動画系のネット情報と集成材

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
左は土台など使用環境A(JISJAS規定)で使う集成材で右は使用環境Cの屋内のみで使う集成材。その違いがわかりますか?

「緑の家」のホームページやブログ自慢は、とにかく情報を削除しないといことに尽きる。1999年から25年間のネットに上げた情報は可能な限りすべて公開している。その中でオーブルデザインでは動画の情報が極端に少ない。これには理由がある。

ここ数年はユーチューブを始めとする動画による情報提供が不可欠な世の中になっている。しかし「緑の家」での動画は少ない。それはまず第一に私がネット上にフェイスなどが映るのを嫌う性格であることが大きい。よってブログは3000日を超える情報があるが、自身の顔が映り込む情報は片手で数えられるほど少ない。

次に動画の製作は一日でできるほど簡単ではなく、何度か取り直して編集しなければならないこと。その時間の半分以下でブログの記事はかけるし、何しろ・・・動画は修正や加筆がほぼできない。これは致命的である。

私の性格としてブログの読者さんならわかると思うが、とりあえず記事アップしてそれから誤字脱字を修正していくスタイルであるため、動画はこれになじまない。修正編集に時間がかかりすぎるのである。

このブログでも間違った情報を発信することもあるが、その場合は速やかに修正することを心掛けている。免許のあるプロが発信する情報だから影響は大きく誤った情報で間違った選択をしないようにと心がけるのは、人の命を預かる建築士という職業してとても大事である。

使用環境Aで使う集成材はレゾルシノール系樹脂に限定され、特徴は黒い接着面となる。

ところがユーチューブを見るとどうも首をかしげるような情報がまことしやかにアップされているか、本当にそう思って正しくない情報をアップしているのかもしれないが、正しくない情報(法律に沿った内容でない)が多い。それは表現の自由とのせめぎ合いで一概に否定は出来ないが、悪意がある場合は別である。一方悪意がなくとも「士」が付く職業では、免許という特権が与えられている以上、原則法律で定めたことを正しく発信する社会的責任を全うしなければならない。だから間違いに気付いた際にはいち早く訂正することが道義上求められるが、動画の場合はそれが中々難しい場合があることが嫌いなのである。

使用環境Cでしか使えない透明な水性高分子系接着剤の集成材。屋内専用集成材。

この度数千回再生回数があるユーチューブ動画の中であまりにも酷い内容があったのでそこは補足しておきたい。この動画はユーチューブ会社が勝手にユーザーに推薦する動画として表示されたのでつい視聴してしまった。簡単にいうと「集成材は10年で無垢材より著しく性能が劣化する」的なことで、「公的機関の暴露実験でも証明されている。」と紹介していることである。集成材の接着剤の耐久性は相当多くの暴露実測が行われ、業界の結論は既に「レゾルシノール樹脂の接着剤が使われていれば、その耐久性は屋外では木より長い」との事になる。当然今から30年前に集成材で造られた木の橋は今でも現存して車が往来している。また2010年の当ブログにおいてもそのことは決着がついているとの紹介をしている(つまり14年以上前の決着事項が何故まだ言われるのかが大変不思議である)。なぜこのような間違いがおこるのか・・・このような勘違いは巷では下の写真の事例があり、それを鵜呑みして自身で原因を調べないことによることだと思われる。

無残にもラミナ面で剥離が始っている構造柱。
築年数は8年。8年でこれでは耐雪2mの性能はまず無いだろう。一応市の公共建築物である。

戒めで紹介するが、上の公共の小さな木造建築物では屋外に露出している柱は、この屋外に使用するときの必須であるレゾルシノール樹脂の接着剤ではなく水性の高分子系の屋内専用の接着剤を使った柱が使われている可能性が高いため、無残にも接着面が剥がれている。

平成26年竣工だから既にJISJAS規格がしっかりあるので設計施工共に言い訳出来ないはず。しかもこの足下金物のビスはSUSかな?

小さいとは言え税金を使った公共建築でもこんな間違った使い方を過去していたこともあるので、一概に上の動画を責めることが出来ないが、専門家なら少し調べてみればわかることである。使っちゃいけないところ(屋外の雨がかり)で水に弱い接着剤の柱とその樹種を使う事は・・・間違いなく論外である。

この事はJASによって細かく規定され、上のような屋外で水がかり且つ日射にさらされる場合の「使用環境A」に該当し、その際の接着剤はレゾルシノール樹脂及びレゾルシノール・フェノール樹脂に限定される。当然「使用環境C」の接着材の水性高分子イソシアネート系樹脂では剥離する事は明らかであり、木造建築を生業としている方は知っていて当然のことである。

例えるならスチール(鉄)は大変強い材料だが、屋外でそのまま使えば直ぐに溶接部から錆びが進行し強度が無くなる。しかし屋内で使った場合、特別な防錆をしなくとも錆がゆっくり進行するので問題はないと殆どの人が知っている。集成材も接着剤によって使用用途が変わるのである。ただそれだけのことである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. Asama より:

    本田ビート様
    コメントありがとうございます。

    >発信者がプロだからと言って全部鵜呑みにするのは危険なのだなと今回の件で思いました。しかし情報を取捨選択するのは本当に難しいですね 何を信じればいいのか…混乱してしまいます。

    仰せのとおりです。
    まずは根拠(ソース)もしくは計算などの裏付けが示されていること、またその根拠が可能なら法律(条文)、条例、JIS、JAS等の大勢で精査と合意されたものであることで、それ以外のなら自身の考えである旨が明記されていることをまず取捨選択の基準にするべきかなと思います。今回の記事の発端となった動画は、その点が殆ど示されずまた実験データの条件を示さず自身の考えのみで断定しているので、もし「士」の免許を持っているなら少々恥ずかしい発信と思います。一方でこの動画で集成材の正しい知識が逆に広まることになれば、それはそれで結果オーライなので批判だけで済まさず検証する姿勢は必要です。

  2. 本田ビート より:

    私も先日同じような集成材を否定する動画を見ました。

    その動画投稿者が無垢材を推してるプロの方で、あまりに自信たっぷりに語るのでちょっと不安になってしまいました。
    こういう動画をすでに集成材を使って家を建ててしまった人が見たらかなり不安になるのではないでしょうか。
    こうして浅間さんにブログで解説頂いて本当にありがたいです。
    発信者がプロだからと言って全部鵜呑みにするのは危険なのだなと今回の件で思いました。
    しかし情報を取捨選択するのは本当に難しいですね 何を信じればいいのか…混乱してしまいます。