2018年9月11日緑字加筆
ある情報がきっかけで換気についてのガイドブックを購入した。
自立循環型住宅のセミナーで使用した換気のガイドブックである。
しかし中をめくって少々戸惑った・・・。
本州では一般的ではない床下に給気を入れてそこを経由してから居室に配り、原則居室でRAをとるというシステムが紹介されていたからだ。
何故戸惑ったか?
その説明の前に・・・
ちょうど時を同じくして査読論文に「我が国における建物の自然換気及び通風に関する研究の130年の歴史」というタイトルで投稿されていた。
その論文の始めには・・・
「130年間の換気の研究が俯瞰的視野からの整理に欠けている」
との指摘がある。
なるほど、思い当たる事がある。例えば・・・
・・・や
が示すとおり、
CO2濃度はただの指標であり、CO2自体の濃度に問題があるのではないと新建材の一切無い明治初期のころから現代の解釈と同じ指摘をしており、同じく新建材のない自然素材で建てられていて明治よりさらに研究が進んだ昭和初期でも・・・
との研究結果である。
そして昭和50年に更に換気の研究は進み、
私がいつも換気設計の根拠とする換気効率や「空気齢」が提唱される。実はこの空気齢は私の恩師から学んだ事で、その恩師の学生だった頃の所属ラボであった村上先生、吉野先生の研究テーマでもあったとのこと。
空気齢とは・・・簡単にいうと屋外空気が室内(半密閉空間)に入った瞬間からその空気は汚れ始め、再び屋外放出されるその時間が長いほど汚染度が進んだ空気。そこで入ってからの時間を空気齢とし、年齢が若いほど良い空気・・・と解釈している。但し均一に汚染物質がある原則的なことで、汚染物質に偏りがあればそちらに影響される方が大きい。
さて話を戻すと・・・
外気から取り入れる空気は一番空気齢が短い新鮮な空気なので、人のいる一番近くにいれることが良いはず。つまりCo2の濃度なんて関係なく、入った瞬間から様々な揮発性化学物質が紛れ込む(人の体臭や建材の匂い、カビ臭、腐敗臭)事を想定しているから、人がいない床下に新鮮空気を入れてもCO2濃度は増えていないので問題ない・・・とは思っていない。人のいないところをわざわざ経由してから人のいる居室に入れる事は空気齢から見るとナンセンスである。
そのナンセンスな換気が載った本を自立循環型住宅のセミナーの機械換気のガイドブックとして使っているので戸惑った訳である。執筆者を見ると・・・ああ・・そういうこと。と納得。確かにメンバー中、床下に給気する住宅メーカーさんがあったような、無いような・・・。
私は常日頃・・・省エネより人の健康と快適が優先と思っている。目に見えない換気は難しいテーマなのである。
さて・・・査読論文に戻って
この論文で引用された論文数は170・・・これを全部読んだことは凄いが、実はこの査読論文で他に感じたことがある。それは、
題は「~自然換気及び通風~」
となっているにも関わらず通風関連では
通風デグリーアワーがちょっとだけ載っていたが(凄いかも)、他に通風のことについては取り上げられていないような思えた。通風は歴史が浅くこれからのテーマなのか。そして換気の行方は・・・。
下に論文原本を置く。