今回の論文紹介は「構造系の査読論文集」からであるが、研究者らは環境・社会理工系で構造論文集の中では異彩な内容である。移動中に書いているので何度かアップする予定。
最初に誤解しないようにお伝えするが、今回の論文はどの床が一番疲れにくいかではなく、長時間労働時の疲れやすさから見た床の固さの評価を行うことを目的としている。よって直接私たち実務者が拝読しても今すぐ役立つことはない。しかし、床の表面の固さで長時間立ち仕事(今回の論文では介護施設の職員さんを想定しているが、住宅においては家事仕事を数時間行っている状態と考えても差し支えないと思う)を行った場合、その床の固さで疲労の具合が違うとの認識。
これに興味を持ったのは「緑の家」で完成見学会中に6時間ほど立ちっぱなしで来場者さんをご案内していると、その会場に貼ってある床によって疲れ具合が違うことをいつも実感する。木の床で最も疲れないのは「杉」であり次に「ヒノキ」、「松」となり、反対に疲れやすいのは「ナラ」や「タモ」といった堅木である。これは私だけの感想ではなく、過去携わったスタッフ全員が感じていると聞いている。この疲れが床の固さなのか、それとも表面材の熱伝導率の違いなのかははっきりとわからなかったが、私はこの2つが大きく関与しいていると想像しており、このうちの表面材の固さと疲れの評価方法の開発ということが気になったのである。
上図の2の目的と範囲にあるとおり、固さのみ評価であることに注意をしたい。
状来の評価装置は上のとおりであり、こちらは短時間における疲れやすさの評価開発時に用いた装置である。そして下図が今回の長期立ち仕事の疲れ評価の床の固さを測定する装置とのこと。
さて論文中には次のような記載があり、床自体の構造的柔らかさ、例えばスラブの上に転ばし合板で直接床をつくったり、また根太などの複材で床全体が柔の床だったりしたときような条件では、両者に疲れやすさの違いはなくほぼ影響はないことを予備試験または、既存論文で確認しているため床表面の固さのみを対象とするとあり、巷で言われる木造床だから疲れにくいということはないらしい。
こちらの論文を読んでの私なりの解釈だが、上の実験材を見ると杉とナラとの固さの違い程度が、疲れやすさに影響を及ぼすことはほぼない。木質なら図6の評価装置地で著しい差が出るとは思えないからである。それを受け取った記述として、「疲れにくい床の指標としてDcが4.7~6.7となる床Dcの選定を行えばよいことになる」とあり、図7の評価式からいえば加重点先の40㎜の変形量が4.7㎜といえば木質床系ではまず達成困難な難しい数値であることは明らかである。
となると、私たちが見学会で足が疲れやすい「ナラ」や「タモ」の床と疲れにくい「杉」や「ヒノキ」の違いは表面の接触時の熱伝導率の可能性が高い。これは通常環境室温22度~27度で床表面温度が20度から27度くらいだとすると、足の裏表面温度が25~30度となる。このように5度も表面温度に差ができる。床表面の足裏が接触している材料面の熱伝導が多ければ足の裏から熱が奪われるため、体の反応としては足の血管を収縮させ熱の移動を抑制する方向に働く可能性があり、この血流が少なくなることで代謝がわるくなり疲れ物質が滞ると想像できる。これが足がだるい原因となる。当然足の筋肉運動量に大きな影響を受けるが、これはいつも同じルーティンであるため同じ運動量であるといえる。
確かに同じ室温にある材料を手で触れても杉、ヒノキとナラ、タモ、カバ類では触った瞬間の冷たさが違うのである。
最後にこの論文のまとめを下に置くが、木質の床の固さの違いでは疲れやすさに影響はないらしいことが全体を読んで理解したことである。
コメント
昔、展示会に出展して、3日間朝から晩まで立ちっぱなしでしたが、床がカーペット1枚だと疲れるので、カーペットの下に柔らかいシートを敷いてもらっていました。
これで疲れが随分違ったのを覚えています。
岩嵜壮利様
コメントありがとうございます。
>これで疲れが随分違ったのを覚えています。
楽になったのであればそれは大変良かったと思います。カーペットだと薄くて40mm先はほぼDc=4.6未満は確実でほとんど1になるときもあるでしょうから仰せのとおりだと思います。
Dc=4.7~6.7くらいになるのは測定はしておりませんが、本畳かもしれません。建材畳では固すぎて4.7未満になりそうです。