原村の家の次に伺った井岡の家。屋根の仕上がりチェックと耐力壁検査である。屋根はご覧の通り単純な切妻屋根でAT葺き。当然、棟換気も10年ほど前から原則やめており、棟換気がないとシーリングに頼る防水部分がないので、シーリングの寿命の15年経ても何もメンテナンスする必要はない。棟換気があると、通常どうしてもシーリングの必要があり、そこが将来の欠点となる。
屋根にもシーリングで防水を担保する箇所があることはご存じだろうか?しかし切妻屋根のAT葺きのガルバニューム(SGL)ならシーリングはまず無い。
一方寄棟屋根は頂部でわずかなシーリングがあるが、家の中心頂部であるから1方向を除き他の方向から風が吹いても必ず負圧になる。その一方向の正圧は0.4と切妻の側面頂部の正圧0.8の半分程度の圧力になる。この差が暴風雨の時に効いてきて、正圧が高いほど雨が内部に引き込まれる方向に作用する。よって寄棟頂部のシーリングより切妻の棟換気シーリング部のほうが漏水の危険性が高い。とはいっても比較の問題で、谷や段違いがあったりする変形屋根よりはよい。
ところで・・・
ハウスメーカーの家で外壁が乾式タイル張りなどよく見かけるが、そのタイルを張り付ける下地ボードの接手は全てシーリング納まり。つまり多数のシーリングが存在するが、このメンテナンスは窓廻りのシーリングと違ってタイルをはがさないと実質不可能。ほとんどが20年後にはシーリングに頼れなくなるのだが、その後の防水性も問題ないとの認識なら、当初からシーリングは行わなければよいと思うが如何だろう。当然30年ノーメンテの納まりもあるだろうが。
さて、もう一つの本題の構造用合板の耐力壁チェック。
いつも「緑の家」を手掛けられているヨシダさんの勝山さんなのでもう完璧である。
安心してチェックができた。
特に今回からこの短辺方向のくぎ打ちだが、中央から@150以内で振り分け、隅角端部に細かくなる釘間隔。これが実際の応力に沿っていて大変良い。25年ほど前に新潟大学さんで構造用合板耐力壁の実際の破壊試験を行ったことがあるが、最終破壊はこの端部から始まる。よってこの端部の釘が最も大事な釘となり、ここのピッチだけ細かくなる割り付けは理想的である。
合板12mmを使うときは、めり込み許容を0.5mmとしているが、今回も全数めり込みもなく安定していた。当然めり込むよりわずかに浮いていた方が耐力的には有利となる。
さて先日、高倍率の床合板が施工されていると紹介したが、私の案内不足で縁距離がわずかに足りなかったので、釘の増し打ちを施した。これで問題なく構造計算通りの水平耐力が発揮されるだろう。