床下への最初の給気(換気)はやはり嫌い。

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新築当初の基礎断熱内の床下は綺麗だが・・・

高断熱高気密の住まいを少し勉強した人からは必ず質問される。「床下に給気する換気方式はどうか?」と・・・

そこで何度もお伝えしているこの件の再掲となる。もう何年もまえから申し上げているが、換気やエアコンなどの設備はメンテナンス(掃除等)が重要だから・・・と口を酸っぱくして申し上げている。が、それでも何回もお伝えしたい。

何度か話題にしている「なぜ床下内に新鮮空気を入れないのか」であるが、幾度も質問を受けるのでこのブログでも話題になりやすい。今回は簡単に説明したい。

20年経過した自宅床下(基礎断熱)。蜘蛛の巣や虫など死骸がある。

自宅は半分を床断熱、半分を基礎断熱を含む土間床になっている。そこで20年経過した基礎断熱下の写真を上に載せる。10年くらいまとに掃除しなかったせいか蜘蛛の巣と埃、虫の死骸がある。ここまで汚れることは極端かもしれないが、10年以上掃除をしない空間が汚れないと想像することは難しい。床下だけなら百歩譲って掃除ができるので良しとしても、壁内を給気通路に使うのは解体まで掃除もできないし、ダクトのように取り換えすらもできない。住宅内で空気が流れる空間は時間の経過とともに「等しく」汚れるという発想が欠けている。

そんな汚くなる空間にわざわざ新鮮空気を入れ換気の経路にする必要性があるのだろうか。床下暖房をしている家では10年間も掃除をしないことはないだろうが、もし人が立てないような低い床下なら、居住部分とは違う入り組んだ床下空間を隈なく掃除できるとは思えない。当然掃除が全くできない壁内はNG。

以下は既に案内している2023年のブログのコピペである。

そもそも給気が一番最初に入る部分は最も大事な居住部分が、「空気齢」から見てふさわしい。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: CCI_000022-1-1600x1112.jpg
空気齢を日常にあてはめわかりやすくした図

「空気齢」も何回かこのブログで案内しているが、まずは下の博士論文の梗概をご覧いただきたい(DL版)。1997年の東北大学の博士課程で小林氏が博士を取得するための論文であり、指導教官および主査はこの分野の第一人者である吉野先生である。このような博士論文は他の論文と違い内容は濃く高い価値がある。

https://tohoku.repo.nii.ac.jp/record/89819/files/T1H082026.pdf

このように空気齢は換気(効率)にとって切り離せない重要なことである。わかりやすく表すと・・・上の図のとおりとなる。

大前提が「給気は大気でありそれがきれいな状態とであるということ」。この大気が汚ければ空気浄化装置(HEPAフィルターや電気集塵)で綺麗にしていることとする。

Aの人は汗や息を吐きそれによって新鮮空気は少しだけ汚れる。その空気はBのいる人に空間に入って次にBが汗や息を吐き、その量はAの部屋の倍となる。次にCのいる空間に入りCが吐く息と汗によってさらに濃度があがり、Aの空間の3倍となる。つまりこの家ではCのいる空間が最も空気が汗や息によって汚れていることになる。このように新鮮空気が出ていくまでにどのくらい時間がかかったか(時間がかかれば汚染されている時間が長い)を表す指標が空気齢となり、空気齢が長いほど汚染されている可能性が高く換気効率が悪いということ。つまり一般的に空気齢が短く家に入ったばっかりの空気ほど新鮮な空気ともいえる。

上図では人が汚染源であるが、これがトイレの匂いだったり、倉庫内にある埃やカビだったりするとわかりやすく、その空気を人は避けたいと思う。よってCのいる空間は通常トイレになることが多い。また各室にダクトなどで新鮮空気を配り、AやBやCの部屋で完結するようにしている。そこで・・・

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: CCI_000022-1-1600x1112.jpg
Aの空間が最も清浄な空気であるため貴重な場所となる。

床下内や壁体内がAの空間としよう。人がいなので空気は通過しても汚れがないとの考えになる。しかしそれはその空間に埃やカビが生えていないような清浄な空間の場合である。その場合は特に問題がないが、家では時間経過とともに考える必要がある。5年後は綺麗と断言できるのか、10年後、20年後はどうだろう。

すると床下内や壁内は大きなダクトと考えれば同じこと・・・という考えもあるが、ダクトは汚くなったら交換できるが、床下や壁内の交換?は事実上不可能。特に壁内など内部に複雑に絡み合う様々な下地の木があり、そこに引っかかるゴミもあるし、何しろ床下や壁内を巨大なダクトと考えると気流が0に近い。だから暗いこの空間にはクモや虫が住み着いやすいし、実際に虫の亡骸やクモの巣があることを多くの人が体験している。一方直径100φのダクト内なら流速は5m/s以上となり、ダクト内の気流は木枯らし風程度まであがるので、容易クモの巣など昆虫が住むことはない。また運ばれるチリや粉じんも気体ののべ流量に比例するからダクト内も床下や壁体内もチリや粉じんの総量も変わることはない。かえってチリやごみがダクトに引っかかってフィルターのかわりとなる考えもあるだろう(交換をする時期が早まる)。

さて少し考えればわかるのだが、そもそも床下内は人がいるわけではないので原則換気の必要がない。だから換気のルートにする必要がない。もし換気が必要なことがあるとすれば、竣工時の湿度の抑制のためだけである(ただしシックハウス法は順法すること)。しかし換気で抑制できるのは冬季だけで夏季は逆に危険側になる。そのため床下内の湿気制御にはエアコンが最も簡単になる※。現在はエアコンで湿度コントロールができるので床下内は換気の必要がなくなる。
※エアコンが設置できないのであれば他の方法となる。

こんな理由で床下内に新鮮空気をわざわざ入れる必要性がないのである。というより「空気齢」を考えれば一番最後にとおる空間が床下のほうが理想的である。

誤解のないように申し上げるが、入れる必要がないのであり、床下内に入れたければ入れればよいだけのこと。但し私は積極的に進める理由はなく逆に消極的になる上の理由が多いと考えている。つまり「緑の家」は無難な換気を目指しているので床下に新鮮空気を一番最初に入れるのは嫌い。北海道のような寒冷地では新鮮空気を床下内で加温してから各部屋に配ることは否定しないが、温暖地でそれが優先されることとは考えにくい。

換気は目に見えないばかりか、その影響は大きくないので多少リスクがあっても健康な人にとっては全く問題ないことが換気の評価の難しさである。

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