堺市の家 設計者の思考

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堺市の家の屋根は和瓦である。

和瓦と言えば・・・三州瓦が全国的には有名で、日本中ほぼどこでも手に入る瓦である。

雪止め瓦が先端に取り付く。直ぐその先は隣家の屋根がある。

堺市では積雪になるような雪は殆ど降らないが、市の建築基準では30cmの設計積雪量となる。よって過去全く降らなかったわけでもないので、万一の事を考えて雪止め瓦を設計図に盛り込んだ。

ところが・・・

施工会社さんの協力会社の瓦屋さんでは、

「このあたりじゃ、雪止め瓦をつける家なんてないよ。それでもつけるの?」

と2度ほど言われたが、実際出来た屋根に上って自分の判断が間違いない事を改めて確認した。

左がいぶし瓦で右の家がコロニアル。手前の深緑色が堺市の家の屋根。

このあたりの屋根と言えば瓦かコロニアルのような人工スレートである。コロニアルの表面はざらついているので雪が多少積もっても直ぐに落ちる事はない。またこのあたりで使われている瓦は、いぶし瓦と呼ばれる表面がざらついている瓦になる。よってこちらも多少の雪で急落する事は少ないと思われる。

一方今回使用した瓦は冒頭でご案内した三州瓦の釉薬タイプで特注色の深緑。釉薬がかかっているので表面は滑らかである、この上に雪が少しでも積もったら(15cm)、すーっと下に落ちてしまうことは容易に想像出来る。一方この家の周囲瓦はほぼ「いぶし瓦」なので雪はスベりにくい・・・。それを基準にして瓦屋さんはそういったのだろう。

確かに堺市の家屋根に上って廻りをみると、釉薬のある瓦はとても希で、洋瓦にすこし見られる程度。和瓦は一律いぶし仕上げとなっている。

市街地なので屋根と屋根が競り合う。もし雪が滑り落ちたら近隣の屋根におちるのでそれが発生してからでは雪を知っている設計として恥ずかしい。

この屋根をご覧になってご近所さんからは

「雪国仕様だね」

といわれたと建て主さんから伺ったが、

この屋根は堺市の市街地仕様で、雪国仕様なら雪止め瓦はもう2段は最低設置される。

いつもは降らない地域に最近大雪が降るといった異常気象も多々ある。よって想定外は許されない。自然の力を過小評価しない・・・この発想で東北電力の女川原発は大津波を避けられた。以下抜粋 http://oceangreen.jp/kaisetsu-shuu/Onagawa-Tasukatta-Riyuu.html

平井弥之助氏、女川原発を津波から守った1人の男性から学べること

宮城県石巻市の女川原発は、福島第一原発と同じく東北の太平洋沿岸に立地し、東日本大震災では高さ 13 メートルの大津波に襲われたにも関わらず、福島第一原発のような事態に陥る事はなかった。津波から女川原発を守ったのは 1986 年に亡くなった元東北電力副社長、平井弥之助氏であったという (本家 /. 記事、The Mainichi DailyNews の記事、毎日 jp 記事より) 。

869 年の貞観大津波を詳しく調べていた平井氏は、女川原発の設計段階で防波堤の高さは「12 メートルで充分」とする多数の意見に対して、たった 1 人で「14.8 メートル」を主張し続けていたとのこと。最終的には平井氏の執念が勝り 14.8 メートルの防波堤が採用されることとなったが、40 年後に高さ 13 メートル津波が襲来することになるとは。氏はさらに、引き波による水位低下も見越していたとのことで、取水路は冷却水が残るよう設計されていた。

「決められた基準」を超えて「企業の社会的責任」「企業倫理」を追求しつづけた平井氏の姿勢に敬服する。

本当にそうだと思う・・・。

このアングル=食卓の位置からみると窓先には建物(窓)は殆どない。

堺市の家の基本設計は建て主さんがほぼ作成しており、流石よく自分の敷地条件を知っている・・・。こんな混み合った市街地でもその窓は何れも建物がないところある。よって明るさがしっかりとれるのである。

帰りにはわざわざ駅まで送って頂いて、諏訪ノ森駅舎のランマにあるステンドグラスに刻まれた当時の駅前の砂浜(現在は埋め立てで砂浜はない)風景を紹介頂いた。

新しい事、発展や開発はすばらしいが・・・こんな風景に情緒を感じる。私も海のそばに住んでいるから感じる事なのかも知れない。

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