最近のオーブルデザインの基礎工事現場から

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2010/11/13 緑字加筆

現在基礎工事中の防湿シートの様子です。
真っ平らなスラブ下です。多分よその現場ではあまりみられないでしょう。

最初に謝らなくてはなりません。今年は本来5月に着工する予定だった計画物件が諸条件で半年くらいずれこみようやく見積もりとなってます。ですので秋の完成予定見学会がなくなり、12月の構造見学会が2つ行われます。期待していた皆様には誠に申し訳ありません。その代わり、今後着工がずっーと春まで連続4棟近く続き、来春から夏まで完成見学会が6棟くらいになる予定です。いずれも個性的な家で、全ていまのところSS仕様の超高断熱Q値0.9の家です。パチパチ!!

さて今日のブログの内容は専門的な内容なので、苦手な方はここでおやめ頂いた方が良いかと思います。

最近の「緑の家の基礎」はこの本による所が多いです。

この本は日本建築学会が出版している主に住宅用などの小規模建築物の地盤を含む基礎の技術書です。

この本の中程には・・・

このな標準的なべた基礎のモデルが載っています。私がこの図をみて今までのべた基礎と外周部が2つ違う事に気づきました。  従来から良く紹介されているべた基礎断面

従来のべた基礎外周部は、基礎梁になる立ち上がりと、耐圧版のスラブの境があまり明確ではありませんでした(私感)。様々なマニュアル書にもどこまでが基礎梁でどこまでがスラブかわからないのでスラブ配筋の主筋定着長さをどこから測っているか曖昧です。↓図を見ても定着長さがとても足りているようには思えませんが、基礎梁の始まりがAの部分と解釈すると定着長さが足りているように感じます(ただし端部応力に強い形か?でもその部分の配筋は立ち上がりの縦筋みたい?なんか曖昧)。

一方、日本建築学会が出版している図は、しっかりと端部定着が書かれています。

 だから当事務所では随分昔からべた基礎のベース筋の定着は、わざわざ基礎立ち上がりの上方に向けて30d(D13の場合400mm)近くをとるようにしてました。ここに補足説明有り2010.11.13 上写真です。図と同じでしょう。

さてもう一つ気づいた事があります。スラブがほぼ平らになっていることです。実は私は少し前からスラブはこのように平らの方が良いのではないかと思ってました。
なぜか・・・

数年前に関東のある小さな会社で驚くべき免震方法が開発されました。それは空気を使って家を浮かし、地震の力が上の建物へ入力されないようにするシステムです。その空気は地震が起きると瞬時に基礎のスラブ下へ送られ数センチだけ家を一瞬で持ち上げます。大きな動力は必要ありません。所謂パスカルの原理です。基礎スラブの面は大きくこれ全体に圧力を受ければたいした力でなくとも家は簡単に浮き上がります。

例えば自転車(チャリンコ)のタイヤの空気圧は250Kpa(キロパスカル)=250KN/m2。この空気圧があれば僅か3.3m2(畳2枚)もあれば家は浮き上がるのです。つまり自転車用空気入れで家は軽々持ち上がるのです(但し空気を密閉できれば)。どこにでもある空気を使えば使って僅かな動力で家を持ちあげる事が可能なのです。
このように家と地面の摩擦を少なくすれば免震装置になりますから、それに習い摩擦を「0」にしたのが上のシステムです。

さてようやく緑の家の基礎に話は戻ります。
家の基礎スラブをこのように平らにすると今まで住居のような強い摩擦がなくなります。今まではこの摩擦で台風の力に対し家が横にずれないようする目的ありました。それは総2階建てで外壁が大きいと、地震力より台風の力の方が大きく、その抵抗として地面の摩擦を期待していたのです。しかし近年の家はべた基礎で以前より相当重くなり摩擦力が必要以上に大きくなっています。一方対地震は近年の大きな揺れに対抗するべく耐震等級2や耐震等級3などを基準とするため、台風の風の力より遙かに大きくなりました。そこで重く摩擦が大きくなった家の摩擦力を少し減らしても台風にはしっかりと抵抗します。そして大きな地震が来た時には、地面と建物の摩擦が少ない事で地震の力が滑り、建物本体の被害が少なくる事に気づいたのです。
実際にあるお宅の台風による受ける力は計算上では約50KN(5トン)。一方耐震等級2の地震を受ける力は100KN(10トン)と倍近い差となってますから、75Knの静摩擦力に設定することでら台風が来ても家は動かず、数百年に一度の大地震時の
「一番大きな瞬間加速度を受け流すこと」=「キャスター付の家具免震構造」
が理論上可能なはずです。実施には長期時の地盤変形で、計算上の摩擦力が安定的に確保できるかが問題ですが、あくまでもおまけの免震性を期待するなら問題ありません。

