住宅をつくる場合、手本となる「本」がある。それは40年以上前からつい最近まで(財)住宅金融公庫という公的機関が、住宅資金を貸す時に基準とする仕様書である。現在は(財)住宅支援機構として引き継がれ、住宅の資金を貸し付ける支援をするときもこの仕様書を基準とする。したがって、この仕様書があるという事は、業界人なら必ず知っている。(知らない人はもぐりである。)当事務所には10年前の仕様書からつい最近のものまで保管しているが、左は一番最近の仕様書。厚さは1cm程度であるが、ほとんどの事が網羅されており、事務所で作成する設計図書の礎となっている。
この仕様書の中には、前話題のコンクリートの呼び強度が記載されている。それが下の写真。10年前の推奨コンクリート呼び強度は「18N/mm2」であるが、最近の仕様書ではこれが「24N/mm2」まで2ランクアップしている。実は3年くらい前の仕様書では21N/mm2だったので、住宅建設会社でも知らない人が多いと思う。無論、普通の建築士は知らないはず。
やはりこの背景には住宅を長持ちさせようとという配慮が表れている。コンクリートの呼び強度をあげるだけで、中性化は遅れ、基礎が長持ちするからだ。もし今家を造っている人(造り掛けている人)がいたら、「呼び強度はいくつが指定されてますか?」と訪ねたい。多分良くて21N/mm2というだろう。
土台の施工とアンカーボルトの計画
最近諸事情で他社さんの設計施工の準工事監理※を行っている。事務所と違う家の仕様は新鮮である。この施工会社はしっかりとしており、土台も米ヒバを使い、更に防腐剤を塗布している材料(米ヒバ)を使っている。以前当HPでなぜオーブルデザインは土台に米ヒバを使うかということをご案内した。それがわかりやすい形で写真に取れたので見てほしい。(この写真は他社施工中のもの)
現場で加工する土台の端きりや、塗布(加圧注入)後に穴をあけることが多い、「ほぞ」には薬剤の染み込んだ跡がない。この部分が問題だから、土台の木の樹種自体に防蟻防腐性が高い「米ヒバ」を使うのである。この施工現場では、土台は米ヒバなので、薬剤は必要無いため、全く問題ないが、土台に加圧注入された薬剤で防腐防蟻を考えている現場では、こういった部分にも薬剤注入は必要である。(多分この会社は、土台樹種が米ヒバなので急激な湿気で暴れないように防腐剤(撥水効果あり)を塗ったのかも?オーブルデザインでは米ヒバ集成材なので暴れはほとんどない)
また、当事務所では行わない、下の右写真の基礎換気口の設置であるが、筋かい、土台継ぎ手によって決められるアンカーボルトの絡みを考えると、正確に計画する事は至難の業である事がわかる。この現場ではきっちり考えてあるが、この一番下の写真のアンカーボルト一本だけが惜しい。(耐力的に影響は少ない部分なので、OKと私は考える。)
※準工事監理とは、法律的に工事監理者でない監理ということ。