郵便局の被害からみる液状化対策

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郵便局の駐車場は大陥没。その後車を撤去して土が挿入されて平らになった.
ピンク矢印は陥没の角度を示すが、輪留めが痛々しい。

このブログは「「『緑の家』の外部配管方式は 長期優良住宅標準の基礎貫通型その2」となる。

郵便局が周囲の建物より比較的大きな被害を受けたとのことは様々な報道や、当ブログの写真でわかるとおり。この原因・・・おわかりだろうか?

「だから・・・液状化でしょう」

それでは半分だけ正解であり、ここで思考を止めると対策がわからなくなる。

報道も直ぐに郵便局の液状化の説明を下のとおりするが、

「平時は砂の粒子と粒子が噛んで固体の地面だったのが、地震で揺すられることでその引っかかりがなくなって液体のように緩くなってしまうこと」

であるが、これでは地盤の専門家が専門的に説明するときであり、関係者以外は何のことかを想像しがたい。

しかしこの郵便局の事例をみれば大変申し訳ないが液状化がわかりやすい。

建物前方は400mmも床が上のとおり隆起して、その横の駐車場は1000mm近く陥没している。住宅ではこのように浮き上がる例は限りなく少なく、西区にあった郵便局2つは何故か浮き上がった。その原因として・・・

郵便局が地下室があり浮き輪のような空気のある空間が地下にあったのである。郵便物搬入や銀行業務も行う郵便局は防犯の点から地下室その維持のため地下窯場(ポンプ室)があると思われる。それが普段は当然土の中にあるのだが、液状化によって土が水になり、地下室の浮力によって浮き上がったのである。そうなると浮き上がった部分は間隙となり、それを埋めるように廻りの砂が水と共に流れ込む。すると今回のように隣接する駐車場の下の地面(砂)が引き込まれ土が無くなることで陥没する。これは下の模式図でわかるとおり。

郵便局は2階建てであるがわかりやすいように平屋地下室付きだと考えてほしい。

液状化とはおおざっぱに言えば土が一瞬水になることと捉えればわかりやすい。水になれば水より比重が大きい建物は沈む。一方水より比重が小さい配管やマンホール、そして地下室は浮き輪のように浮き上がる。コンクリートで出来た建物でも浮力が勝れば浮き上がる。これは鉄で出来た大型タンカーに原油を満載しても浮いていることを考えれば当然のこと。沈んだ建物周囲では沈んだ体積分の帳尻を合わせるように砂の混じった水が噴き出す。吹き出した周囲には大体沈んでいる構造物がある。例えばコンクリート板のスラブやコンクリートブロックなど・・・。逆に浮いた(隆起)した近くには必ず沈んだ何か(建造物)がある。

このことがわかれば液状化対策を考えることができる。大凡水と同じ比重になるように建物を調整すれば液状化で被害を受けることがない。例えば配管なら塩ビでなく鋳物で比重が1前後になれば浮き上がりは防止できる理屈。しかし現実的にそんな事を考えて配管をしている人はいない。であるが例えば配管の上に浮力を相殺するようなコンクリートを載せれば浮力は生まれないことになる。

建物沈下量が1から6mmだったこの写真の建物で、沈んだ物体は主にCBの塀になり、浮き上がった所は配管になる。もし沈み込むような物体が近くになければ下の写真のように配管が浮きあがる力は弱まり浮いてこない場合がある。この配管の直径が110mmだったとき、上に60mmくらいのコンクリート(砂利なら120mm程度)が乗っかっていれば浮力は生まれない。しかし上のように直ぐ横にCB塀のような沈下物があると話は変わる。CBのその押す圧力で周囲に浮力(水圧)が増強される。砂利の厚さが60mmで更にCBの沈み込み圧力が油圧ポンプのように働き地中の配管は浮いてしまったと思われる。

こちらはCB塀のような重い物が近くになく建物本体も沈下はほぼないので配管が完全には浮き上がっていないと考えられる。

このためコンクリートで重しをするのは厚120mmくらいで巾400mm位を施工しないと難しい。しかしそれでもCB塀ではなく更に大きな建物が沈むような自体になるともう想定は難しい。そこで大事な事はまず建物を沈めないようにすることが外構や配管を守る第一歩になる(CB塀等の沈下物が近くにないとき)。

建物を沈めないようにするには、水(泥水)と同じ比重になるように地下空間を少し計画すればよい。これが出来れば液状化による沈下は避けることができる。しかし現実的には建物重心によって地下の大きさを調整し浮力と重さのバランスがとれないと不同沈下する。重さを浮力のバランスを取ると言うことは船を設計することと同じ難易度になりこれは現実的ではない・・・。ではどうするかというと、建物が水に浮かない状態(船なら暗礁状態)をつくる。つまり地盤改良杭によって摩擦力を加算しなくても改良杭先端の支持力だけでその建物が支える事が出来るように設計すれば建物真下が水になっても理論上沈むことはない。これが最も現実的な液状化対策となるが、地震時は建物と地面の揺れが一致する事はないので、改良杭から建物が数割外れてもよい安全率は必要である。一方このような対策は行っても沈む可能性がゼロになる事はすくない。他方この改良杭だが、出来れば杭周囲が水になっても座屈しないような径が理想的である。設計の保証は今のところ出来ないが平場ならこれで大概大丈夫だといえる(つまり擁壁があるような斜面は除く)。

それでも心配な方は耐震等級3を取得した上で地震保険に入ることで解決するしかない。地震保険は火災保険より高額であるため耐震等級3であれば耐震等級2より3割安くなり、さらに地方都市では東京の1/2~1/3程度で加入できる。下にその大凡の金額を調べる事ができるサイトを貼る。

https://www.sonpo.or.jp/insurance/jishin/calc_2022.html

ただし、前回もお伝えしたが建物本体が問題ない場合、外構および外部給排水については保証対象にならないことに留意してほしい。

一戸建て住宅において地下室がない限り浮き上がり対策は外構と外部給排水などだけとなる。その外部給排水配管だが、隆起を防ぐにはその上にコンクリートなどで浮力を相殺する蓋をすると隆起が防げることが多い。しかしその一方、隣接する建物(お隣建物や塀)が大きく沈下すれば、地中の液体圧力が高まりそのコンクリートさえも持ち上がることになる。そうなると逆にコンクリートが徒となり目視確認や修繕が大変になる。長い配管、手作業の狭い敷地、コンクリートの犬走りでの覆いでは修繕に100万~300万かかる場合もある。よって外部地中配管はメンテナンスが優先なら砂利や土などで、周囲に沈下物がなければコンクリートで上部を覆うこともよい。

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