換気で、なぜ新鮮空気を床下内へ最初に入れないのか?

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何度か話題にしている「なぜ床下内に新鮮空気を入れないのか」であるが、何度も質問を受けるのでこのブログでも話題になりやすい。今回は簡単に説明したい。

空気齢を日常にあてはめわかりやすくした図

空気齢がこの話題のポイントになる。空気齢も何回かこのブログで案内しているが、まずは下の博士論文の梗概をご覧いただきたい(DL版)。1997年の東北大学の博士課程で小林氏が博士を取得するための論文であり、指導教官および主査はこの分野の第一人者である吉野先生である。このような博士論文は他の論文と違い内容は濃く高い価値がある。

https://tohoku.repo.nii.ac.jp/record/89819/files/T1H082026.pdf

このように空気齢は換気(効率)にとって切り離せない重要なことである。わかりやすく表すと・・・上の図のとおりとなる。

大前提が「給気は大気でありそれがきれいな状態とであるということ」。この大気が汚ければ空気浄化装置(HEPAフィルターや電気集塵)で綺麗にしていることとする。

Aの人は汗や息を吐きそれによって新鮮空気は少しだけ汚れる。その空気はBのいる人に空間に入って次にBが汗や息を吐き、その量はAの部屋の倍となる。次にCのいる空間に入りCが吐く息と汗によってさらに濃度があがり、Aの空間の3倍となる。つまりこの家ではCのいる空間が最も空気が汗や息によって汚れていることになる。このように新鮮空気が出ていくまでにどのくらい時間がかかったか(時間がかかれば汚染されている時間が長い)を表す指標が空気齢となり、空気齢が長いほど汚染されている可能性が高く換気効率が悪いということ。つまり一般的に空気齢が短い家に入ったばっかりの空気ほど新鮮な空気ともいえる。

上図では人が汚染源であるが、これがトイレの匂いだったり、倉庫内にある埃やカビだったりするとわかりやすく、その空気を人は避けたいと思う。よってCのいる空間は通常トイレになることが多い。また各室にダクトなどで新鮮空気を配り、AやBやCの部屋で完結するようにしている。そこで・・・

Aの空間が最も清浄な空気であるため貴重な場所となる。

床下内や壁体内がAの空間としよう。人がいなので空気は通過しても汚れがないとの考えになる。しかしそれはその空間に埃やカビが生えていないような清浄な空間の場合である。その場合は特に問題がないが、家では時間経過とともに考える必要がある。5年後は綺麗と断言できるのか、10年後、20年後はどうだろう。

すると床下内や壁内は大きなダクトと考えれば同じこと・・・という考えもあるが、ダクトは汚くなったら交換できるが、床下や壁内の交換?は事実上不可能。特に壁内など内部に複雑に絡み合う様々な下地の木があり、そこに引っかかるゴミもあるし、何しろ床下や壁内を巨大なダクトと考えると気流が0に近い。だからクモや虫が住み着いやすいし、実際に虫の亡骸やクモの巣があることを多くの人が体験している。一方直径100φのダクト内なら流速は5m/s以上となり木枯らし風程度まであがるので、容易クモの巣などは昆虫が住むことはない。また運ばれるチリや粉じんも気体ののべ流量に比例するからダクト内も床下や壁体内もチリや粉じんの総量も変わることはない。かえってチリやごみがダクトに引っかかってフィルターのかわりとなる考えもあるだろう(交換をする時期が早まる)。

さて少し考えればわかるのだが、そもそも床下内は人がいるわけではないので原則換気の必要がない。だから換気のルートにする必要がない。もし換気が必要なことがあるとすれば、竣工時の湿度の抑制のためだけである(ただしシックハウス法には順法すること)。しかし換気で抑制できるのは冬季だけで夏季は逆に危険側になる。そのため床下内の湿気制御にはエアコンが最も簡単になる※。現在はエアコンで湿度コントロールができるので床下内は換気の必要がなくなる。
※エアコンが設置できないのであれば他の方法となる。

こんな理由で床下内に新鮮空気をわざわざ入れる必要性がないのである。というより空気齢を考えれば一番最後にとおる空間が床下のほうが理想的である。

誤解のないように申し上げるが、入れる必要がないのであり、床下内に入れたければ入れればよいだけのこと。但し私は積極的に進める理由はなく逆に消極的になる上の理由が多いと考えている。つまり「緑の家」は無難な換気を目指している。北海道のような寒冷地では新鮮空気を床下内で加温してから各部屋に配ることは否定しないが、温暖地でそれが優先されることとは考えにくい。

換気は目に見えないばかりか、その影響は大きくないので多少リスクがあっても健康な人にとっては全く問題ないことが換気の評価の難しさである。

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