提言13 「日中の通風(風通し)では室温は下がらない」その3 
最暑日前日に旧笹川邸で実測

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とうとう北陸地方での記録を塗り替えた事務所のある三条市・・・。

三条市は北陸地方で初となる40.4℃と大台を超えた。ありがたいことである。雪は降るわ、気温はめっちゃ高、湿度も半端ないこんな過酷な地域で設計をしていると、全国どこでも状況が読めそう・・・。感謝!

さてその2から・・・
「通風とは・・・夜間に行う行為だといえる。一方で防犯上の理由で夜間に通風が行えるかというと・・・相当厳しいことが最近の治安では言え・・・・・・

つまり・・・このような民家でも夜間はエアコンによる冷房に頼ることになる。」

ということ。

実際「て・こあ」も2階の就寝できる部屋のみしっかりとエアコンが設置されている。

なんだ結局真夏にはエアコンによる冷房に頼らざるを得ないということか・・・になるが、文明の進歩とはそういうことである。

また日中に窓を開けないのに、室温が(外気より)低い「て・こあ」の概要をご覧頂き、各自判断してほしい。最近の住いにあてはまるとは思えないが、「そこが」、そここそが大事な所である。

「て・こあ」概要

延床面積 約100坪 軸組工法(RC基礎無し)
建築年大正7年
屋根 長尺ガルバニューム鋼板瓦棒葺き 下屋は和瓦葺き
外壁 土壁の上に雨板 北側亜鉛鋼板
基礎 石場建て
開口部 木製シングルガラス(厚2から3mm)による間戸 網戸無し
断熱材 壁床天井なし(一部和室天井のみGW100mm)
内壁仕上げ 土壁の上漆喰。その他合板あり
床 わら床の本畳60mm 一部ヒノキ縁甲板無塗装および土間コンクリート
給湯設備 室内瞬間ガス湯沸かし器および薪風呂

さてその3では気温36度の真夏日に「築190年ほどの旧笹川邸で行ったサーモグラフィーを中心にその1、その2を検証する。

最初に古民家は真夏でも涼しいといわれているが、外気温概ね34度の時の大広間の室温(床上1m)は33.7度とほぼ変わりない。

古民家が涼しい(輻射は除外で室温に限定)というのは、間戸が閉まっている時なのである。

ただ・・・私が行う提言には推測が有るのでその点は注意して理解してほしい。

先ずは旧笹川邸全景・・・。

この形は無難であり関川村の渡邊邸より好感がもてる綺麗な建物である。

この建物は奥がながく、その正面の巾の2倍の奥行きを持つ。

管理人によると毎朝8時頃、建物の8割程度の間戸を全て開けるそうだ。そして17時には全閉。

おおー全く今回の提言と逆のことをしている。

早速測定すると・・・

その前にこの暑さ・・・のせいか誰も観覧者はいない貸し切り状態。管理者の怪訝な視線を感じつつ一人で広い屋敷を走り廻った1時間であった。

この時の外気温はスマホでも、

気象庁の気温でも

34度とほぼ真夏日。

よってこの笹川邸南側外気温は

軒の出が3mもありそうな吹きさらしの縁側で外気温とすると・・・

直前まで白い紙を被せて輻射熱の影響を抑えて計測。

はい、34度と全く同じ。

そして間戸がほぼ全開された一番前の大きな和室(28帖)の奥の壁付近の気温は・・・

はい・・・34度と同じくらいまで上昇中。

これだけの豪農の館であるから夏でも涼しいと思いきや・・・実は間戸を全開にすると外気と同じ温度にまで上がりやすいのだ。古民家でも・・・暑い。

一方間戸が開いていても土間が露出した空間は・・・

常時湿気が大地から供給されるこのような三和土の土間は、常に気化熱によって冷やされ、同時に地中の平均温度も影響も受け、真夏は周囲より低い温度となる。

29度が床温度で、天井にいくほどあつくなり床~2mのところのスポット2では37.4-3度=33.4度なる。このFLIRはこの温度帯であると3度高めに表示されることがわかっているので3度引く。床付近にいれば確かに涼しいのである。これは冷輻射熱の影響が最も大きいと思われるが、顔から下なら気温も数度低い。

そして間戸を殆ど開けていない・・・土蔵の室温は・・・

ピンク色の矢印の先にある台の上で測定。わかり難いがここは奥土蔵。

測定放置時間は安定するのを待って5分以上としているがもう少し下がりそうであった。

このとおりで・・・

戸に近い所が31.8度で奥の方が30.4度・・・。外気から離れた所が低い。戸を開けていない土蔵は涼しいし、この温度は戸の開けていない普通の住居の「て・こあ」の最暑日外気36℃時のお昼時の温度と同じである。

土蔵の外観はこちら↓。

このように間戸が全開のところでは、折角の熱バッファーが有ってもやはり外気に同調しやすくなっている。古民家こそに日中は間戸を閉めたいところなのであるが・・・

そうもできない理由がある。

間戸をしめると・・・カビ臭が強くなるから。また観覧建物では陰気くさくなる。間戸を開けろという観覧者さんもいるかも・・・。

つまり私達がこのような古民家を見に行くのは夏と冬を避ける必要があり、特に真夏真冬は「フェイクの設え」の可能性があり、本来の使われ方がされていないということ。きっと土蔵だって真夏期間は閉めっぱなしだろう。

さて・・・三和土といわれる土間は・・・苔がはえてこんな感じになる。苔のあるところはカビは淘汰されやすいが、日射の全く届かない奥は苔が生えていない・・・カビの勢力が優勢なところとなる。

そして次の写真には震えたーーー。

熱画像はゼブラ模様がはっきりしているが、実際の床の色もゼブラ模様となっているのがわかる!
これを見た時に震えたねー。カビとの共存が古い日本の建築である。一方畳の部屋は床の温度が室温と同調している。

真夏日なのに床からの熱の伝わり(逃げ)がはっきりわかる。

タタミも本来湿気吸放出するので温度の低下が見込めるが、床下の温度の伝わりの方が大きく、木の床の方が明らかに温度が低い。本来なら木の床の方が輻射熱を吸収しやすい色なので温度が上がって不思議はないが、この差がでるくらい床下が低い温度なのである。そして木の床の筋は・・・大引きの位置。大引きがあると熱が逃げにくいので熱画像では黄色くなっている。

大引きがない所は熱が逃げやすく0.5℃低い32.8度で大引き部分は33.3度。ゼブラ模様になる。実は実際の床の色も違う事がおわかりだろうか?多分カビの多さが色の決め手。ねっ震えるでしょう!今度顕微鏡を持参しようっと。

このように真夏の35度でも熱が逃げるところが家の中にあれば・・・日射遮蔽がしっかりしていれば、間戸を閉める事で家の中の気温は外より低くなると言える。

1階床で断熱された家(所謂床断熱工法)はそのような温度が下がる部分がないので、通風をすればするほど室温があがる。一方基礎で断熱された家(基礎断熱工法)においてこのような温度の低い床下があると、その床下内はカビだらけになる。実はこの民家も床下はカビ臭いし、カビははえている。だがそれがこの時代の家のあり方で、日本はカビと共存する文化なのだ。

その4に続く。

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