続・暑い時期到来!簾の日射遮蔽 
直達日射・天空日射と簾

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2021.06.22リンクが間違っておりましたので修正しました。

モダンなガルバニューム鋼板でも簾設置を薦めるのが「緑の家」。

「緑の家」ではできる限り「簾」など外部で日射遮蔽をする。ガルバニュームの家でも上のように・・・。なぜ庇だけでは駄目なのか?

三度登場の「エコハウスのウソ 2」。わかりやすいので是非購入してほしい。

この本にその理屈が書かれているので読んで頂ければと思う。

1.8月は夏至の6月より太陽高度が10度低い

まず何度も申し上げているとおり、夏の暑い時期8月の太陽高度は思っているほど高い位置になく、まだ涼しい夏至である6月20日前後の10時30~13時30分の高度は70度から77度の間、それが気温が最も高くなるお盆のころは低くなり10時30~13時30分の高度は60度から67度の間。・・・10度も違うことで南側でも出の短い庇では役立たずとなる。当然東面と西面は言うに及ばず庇では直達日射を防げない。

2.天空日射が軒・庇では防げないから暑い

「エコハウスのウソ2」より転載。著者 前真之 とてもわかりやすいグラフなので参考資料として転載させて頂いた。 詳しく知りたい方は購入してほしい。

次にこの本で紹介されている・・・

庇で防げる「直達日射」より庇で防げない「天空日射」の熱進入が8月はおおくなる・・・

とのことである(但し東京のデータ)。

これは建築関係者でもほとんど人が理解していない。そもそも直達日射と天空日射の違いがわからない方が多いだろう。

直達日射とは簡単には一般的に「日向の光」のこと。日向と日陰があれば日向が直達日射と天空日射の両方が降り注ぐ側で、日陰は天空日射のみ側。日陰でも明るいのは天空日射があるおかげで、天空日射のない宇宙空間では直接太陽光が当たらない日陰?は夜のように真っ暗になる。天空日射は太陽光が地球を覆う大気(塵・水蒸気を含む)に反射して散乱した光であらゆる方向からくるので日陰でも明るいのである。つまり光そのものを遮蔽しなければ天空日射による熱流入は原則防げない(暗くすること)。

上図の塗りつぶしは積算量となるので、8月平均値である左列側グラフは濃いオレンジより薄いオレンジの面積が概ね1.2倍多くなる。つまり日射により熱は天空日射が多いことを示す。一方晴天の日だけをみると右列側のグラフになりやはり直達日射のほうが約2倍(水平面)多くなる。

3.まず晴天時の直達日射を外部で確実に防ぐ

都内に住んだことがある人はわかるが東京の8月はヒートアイランドで気温は上がるが晴天率は新潟県より低く、意外と曇天の割合が高い。一方新潟県は晴天率が高く大気は安定し夕立がほとんどない。

一般論から言えば気温が特に上がる日は、晴天の日がほとんどで、家中空調された超高断熱住宅では直達日射を防ぐことが第一優先である。これはどの地域でもほぼ同じ。まずは直達日射を確実に防ぐ事が重要。

この図でもう一つ大事なそことは、南面と東面、西面は3面ともほぼ同じ熱量が入ってくること。つまり東面と西面を合計すれば南面の2倍の熱が窓から侵入することを意味し、南窓の日射遮蔽だけでは1/3の対策でしかない事がわかる。

簾の有効開口率を上図から約50%とした場合、天空日射も約50%防ぐことができる。

もし敷地が真南向きでなければ、西と東面ににも大きな窓が設置されるだろう。その時は庇だけではまず防げない。通常真南に向く敷地なんて確率で言えば1/4以下であり、常識的に考えれば直達日射をほぼ100%と、有効開口面積から天空日射をほぼ50%を確実に防いでくれる簾の、日射遮蔽の素晴らしさが改めてわかる。詳しくは2年前の下のブログのシリーズ5話を読んでほしい。

今夏は簾(すだれ)を科学する。その1
TEXT スタッフM 夏の窓際といえば「簾」・・・。 「緑の家」の外観といえば、基礎が高くて簾と大きめの庇があ...

4.ガラスの選定は夏期の日射遮蔽で決める(持論)。

エクセルシャノンの樹脂サッシのガラスの種類は6種類ある(内5種類は上の表どおり)。

太平洋側の住宅は冬期の日射を最大限暖房として使いたいだろうから、日射取得が大きい上表の高断熱性のガラスη=0.58(取得率)を選びがち。一方日本海側では冬期の日射は見込めないから夏期の日射が防止出来る遮蔽型ガラスη=0.33を計画することが多い。その日射遮蔽の差はほぼ1.8倍となる。

その日射遮蔽用のガラスη=0.33(取得率)と簾を使えば直達日射のほぼ全てである1.9kwh/m2日と天空日射の熱1.1kwh/m2日の50%のうちの67%を防ぐことになる(晴天の東面を想定。但し取得率を天空と直達同様に仮定した時で以下同じ)。簾とこのガラスを加味した日射遮蔽は94%となり(簾からの再輻射は無視)、これは省エネ基準書のマニュアルにある外部ブラインドとほぼ同等の日射遮蔽になる。ガラスが日射熱利用型η=の0.58であればトータルの日射遮蔽は90%となり、ガラス別の差は4%である。熱にして0.12kwh/m2日。窓の大きさが2m2の時0.24kwh日の差となる。この量で部屋が暑くなるかを判断しガラスを選定することになる。

一方簾がなく室内に普通のカーテンを設置した場合で、ガラスが日射取得タイプη=0.56とした時に窓の大きさを上と同じ条件で揃えると、3360wh/日→Aとなりこれでは暑くなることが容易に想像できる。ガラスを日射遮蔽型にしても1980wh/日である。一方簾設置の日射遮蔽用のガラス時には360wh/日→Bにしかならない。高断熱性能のためにトリプルサッシをいれても、ガラスと簾の組み合わせいかんではAとBの差のように夏期の日射取得量は9倍にもなる。オーバーヒートした冬は窓を開ければ良く、また加温はしやすいが、夏は対処方法がなくなる。

そこで「緑の家」では夏期の条件でガラスを決定している。決して冬期がメインではない。巷では冬期の日射取得率でガラスの性能を決定しているだろうが、超高断熱住宅の個室における冷房の難しさを考えると、冬期より夏期が重要だと私は思っている。

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コメント

  1. HK より:

     いつもブログを拝見して勉強させていただいております…が、南東面、南西面の2階に大きな開口部をFIXで設けてしまいました笑
     南東面は内側で遮熱ロールスクリーン、南西面は手動外部スクリーンで対応することとしましたが、1階は簾で対応します!

    • Asama より:

      HK様
       コメントありがとうございます。
      >南東面、南西面の2階に大きな開口部をFIXで設けてしまいました笑

      多分想像するにこの窓は個室ではないので、空調がその空間に直接作用していれば問題ないのでしょう・・・快適な夏をお過ごしください。

  2. 山梨県民のD.M より:

    窓選びに迷っていた為大変参考になりました。
    ありがとうございます。