築101年目に入った「て・こあ」。住宅ではなく集会所的な要素もあり、月曜日には人が立ち寄って頂けるそんな「て・こあ」の耐震性はどのくらいあるのだろうか?
という疑問を持ってこのブログを見ている読者さんは多いだろう。私もその一人である。
そこでこの度(国大法)長岡技術科学大学の協力を得て建物耐震性の一つである固有振動数を計測した。
既に建築されている建物の耐震性は、現在の耐震チェックによって評価出来るが、これは一般的な建物が前提であり、「て・こあ」のような布基礎でなく柱立ての伝統構法に近い建物であるとこの評価は殆ど役に立たない。そこでこのような古い建物を簡単に評価出来るツールとして、固有振動数による評価がある。
固有振動数とは、個々の建物の揺れる周期のことである。この周期が短ければ剛性が高い建物であり、剛性が高ければ耐震性が高いとされる目安となる。
例えば近年建築される一般的な木造住宅であれば・・・振動数は3~8Hzくらいになる。この逆数が周期で0.3~0.1sとなる。つまり0.1sのほうが耐震性が高い評価される事が多い。「て・こあ」は伝統的構法とも言えるのでその周期は0.2~0.3sに入る(↓図)。
木造建物の倒壊は、固有周期0.3sの建物であっても最初の地震の一撃(数秒)で、建物の接合部が破壊されることで緩み、固有周期が1.0s~1.5sに大きくなった所(等価周期)で、地震の周期1から2sに共振して壊れることが多いことがわかっている。もし「て・こあ」が先の3つの大きな地震(新潟地震、中越地震、中越沖地震)で被害を受けていれば、既に等価周期の建物になっているはずで、その結果となれば何らかの早期耐震補強をしなければならない事になる。
さて・・・計測である。
器機は、微動計2台とパソコン1台。これだけで測る事が可能。
1台の微動計を建物の最下部(地上部)の微震動をダイレクトに拾う土間などに設置。
もう1台は2階の床(梁の上など震動が吸収されにくい場所)に設置する。この状態で10分間微震動をはかる。その間、冷蔵庫はコンセントを抜き息を止めるくらいに静かにして大地からの微震動を正確にキャッチ出来るようにする。その大地からの微震動が2階で増幅されるが、その増幅の一番大きい振動数のところがその建物の固有振動となる。データの処理流れは下の通り。
データ計測(10分)
↓
波形切り出し(5分間)
↓
フーリエスペクトル解析
↓
平準化
↓
スペクトル比算出
↓
固有振動数決定
である。
処理データは5分間で3万個・・・100/sになる。
結果は冒頭の図のとおり
梁間方向で3.2Hz(0.3s)で桁行方向は3.8Hz(0.26s)となった。
つまりこの建物・・・「て・こあ」は3度の大きな地震を受けているが、その固有周期はいまだ一般的な建物と同じ固有周期内である。つまり補修を今すぐする必要は無さそうである。とは言っても「緑の家」のような耐震等級2から3の建物の強さはない。しかし・・・過去の地震に耐えた理由としてこの地は地盤が良いことが大きかった。江戸時代からあったこの先代の建物とおなじ山のしっかりした大地に建っているので、振動が増幅しやすい信濃川で造られた軟弱地盤ではない。これは自宅の寺泊も同様である。そして2階に重い荷物がないと言うこと。これは一番大事。古い建物は2階に荷物を置かないことが耐震性を保つ秘訣である。無論構造計算している「緑の家」ではそれ相応の荷物が有る前提で計算がされているが、古い建物(昭和の建物)は当時の生活から2階にある荷物は布団くらいのもの。現在の物余り生活ではそれを無視して大量の荷物を2階に置くので建物の耐震性が著しく下がるのである。
一応これで皆様をお迎えできる最低限度の条件であることが少しわかった。ご協力頂いた長岡技術科学大学さんにはこの場を借りてお礼申し上げる。