上は一昨日「本所リバーサイドの家」の現場チェックに伺った時の写真。昨今の屋根材で最も人気があるのはこのガルバニューム鋼板(現況は実質SGL)であるが、新潟県はもう40年以上前からガルバニューム鋼板の屋根が一般的につかわれてきた。しかし新潟市では海岸に近いこともあり、上の写真でわかるとおり特にこの本所地区の屋根は、そのほとんど、というより見えるすべてが瓦屋根であった。
上2枚の写真をご覧いただてもわかるとおり、見える家の屋根すべてが瓦屋根に見えるほどガルバニューム鋼板の屋根はこの地区にはなかった。多分塩害で昔のトタン板がすぐ錆びる苦い経験からだと思う。しかしこの本所リバーサイドの家が起爆剤となり、今後はこの地区でも急激に増えると思う。それはこのSGLがめっぽう塩害にも強い性能であるから、もし屋根に太陽光発電パネルを載せるなら穴無し工法で最も雨漏れに対し無難なSGLになるはず。しかも写真の白い矢印のとおり、屋根頂部が基本的に完全シーリングレス&ビス止め無しとなるこのAT葺き(長尺横段葺き)はとてもメンテナンスの上で優れている。しかしこのはぜで頂部をつくる折り方は他県では全く見ないので、技術的(道幅などの環境的にも)にできないのかもしれない。それほど40年以上最も多く葺かれた雪国素材の屋根であり、これが職人さんの経験なのだろう。
この「本所リバーサイドの家」は、MAXEON製の太陽光発電パネルで6.4KWを設置する。しかも雪は滑り落とさず屋根に堆積させたままを基本として考えている※。そのため南向きの屋根面積が広く必要で、片流れ屋根に近い招き屋根として設計しているため、背が高く大きい建物形状となる。その屋根を支える骨組みは「和小屋」であり、最もコストパフォーマンスが高い無難な構造。
※雪を落とす敷地はあるのだが、落雪すると屋根面劣化、雨どいの破損や一階窓雪囲いなどのデメリットも多いのでできれば避けたい。
その小屋裏には、これでもかというほど「振れ止め」または「小屋筋かい等」と言われる小屋組みを一体化させる耐震部材がずらっと並ぶ。
また耐雪1mで耐震等級3、さらに地震地域係数が0.9でよい新潟県で、その10%増しの耐力となる1.0で計算して長期優良住宅を取得しているので、桁上合板もしっかり必要になった。このように同じ耐震等級3でも10%増しの耐力の差は設計者の思考でかわるところが大事なところ。一方この桁上合板がなければこの「振れ止め」の足元が桁まで延ばせるのであるが、束の足元でも効果はほとんど変わりないのでこれでOK。ロフトを作るときの屋根断熱の場合は、この「振れ止め」を入れることができないので、勾配状の屋根をしっかり固めそこまで2階の耐力壁を延ばすことが必要になるので、コストがかかるわけである。
さて・・・筋かいによる耐力壁だが、近年は建材合板の耐力壁が多くなっているので、筋かいが珍しくなってきたように見える。
ここでいつも不思議に思うのは、常日頃から「無垢材の柱」に拘る家づくりでも、なぜか耐力壁は最も人工バリバリ素材の「建材合板」つかう考えがあること。国で筋かいの地震耐力性を認めているのだから、「無垢材にこだわるなら耐力壁こそ無垢材で造るのが筋だろう」と思っている。しかし「緑の家」は無垢材だから筋かいを使うのではなく、4年前一枚1000円だった構造用合板が、現在では2000~2500円なので、4年前より数割高い程度で収まっているコスト的に無難な筋かいにしているだけである。筋かいは断熱材を入れる手間はかかるが、そのほかはたいして違わない。繰り返しの地震には合板より弱いとの実験結果はあるが、震度7が短期間で2回も来ることは過去100年間でも熊本地震が初なので、そのくらいの発生割合なら仕方ないし、それが理由で建材合板にこだわるならそれより耐力壁を増やし、さらに変形の少なくなる考えのほうがよいかもしれない。