しかし脱衣所は・・・過剰水分があるとは思えませんし、仮に他の空間より洗濯物を干す等して湿気が高くても、その湿気を空気と共に吸込み換気(湿気をさげる)する必要があります。他県ダイキンさんの言い分ではこの換気を他の換気システムで別に行え!という事になってしまいます。デシカは家の湿気をコントロールする機器なのに、その湿気多いところからリターンは出来ないとなれば、デシカの製品思想(家中安定した設定湿度)として矛盾が生じるのではないでしょうか。
私達設計者は、換気システムのことだけ(湿気が多いとダクト内がおかしくなる)、という狭い了見で換気システムを考えてはおりません。湿気が多いところほど換気を多量に行い、早く湿気を拡散または除去しなければ、脱衣所窓で結露したりカビが脱衣所に生えます。だから脱衣所(洗濯室兼用)に設置できない換気システムなら必要ありません。そのように他県のダイキンさんに伝えました。この他県ダイキン担当者さんの見解がダイキンさんのメーカーとしての見解なら今のデシカはもう必要ありません。
ダクトによる
24時間換気システムのスイッチ。
日之出町の家で使った換気システムは・・・良いですね。なんと言っても吹き出し空気は静かだし(隠蔽した本体付近はそれなりの騒音あり)、なんと言ってもデザインが良く、あのごっつい本体が見えません。これはとても気持ち良いものです。
この目立たないところがダクト式の換気の最大メリット。流量20~25m3/h。
カウンター下でもOK。流量25m3/h。
2階居室の新鮮空気吹き出し口は、このように床上40cmくらいに設置して羽を上向きにします。これはダクト長さを出来るだけ短くして、圧損や材料を減らすためです。
予算が25万~30万アップを許せばこの換気システムは良いですね。お勧めしたい安定した換気方法です。
1階居室は天井付近で給気。流量25m3/h。
家族の間に吹き出すSAは流量60~70m3/hとした。
ダクトタイプは、完成時の風量調整が重要です。
普通は全てのSA(給気口)とRA(リターン口)の風量を測り、設計通り数値があるか確認します。今回は当事務所で測りました。実は専用の風量計でも正確な風量の測定は大変難しいのですが、手元にある汎用の風量計の特性を実測し、その時の風量は幾らになるか把握します。その特性に合った風速があれば安全側でOKということで測定と調整を行います。給気口を一度全て測り、調整したら又測りの繰り返しを何回か行います。
各居室にある給気口
。
化粧グリルを外すと弁が全開。これを絞り所定の風量にする。
弁を絞り抵抗をかけ、所定の風量になるまで調整。
風量を測定中・・・意外と素直に風流調整ができた。
脱衣所にある唯一のリターン。よって風量は140~150m3/hとしている。
最終的にはこのダイヤル位置で風量決定。低め消費電力位置。
給気側はダクトがそれ相当にあるのでダイヤルは真ん中くらいです。排気側はダクトが給気口より短く分岐していないのでダイヤルは実用最小目盛りです。今回のSA(給気)配管は、チャンバーの箱を電気屋さんで自作し分岐しております。配管の8割はスパイラルダクトで、先端の1mだけ吸音用に断熱フレキシブルダクトを使いました。結果は圧損が少なく、省電力での換気が可能になったようです(OAは全て断熱フレキシブルダクト)。
外側は合板であるが、内部は断熱材貼りとなっている。一度チャンバーで集めて各所へ配る。