4年前から過去3回にわたって続いてきたこのシリーズもようやく収束の気配。上のリンクは過去3つのブログであり、この話題を知らない人は是非読み返してほしい。そして先月の終わりにこの基礎断熱の件で建研のHPに改定版が上がっていた。それによると・・・

建研のHPから上のページに飛ぶとそこに新たな基礎における線熱貫流率の計算値が載っていた。昨年と一昨年はこのHPを見ていないが、今年の文を見る限り、現在使用している基礎の線熱貫流率は来年の9月までで、それ以降は使えなくなるとのこと。ようやく5年越しでこの話題の収束と思える。ありがたい。
さてその新たな線熱貫流率を使った時に、全く同じ家の場合でどんな違いになるだろうかと早速シミュレーションしてみた。

下はBELSで評価されたある「緑の家」の数値である。以前の計算ではUa値は0.19w/m2kとなっている。

これを新たな基礎の線熱貫流率の計算式でおこなうと・・・

全く同じにもかかわらずUa値は0.22w/m2kに0.03w/m2下がった。しかし4年前の線熱貫流率1.2を使うとUa値が0.1も下がったあのころに比べれば1/3に減っている。このことについては何も問わないが(本当はその理由が聞きたいが)、ただそれでもこの0.03w/m2は大きい。

さて実は上の「緑の家」はAグレードの基礎外部に断熱材が貼ってあるタイプで、基礎の内側のみスカートのタイプであるBグレードの基礎にした時が下のとおりである。



Bグレードにすると流石に悪く0.05w/m2kもUa値が下がった。AグレードとBグレードの差は下のとおり厚さ50mmの断熱材が地面から180mm程度あるか無いかの違いのみである。たったこれだけでこの差Ua値が0.02W/m2k違う。という事は・・・私が以前から考えていた理論通り基礎から逃げる熱は、コンクリート土間が熱橋のような働きで熱を吸い出して、地面との境界あたりで放出していることになる。

そしてこれも私が言っていた通りで、べた基礎のスラブ中央部分から熱損失は極わずかなため断熱材はスラブ全部にはいらない。特にスラブ下に敷きこむ断熱材は私が見込んでいた想定よりさらに意味がなく、当然スラブ下よりスラブ上断熱材の方が効果があり、さらに「緑の家」Aグレードの基礎断熱方法が最も合理的という事がわかる。


このように16年前からはじめたAグレードの基礎断熱方法の合理性が上の一覧表から裏付けされた。つまり理論の裏付けに16年要したことになる。手前みそであるがこれは技術者して確かな目=先見性があったということ。自慢して良いだろうと自画自賛。この表が明らかになる前はスラブ中央から逃げる熱を気にしてスラブ全体に断熱材敷きこんでいた建物も巷ではあっただろう。「緑の家」は一度もスラブ下に断熱材敷き込んだことはない(但しスラブ内部にヒーター等を埋め込みんだスラブ暖房工法を除く)。
それを裏付けるように、仮に基礎スラブ上全面に断熱材を貼っても、「緑の家」Aグレードのようにスラブ上は900未満のスカート断熱プラス外断熱で立ち上がり部分に断熱材が場合と比べると、なんとAグレードのほうが熱が逃げにくいととらえられる結果になっていいる。これは大変凄い事。

基礎外断熱の弱点であるシロアリ対策と断熱性能の両方をバランスよく取り入れてしかもコストパフォーマンスが良いAグレードの基礎は誇れる基礎断熱方法である。
さてこれで9年前から疑義があったスラブ下全面に断熱材を敷き込む理由がなくなった。その一方、今年の上の表にはスラブ下断熱材が敷きこまれる想定の計算値も公表された。これは長期的にみて構造的耐久性は問題ないと判断して発表したと受け取ってよいのだろうか?「緑の家」ではない過去スラブ下全面に断熱材を敷いていた住宅には申し訳ないが、コストパフォーマンスは悪い上にシロアリやバクテリアなどの生物劣化の危険性が残る方法だったといえる。