最終更新 2018.05.30
今日は「堺市の家」の工事監理に伺っているので行き帰りの道中時間があるときは、このブログを書いている。
で今日の話題は・・・
CF(循環ファン)のことである。
標準採用から6年経過のした「緑の家」のCF(循環ファン)のことが今度業界雑誌にちょっとだけ取り上げられる(確定ではないが)事になった。もし取り上げられたらまたこのブログで紹介するが、とりあえずCF(循環ファン)のおさらいとのことでちょっと説明する(HPでも詳しい説明がある)。
ただし雑誌掲載は広告ではなく取材なので、CF(循環ファン)って変なシステム?との記事になるもかもしれないが、それはそれで仕方無いだろう。
まず浴室換気扇の必要性を考えてみるとそれは・・・
浴室の換気は乾燥の為だけ!
・・・と言うことがわかる。
その証拠に建築基準法では浴室換気の義務はない(内釜式風呂を除く)。
またトイレ換気扇やキッチンのレンフード換気扇は、使用時に換気扇が必ずONになっているが、浴室は人が入浴時に換気扇はOFFが普通である。入浴中に換気扇をONにするのは真夏時期のみであり、その他の季節で入浴中にONなら少し肌寒い事になることを多くの人は経験しているはず。一方トイレにおいて使用時にOFFしている人は少し変な趣味があると思ったほうがよく、普通使用時には必ずONであろう。
このように浴室換気だけは人の不在時に使用することになる。このことから浴室換気扇は浴室の乾燥のためが目的と考えることに抵抗はないはず。
CFがないとNGな第一種熱交換換気システム
これについては2016年の記事「CFがないとNGな第一種熱交換換気システム」↓
をお読み頂ければ・・・。
全熱式換気システムの場合には、浴室の換気とキッチンの換気が重要なファクターになる。
浴室は早期に乾燥させないとカビが生えるので、できるだけ換気量を増やす必要があるが、増えると夏季や冬季の空調消費エネルギーが多くなる。そこで換気量を倍にしても殆ど消費エネルギーに影響を及ぼさないCFの出番となる。一方キッチンは今のところ有効な対策はない。
浴室は綺麗な空間
浴室の換気が必要なのは「乾燥のため」と理解できたが、従来浴室はダーティーゾーンと呼ばれ、汚い空間といわれてきたはず・・・との意見もあるだろう。
それは文化的誤解があったと私は思っている。
日本と違って換気の文化が古い欧州や北米では、一般的な住居ではトイレにお風呂(というよりバスタブ)があることが多い。つまりお風呂の空気は汚いことになる。一方日本のお風呂は換気扇をわざわざ止め、肩までお湯につかりリックスするための空間として使われることが多い。お風呂場の空気はカビなどがはえていなければ綺麗と感じるからこその感覚なのではないか。
乾燥は大風量でカビ防止
カビは水分があるとすぐに発芽し菌糸を伸ばす。まずは水分をすぐに気化させなければならない。これは湿気の排除より優先順位がたかく、水分があって栄養があれば数日で発芽するがRH(相対湿度)が85%であっても発芽まで7日以上はかかる。根拠はこちら。
ということで、カビを発生させない方法は水分を早く乾かすことにつきるのであるが、浴室の場合はこれが今まで排気用換気扇で行われていた。しかし大風量の空気を排気換気させるとことは空調している住宅ではできない。空調中でもこの大風量換気を可能にしたのがCF(循環ファン)で一番簡単に水分を排除できる方法である。
熱交換率と空気齢
上はリンク先にある表である。
試算した結果の数値を見ると・・・
一番良い効率は「顕熱型熱交換換気」でその次に「緑の家」のCF(循環ファン)を採用した全熱交換型換気システムである。何も考えない全熱交換型換気システムは28%しか熱交換しない。また最近は空気齢※を無視した換気ルートを行う換気方法が多くなっている。フレッシュ空気はまず寝室や居室に直接入ることが望ましいとされる空気齢を考えた換気ができれば望ましい・・・はず。※空気齢とは・・・一番最初の綺麗な外気は人が直接いるような空間に放出されその後のリターンまでフェレッシュさが少しづつ下がる時間経過=汚れを意識した空気のこと。
例えば空気齢を考えない換気ルートとして・・・
最初のフレッシュエアーを床下や小屋裏に放ち、最後のリターン口が居室にあるような経路などがある。このような方法はメリットもあるが空気齢が大きくなるというデメリットあることを忘れずに設計する必要があると考える。
CF(循環ファン)は中間期でも有効
6年前のCF(循環ファン)を標準化した当初は、夏にCF(循環ファン)が特に優位になることをお伝えしていたが、あれから数年経た今の実感では中間期でもよく使っている。当時の夏の空調期に大変有効である理論は家が閉じた空間であることが重要だった。これは
夏季は
絶対湿度が
外気>空調された家
であり
気化する浴室の水は潜熱=顕熱で全熱では全く変わりないこと
であるため。
よって
CF(循環ファン)の消費電力<排気型換気扇の外気流入全熱
となるのでエアコンの消費電力がさがる。また流入する潜熱負荷が下がるので家のRH(相対湿度)も容易に下げることができる。
そして中間期・・・
今の時期は超高断熱住宅でも窓開けている時間がある。よってCF(循環ファン)でも大きなデメリットになることがない事がこの6年の実績としてわかった。ただしこの場合は家中に早く潜熱が拡散されるように浴室以外のCF(循環ファン)も連動したり、集中RAをCF(循環ファン)の近くに設けたりするのが条件である。このように使えば一年中CF(循環ファン)を使うことが可能である。
風呂CF(循環ファン)は一般的になるか?
