住宅の安易なリフォームやリノベーションに対し
・・・その3 基礎配筋

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このブログを読んでいらっしゃる方は、「緑の家」ではリフォーム・リノベーションがないと思われるだろう。

そう・・・そのとおりで、私は積極的にリフォーム・リノベーションを薦めていない。理由は簡単で、耐震性の確保がとても難しいから。断熱気密は大概問題ないが耐震性がNGなのだ。

「緑の家」は耐震等級3認定や相当であり、「緑の家」の最低基準が耐震等級2となっている。
この耐震等級2でさえそれを確保するのはとても難しいと常々感じている。

とここまではその1と同じ。その3では基礎の配筋が耐震性NGの理由である事をお伝えする。

改めて申し上げるが、リノベーションは大好きでご提案したいが、耐震性をまじめに考えると新たに作った方が良いとの判断が普通になるからである。

基礎は配筋が重要

その1で基礎のアンカーボルトとその座金が現行法の耐震と違うと話したが、そのアンカーボルトが現行法に沿って改善されたとしても、そのアンカーボルトを支える基礎自体の耐力が無ければ意味が無い。その2でお話ししたとおり木造住宅の基礎構造は平成12年まで鉄筋コンクリートでなくとも建築できたし、鉄筋コンクリートとして構造計算する事は原則求めていなかった。そのため多くの基礎は経験則に沿った基礎配筋となっている。基礎配筋とは基礎の強度を決定する鉄筋の量や配置のこと。

下に最近設計した実際の住宅の基礎を、20年前(平成11年)の仕様にした場合のシミュレーションである。建物の性能は耐震等級3でありごく普通の関東に建つ2階建て住宅である。

この図は基礎伏図であり基礎をどのように作るかとの番号が振ってある。このうち赤丸の部分が20年前に行われた一般的な鉄筋量では足りない部分を示している。たった3カ所と思う方もいらっしゃると思うが、1箇所でも耐力不足なら耐震性としてはNGとなる。ここが耐震性の厳しいところ。図のとおり3カ所も基礎が壊れれば、家は崩れなくとも続けて住むことは不可能。

20年以上前の家の基礎はまだ布基礎も多くその場合には上のような配筋で耐震等級3の家の基礎となる。

これは膨大な計算を行ってはじき出される数値で、正確な耐力壁の位置と壁、床剛性があって初めて算出される。

こんな事を日常業務としていると、リフォーム・リノベーションによって現行法に沿った耐震性を確実に担保することは大変難しいと言わざるを得ないし、現実的ではないことがわかる。

だからすすんでお勧めすることができないのである。建築のことを語るとき命に直接関わる構造を知らないことは悪である・・・と私は思う。

基礎の耐震補強はどうか?

既存住宅を耐震補強するためのマニュアルは国交省監修で発刊されている。

この中で基礎の補強はわずか1ページのみ。この本の総ページが248ページのもあるのにも関わらず・・・1ページ(但し全補強方法でもわずか14ページであるが)。馬鹿にしていると思う。私たち構造計算をしているときは、事細かく重量や力の分配など考え基礎にたどり着く応力を考える。でもこの本は・・・これしか出来ないので仕方ないでしょう・・・的感覚を否めない。

構造計算なしで、これだけ行えばOKでは乱暴すぎるが、これ以上行うと壊すしかないのだろう。

しかもこの補強方法では外周部基礎にしか対応が難しい。内部基礎は仕方ないので目をつぶっておっておこう・・・。的な感じ。内部基礎を補強するには一階の床を全部剥がさなければならず、もう新築とどこが違うの・・・となる。

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