デザインと構造は一体 ① 軒の出を支える垂木(たるき)は・・・

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前のブログで、いくら優れたデザインでも現法律に沿っていない建物は評価出来ないとと申し上げました。特に構造の安全性を無視した建物は評価にならないばかりか、人命をも危険にさらす凶器になります。

その大事な デザイン=機能(構造) について何回かにわたり連載したいと思います。

その1 軒の出(屋根の出)を支える木=たるき

暑い夏・・・もう秋ですがこの暑い夏に家の防暑対策が重要という事を実感したと思います。設計では有名なその建物防暑対策の一つが南の「軒の出」→「屋根の出」のこと を大きくとる手法があります。

しかし以外とこれが難しく、法律を守っていない家も多々あるでしょう。

 この家の軒の出は約1.2m。たるきは巾4cm背24cmという大変大きいものを30cm間隔で並べるという構造。見た目もすごい。

町を見渡すと軒の出は通常55cmくらいが多いですね。神社やお寺は、2mを超える軒の出も珍しくありませんが、よくみると屋根を支える木が太くて多く細かく並べられている事に気がつくでしょう。

軒の出は構造的に跳ね出し(キャンティレバー)と呼ばれ、とても無理な構造です。ですので昔から「大工と雀は軒で泣く」と言われており、その計画の難しさを言い伝えて来ました。特に新潟県は雪が沢山降ります。その重さは重いと言われる瓦の5倍以上にもなります。この重さに耐えて50年以上も腐らないように計画する・・・すごい事です。

当事務所は長岡以南の豪雪地方の家を設計するので耐雪住宅などはよく手がけます。現在も長岡と三条に2m耐雪の家が着工します。

その耐雪屋根の先端に2mの雪を乗せる、それを支える木は相当大きなものになります。しかし雪が少ない新潟市でも実は法律で1mの雪が降っても壊れてはいけない規定があります。この規定を守らないと所謂法律違反(違法建築)になります。

では積雪1mで旧新潟市内の家でどのくらいの木(たるき)が必要かというと、

ガルバニューム屋根
軒の出が90cm(外壁から約80cm)でていると安全側で計算して

杉材で 巾4.5cmで背10.5cm 間隔45cmでOK   出が91cmではNG
米松材 巾4.5cmで背9.5cm  間隔45cmでOK

(杉材は松材よりたわみに弱いので太くなります)

旧新潟市以外の旧亀田、新津、豊栄、横越は1.2m以上の積雪を要求されますので上の材でもだめです。もっと太いたるきが必要です。 同じ新潟市内でも違う屋根が要求されるのです。ここが専門職の建築士が必要とされるゆえんです。昔の大工さんは経験で木の太さを決めてきましたが、昔は自分のテリトリーが狭い地域(町内)に決まっていたので経験でも大丈夫と思いますが、今は車で行ける距離(50km)なら通える範囲ですから、経験したことのない地域の雪に対し設計しなければなりません。そこで構造計算が必要なのです。

最近は軒の出が1mを超えるボックス型の家を見かけますが、しっかり法律を守った木(たるき)で造られていますか確認してみてください。多分一般的に巷で計画される軒の出55cmを超える家は、構造計算が必要です。55cm以内の軒の出であれば米松材で巾4.5cmで背6cm間隔45cmという普通大きさの木でOKです。10cm縮めると2mの雪でも大丈夫です。これは跳ね出しという構造が、跳ね出す長さの4乗でたわむからで、軒の出が長くなると急に大きなたるき部材が必要です。

この家は2階南だけ軒の出1m。そのため巾4.5cm背9cmのたるきを22cm間隔と普通の半分にして細かくで並べる。神社の屋根に近い間隔である。

この写真は冬の頃。出が1mもある深い軒の出でも太陽高度は低く日がはいる。

夏の日射を防ぐために屋根を大きくすることが、実は冬の雪の事を考えて、屋根の部材を設計するというややこしい話です。しかし軒の出にあった木を使わないと違法建築です。

またもっと大事なことは、軒の出が大きくなるとなんと基礎も柱も強くしなければなりません。軒の出が小さいままの柱や基礎ですと、大きくなった屋根の雪の重さで最悪柱は折れ、基礎が割れて壊れます。このように軒の出はいろいろな所に影響がでるのでやたらと大きく出来ません。古民家のように深い軒の出がある家の柱は太いですよね。
見た目や思い込みだけで、軒の出を大きくすることは大変危険です。必ず構造計算で裏付けをとりましょう。

軒の出が大きい建物をみたらそっと聞いてみましょう。
「たるきと基礎の構造計算書を見せてください」 と。
そこにその建物があれば必ず特別な軒の出の構造計算書があるはずです。

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