導入してから既に7年以上・・・標準採用で6年経過の風呂CF(循環ファン)。ようやく業界雑誌に取り上げられることでその存在が日の目をみるだろう。一方そうなると、様々なご意見がでてくるはず・・・。特に必ず聞かれるのは
「風呂の湿気で脱衣所等に問題がでるのでは?」
ではその風呂から脱衣所にはいる湿気はどのくらいであろう?
仮にお風呂の壁と床の濡れている水分の合計がコップ一杯の水とすれば200ml。
もし仮に空調された家で排気用換気によって室内に入り込む水は・・・
なんと一時間あたり450mlにもなる(室内28度RH55%、屋外29度RH70 %の夏季)。
屋外のAH(絶対湿度)が屋内のAHより低い時期であれば家内部のRH(相対湿度)も低いので問題になることはほぼ無い。問題は脱衣所まで暖かくない家の冬期だけ。
しかしこの脱衣所の寒い(冷たい)家がまだ一般的だから風呂CF(循環ファン)はNGなのだろう。
今後高気密高断熱が一般的となり、脱衣所も温かい家が増えれば風呂CF(循環ファン)は普及するだろう・・・というか必須になると私は考える。
コメント
とある方のブログから浅間先生のこと、CF方式のことを知りました。私も浴室の換気扇を無くしたほうが家全体の湿度管理に良いのではないかと考えています。ただ今設計中です。
詳しくお話をお伺いし、工務店さんにお伝えしたいのですが相談に乗っていただくことは可能でしょうか?何卒よろしくお願いします。
s.r 様
コメントありがとうございます。またCFに共感頂きありがたいです。
>詳しくお話をお伺いし、工務店さんにお伝えしたいのですが相談に乗っていただくことは可能でしょうか?
一般的な内容での話なら可能です。
一方個別案件(CFの機種選定など)になると過去のCFのコメントにあるように専門家としての責任を伴いますので、各条件が不明な状況では難しいことになります。
TOM様
Maya様への文面のコピーで恐縮ですが、
「機種設定を含め個別的な条件設定ですと、当方建築士という専門職がら無報酬でも責任が生じますのでこれ以上のお答えは出来かねます。一方個別プランで正しく換気とCFを判断するためには、プランや住まい方、地域環境など表記以外の沢山の情報が必要になります。」
以上です。宜しくお願いいたします。
浅間さま
いつも楽しく拝見しております。
バスCF是非とも検討したく思い、お伺いしたくご教示ください。
脱衣室のCFも設置することは必須でしょうか。
その場合、どちらの方向に送風しますか。
その理由も併せてご教示頂けますと幸いです。
TOM様
>脱衣室のCFも設置することは必須でしょうか。
上のブログをご覧頂いて中間期も使うならあった方が良いプランがほとんどであると思います。
>その場合、どちらの方向に送風しますか。
脱衣所に押し込む方向です。
>その理由も併せてご教示頂けますと幸いです。
押し込んだ量の空気分は確実にRH(相対湿度)が希釈されます。脱衣所から出て行く高湿度の空気の行き先は特にどこでもOKですし、洗濯物があればそこに風が直接あたることで、乾燥が早められます。
以上です。
浅間さま
ご返答ありがとうございます。
現在、新築で着工前の者としては、非常に勉強になります。
(日経ホームビルダーの購入を試みましたが、絶版のようで拝読できず残念です)
ご返答に対しあと一点ご教示ください。
ユニットバスの場合、排気用換気扇、ドア以外には基本密閉かと思いますが、脱衣室からバスに押し込んだ空気は正圧のため排気用換気扇から外気へと出ていかないのでしょうか。素人考えでは、外気へと出てしまったらバスは負圧状態になり、その分どこかの吸気用換気扇から吸入せざるを得ないと感じました。
一種換気の場合、その際には能力以上の熱交換をすることになり、結果的に熱交換率の低下は避けられないと感じました。
この理屈が仮に正しい場合、乾燥(カビ対策)は相対的に早いが、熱ロスの観点では嬉しさが少ないと感じました。
(そもそも、そういった思想でのご提案でしたら、確認不足で申し訳ございません)
浅間先生のお考えはいかないのでしょうか。
最後、誤字失礼しました。
正しくは、
浅間先生のお考えはいかかがてしょうか。
です。
TOM様
>ユニットバスの場合、排気用換気扇、ドア以外には基本密閉かと思いますが、
いいえ。
当然排気用換気扇は電磁ダンパーがついている機種(風圧ダンパーはNG)をわざわざ選んでおりますのでドア以外は密閉されております。また正しくは付属ドアも閉めてしまうと最近のドアはが逆止弁があるのでほぼ密閉となり、CFがうまく機能しないのでお風呂ドアは開けっ放しが前提です。
また下のところで購入可能であると思います。
https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/HB0252/
この点の質問は初めてです。きっとTOM様ならうまく機能するCFが計画できるでしょう。
浅間先生
ご返答ありがとうございます。
大変勉強になります。
一種換気にするかは最終予算次第ですが、一種換気採用の際には浅間先生のバスCF構想を取り入れさせて頂きます。
(今回建てて頂く新住協会員の工務店にも了承頂きました。新住協の方は理解が早いです)
先生のアドバイスを考慮し、以下換気扇を設置しようと思います。
■バス→室外換気扇
電磁ダンパ付き換気扇
(TOTO標準の換気扇はNG?要調査)
■脱衣室→バス
大風量CF(三菱電機?)
