2014/08/08に画像に緑字加筆修正
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書の改変の記事「その②」です。
※住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書は、民間発行の書籍ですがそのフラット35などの事業では国の資金が使われているため、公用性が高いと判断しあえて転載させて頂きました。
昨日最後の住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書に掲載されている写真です。
どこが違和感があったのでしょうか?
上の画像はオーブルデザインの設計図書の基礎伏せ図の一部です。そこにはM16のアンカーボルトの埋め込み長さが510mm以上にする事が記載されております。また24年度の住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書にも始めて記載がされたように、アンカーボルトの埋め込み深さが、建物の耐力の要であることが明記されその深さの基準に踏み込みました。
上の表の下の楕円で囲った部分には、25KNを超えるM16のアンカーボルトは定着深さ(埋め込み深さ)510mm以上と記載があります。
さて冒頭の写真の違和感はここにあります。写真ではどう見ても埋め込み深さ510mmがないように見えます。数値で見ると480mm?位でしょう。たかが30mmですが、基準を満たしてないような写真・・・。「ここは25kN以下だから定着長さ360mm以上OKな場所では・・・」との考えもありますが、それならアンカーボルトの全体の長さが700mmでなくとも良いでしょうから、ここは25KN超えると考えるほが自然です。ですのでやはりここは510mm以上の写真がほしかったです。
さて違和感がもう一つあります。「緑の家」の基礎は立ち上がり高さが1000mmありますから、アンカーボルトを510mm埋め込んでも半分くらいにしかなりません。所が、普通の住宅の基礎は地中の埋め込み部分も含めて600mmから750mmです。上図をみても600mmの基礎だとアンカーボルトが下まで到達して実際は埋め込めません。仮に750mm基礎だとするとギリギリスラブ配筋に絡まない長さで何とか施工上もOKです。もしアンカーボルトの長さL=800mmを使うととても施工上厳しく現実的ではありませんが、基礎高1000あればまだ余裕があります。如何に「緑の家」の1000mm高基礎がトータル的に理にかなっているかがわかります。
続いて以前お伝えした「座金」です。
今回の基準から座金の仕様種類が増え「60mm×60mm」で厚さ6mmのものが増えました(上の図で上の楕円)。以前の座金は54角でした。しかしこの座金はアンカーボルトM16を想定した座金ですがこの新しい60角座金はM12のアンカーボルトを想定しております。従来オーブルデザインではM12にこの54角座金を使用しておりましたから、施工にはとても注意して行っておりました。その記事はこちらです。
その時に掲載した図はこちらで、この図は構造計算のマニュアル本(国の監修と言って良い)からの抜粋です。 この本の標記にはまだ60角の座金はありません(2008年出版)。ですので私はこちらのマニュアルで設計と工事監理行っておりました。というのは・・・
最高耐力が4倍壁で構造計算をすると、上図のような引き抜き力がかかります。この時6.4KNを超えて11.7KN以下の引き抜き力がかかる柱は8本もあります(赤楕円)。11.7KNを超える引き抜き部分はM!6のアンカーボルトで対応しますが、6.4KNから11.7KNの間のアンカーボルトがグレーゾーンになります。このグレーゾーンの意味は、M12のアンカーボルトなら座金が45角ではNGにもかかわらず殆どの現場では45角座金を使用しています(2012年現在)。裏付けは・・・市場には殆ど54角(M16用)しか販売されておらず、一部のメーカーがM12用座金を販売していても、需要不足で通常54角の5倍以上の価格で取引されている事です。つまり誰も使用しないから造らない=数が出ない=高値と言う事でしょう。
しかしこの仕様がフラット35の仕様書に明記されたことで60角の値段が下がると予想されます。これは大変ありがたい事でこれから54角座金で神経を使って(穴が大きいので中心に設置したり、ダブル座金で)施工する必要がなくなります。
さてこんな事を理解して家の設計や工事監理している会社が殆どないでしょう。設計と施工は分離してきちっと正しい設計をして、その意図を工事監理者(又は現場監督)に伝える必要があります。今後、省エネ法も難しくなり、益々設計と工事の分離は必要なのですね。