 オーブルデザインの「緑の家」の基礎 シングル配筋のべた基礎の時も下は真っ平ら。根切り底は法律ギリギリの120という浅さ。この基礎なら大地震時の瞬間的な揺れは受け流すはず。勿論地盤改良などの地業で浅い根入れでも許容地耐力は確保する。

 一般的な会社のべた基礎断面。立ち上がりが上に高いのではなく、下に沈み込むようになる。従って基礎下は凸凹となり、摩擦が高くなる。

そう考えると緑の家の基礎(SSプランの家)は先進の基礎構造といえます。配管も基礎下から計画してないので、仮に揺れが来たその時でも抵抗は少なくかつ補修も容易なはずです。すばらしい!!

摩擦をなくすタイプの免震装置は風による移動や動きが弱点です。ですので基礎を真っ平らした場合、どのくらいの力で家が動くかがポイントです。因みに車にたとえると氷上ではタイヤと路面の摩擦係数が0.1~0.2になるようです。スラブを平らにすることでこの摩擦係数になると仮定すると

摩擦係数をμとした場合、Fが動く境目の力となり、それは
F=μmですが、m・・・重量が家の場合600kNとすると
F=0.1×600=60KNで、先ほどの台風の力50KNを超えるので家は動きません。このように仮に氷上の抵抗と同じ滑りやすさでも家は動きません。 この緑の家の基礎はそのままでも免震装置とてし使える可能性大です。

もしかして今までの常識をを破り、

「家の基礎は地耐力が確保でき、凍結しない場所なら根入れをなくし、滑りやすくする事が良い家の基礎となるかもしれません」 これもそれも従来は地盤改良がなかったため、地耐力を得るのに根入れを深くするしかなかったのですが、今は殆どの家で地盤改良します。地業の条件が変わったのですね。

これは果たして浅知恵か・・・

ああっ来週にでも新大の構造系の先生に話してみよう。ワクワクしてきました。

2010.11.13加筆 その後・・・新大に伺う前に事前調査をしました。すると、コンクリート同士の摩擦係数は0.6~0.65らしく相当大きいものであることがわかりました。するとやはり意識的に0.1くらいになるようにボールや空気浮上をしないとだめそうですが、実は地震は水平方向と縦方向の揺れです。つまり上下の揺れの時は、一時的に摩擦係数が低くなり0.1以下になることも考えられます。そんな時には有効でしょう。
さて常時摩擦抵抗を0.1位にできないか?ちょっと思案します。

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コメント

  1. オーブルの浅間です。 より:

    kotaro様
     いつもお越し頂きありがとうございます。
    住宅用の基礎は小規模建物として建築学会でも他のRC建造物と区別されているようです。
    確かに最近のRCの基礎(無筋を除く)は、大地震時でも基礎自体の原因で家が倒壊したことは希で、殆ど上屋木造強度不足と地盤面の崩壊との報告されております。
    しかし、ロフトや中2階など家自体がここ数年で重くなっており、今まで問題がなかったから今後も大丈夫とは言えない状況です。特に、ロフトは大きな重量増加を伴いますが、市場では設備と同じでとても安易に「オプション追加」として扱われておりますし、基礎断熱の欠点もそのまま放置されているように見受けられます。 きっちりと考えたいものです。

  2. kotaro より:

    久しぶりに基礎のお話でした。インターネットでいろいろな工務店さんや建築家の方のHP等を拝見していますが、基礎の話を丁寧に説明しているものはなかなかありません。大変勉強になります。断熱も大切ですがきちんと家を支える基礎は建物の基本だと思います。次の報告を楽しみにします。