■他室→脱衣室
大風量CF(三菱電機?)
もし、オススメ等品番がありましたら、度々お手数ですがご教示頂けますと幸いです。
(ノウハウもあるかと思いますので、可能であれば、でお願い致します。)
また、お褒めのお言葉ありがとうございます。
宜しくお願い致します。
はると様
浴室CF(循環ファン)ですが入浴中以外は常にONです。
・・・今日も西日本は火照っていますね。お体にお気をつけください。
毎日朝から暑いです。。。
質問なのですが、CFファンを採用する場合、システムバスなら穴をあける加工が必要ですよね?
また、風呂からファンにシャワーをあてたら、脱衣場は濡れてしまうという認識でよいのでしょうか?
>毎日朝から暑いです。。。
まったく。頭が溶けてなくなりそうです。
>質問なのですが、CFファンを採用する場合、システムバスなら穴をあける加工が必要ですよね?
そうです。
>また、風呂からファンにシャワーをあてたら、脱衣場は濡れてしまうという認識でよいのでしょうか?
そのとおりです。
こんにちは。
質問ですが、三種換気システムでもCFファン有効なのでしょうか?
はると様
コメントありがとうございます。
>質問ですが、三種換気システムでもCFファン有効なのでしょうか?
有効か有効でないかは目的によって違うと思います。
「換気量を増やさずお風呂を早く乾かす」なら大変有効です。
「除湿量を下げたい」なら有効ではありません。
CF(循環ファン)を使っても第三種換気システムの換気量を減らす事ができないので夏季の除湿量は変りません(お風呂の水分量だけわずかに増えるかも)。
ただし・・・
「法的な換気量を減らす事」=「お風呂場の排気換気を止めて他の排気換気量も増やさない事」を行えば有効ですが、それを建築士の私から薦める事ができません。
浅間さま
返事ありがとうございます。
私は兵庫の南東部で現在家をたてようとしています。
そこまで寒い地域ではないので三種換気を導入予定です。
お風呂を早く乾かす目的以外であれば設置するメリットはないということでょうか?
>お風呂を早く乾かす目的以外であれば設置するメリットはないということでょうか?
そうですね・・・。
CF(循環ファン)の目的の第一は大風量でお風呂を素早く乾かしてカビ防止なので・・・。逆にはると様は何の為にCF(循環ファン)を採用するのでしょうか?
カビ防止以外にも何かメリットがあるのかと思いまして、質問いたしました。
CF(循環ファン)があれば、ふろの換気扇は不要になるということですね!
ブログすべて読めていないのですが、スイッチで必要なときに動かすイメージでよいのでしょうか?
参考にさせて頂いております。拙宅では脱衣所の床に近い低い位置にサーキュレーターを設置し浴室への扉を開ければ床を撫でるような形で風を送り込めるようにしてあります。ユニットバスが良く乾きます。大切なのは風呂場の水蒸気を浴室の換気扇で排出するのではなく強い風を当てる事だと感じています。拙宅も沿岸沿いで湿気の高いところにありますが、家のいたるところにサーキュレーターを置いて風を回し続けると梅雨時期でも不快感はありません。サーキュレーター7台も使っていますが…
nickjさん
ご指摘頂きありがとうございます。早速直しました。
こんにちわ、いつも勉強させていだいております。
旧HPコラムページへのリンクが間違っているようです。余計な文字が入っているみたいです。
多分こちらのコラムページですよね。
https://arbre-d.sakura.ne.jp/main/column/1-2/
それでは掲載記事を楽しみにしております。