高断熱高気密住宅では30年前から冬期間は乾燥しすぎて大変と言われてきた(特に女性が多い)。よって古くからRH(相対湿度)と乾燥感の研究も行われていた。建築技術2019年1月号もその紹介をしている。
現在主流派の環境学者の見解は・・・
「人には湿度を感じる明確なセンサーがない。また実測してもRH(相対湿度)と乾燥感に明確な関係がない」との結論になっている。
実際拙宅でもRH(相対湿度)は30%台後半。一方同時期の事務所のRH(相対湿度)は時折20%台もあるくらい低い数値である。しかし私にとって自宅と事務所のRH(相対湿度)の差はあまり感じられない。この2つの範囲程度のRH(相対湿度)では静電気も発生し難い環境でもあると思うが、多分違いを感じない人が多いのではないか。
しかし大事にしたい事は・・・
やはり「緑の家」を含む高断熱高気密の家に住むと「乾燥感がいやだ」という住人がいる事は事実。これはそのまま受け取りたいと思う。
なぜか・・・?
ちょっと前に娘が汗をかきにくい体質との疑いがあり汗腺について少し調べた事があった。その時にわかった事が下の図。
医療分野では上図が示すとおり汗腺数は幼少の頃の環境、性別に影響される事がわかっている。この事からでも乾燥の感じ方に個性があってもおかしくは無い。
既往の乾燥感とRH(相対湿度)の関連の研究では、偏った被験者にならないように配慮していると思うが、仮に北海道の大学で乾燥感の実測を行う時には研究室の学生やその友人・知り合いを被験者とするだろう。実はその段階で被験者に偏りが生じる可能性が高い。つまり被験者の多くは北海道を中心とする寒冷地の人。汗腺一つでも幼少の地域性が影響するのだから性別年齢、体格の他に、生まれ育った地域・住宅内環境、両親の性格、食事(水分摂取量含む)、普段の運動量や基礎代謝、入浴方法、使用洗剤なども乾燥感を感じる因子にならないか?と単純に思う。
建築技術2019年1月号では、時間?(シチュエーション)を因子としてまとめた結果が載っておりそれによると・・・
起床時だけは乾燥感とRH(相対湿度)にわずかな相関が見られるとの記載があり、実はこれは「緑の家」のオーナーさんも同様の事を訴えている人がいる。他の時間は感じないが、起床時だけは肌に乾燥感が感じられると・・・。
まだまだ乾燥感の研究は道半ばだし、夏季のじめじめ感とRH(相対湿度)の関連もこれからもっと研究がすすむだろう。様々な要因がからみあう乾燥感を評価する事は大変むずかしいが、シックハウスの二の舞にならぬよう、先ずは住人の意見をしっかりと受け止める必要がある(シックハウスの時は当初は思い込みとの診断もあって多くの人が悩んだ)。
それでは・・・
冬期の住宅内ではどのくらいのRH(相対湿度)が適正かとの答えは・・・
地域によって変わるといえる。それは、
外気温が低い地域はRH(相対湿度)20%台でも仕方無いし、新潟平野部等温暖地は概ね40%程度。これは住宅で使用するサッシ枠の性能がまだ低く、寒い地域でRH(相対湿度)40%台では結露が発生しカビ汚染となる。表面結露によってカビが生えなければ、また内部結露しなければ個人の自由でよい。つまりその地域の冬期の適正室内RH(相対湿度)の決定要因は、残念だが「人」ではなく「サッシ」と言える。