オーブルデザインの「緑の家」において、SSプランの家の換気扇は「全熱交換型換気扇」を使用しております。
熱交換型換気扇は大きく2つに分かれます。
全熱交換型換気扇と顕熱交換型換気扇
この2つの違いは空気中の湿気まで交換するかしないかです。ですがこれが結構大きな違いとなります。
全熱交換型は字のとおり全ての熱に対して交換する換気扇です。
全ての熱とは・・・
以前もご紹介しておりますが、空気の持っている熱は「顕熱」と「潜熱」の二つがあります。この時点で読むことがいやになった方、もう少しお付き合いください。簡単ですから。
顕熱とは・・・空気の温度そのものです。
潜熱とは・・・空気の湿気の量です。
顕熱はわかるけれど潜熱??は何??
やかんでお湯を沸かすと100度まで上昇しその後は温度が上がらないけれど、お湯はどんどんなくなっていきます(気化)。これは水が湿気となって空気中に溶け込むからです。でも火をつけないでやかんを置いたままにしても水はいっこうに減りません。水が湿気となるためには「火」のエネルギーが必要なのです。つまり湿気は「火」の熱エネルギーを持っていてこれが「潜熱」と言われるのです。潜む熱とはよく言った物です。
逆にこの湿気が結露で水になる時にこの持っていた熱を放出します。
よって同じ空気の温度でも湿気の多い空気には「熱」を多く含みます。夏は同じ28度の気温でも湿度40%であれば暑く感じませんし、湿度80%では暑くて汗がダラダラ出ます。また室温20度で湿度25%では何か肌寒く感じますし、同じ室温20度でも湿度55%では快適です。
このように人間は「潜熱」も熱としてしっかり感じて生きております。
このブログの読者ならこの事は最初からわかっていらっしゃる人も多いと思います。
換気扇は全熱タイプの方がしっかり全ての熱を交換してくれます。一方顕熱型換気扇の方は「熱」の半分程度しか交換してくれません。間違いなく空調する部屋は「全熱交換型換気扇」が効率が良いのですね。特に夏の冷房中は、潜熱除去で半分、顕熱除去で約半分のエネルギーを使いますから潜熱を熱交換しない事は大変なエネルギーロスです。換気扇のカタログで熱交換率70%とかかれている場合は、通常顕熱の交換率を示しております。これが全熱交換型換気扇での表記の場合、全熱交換率にすると40~60%、一方顕熱交換型換気扇の70%熱交換率を全熱からみると30~50%くらいとなります。
ヨーロッパや北米(カナダ)は元々夏の冷房は少なく、且つ日本に比べ潜熱が少ない外気環境のため、顕熱交換型換気扇が主流でしたが、最近は更なる熱ロスを防止するため全熱型換気扇も見られるようになリました。
このように説明すると全熱交換型換気扇が優れているかというと欠点もあります。全熱交換型換気扇の欠点は、匂いまで交換する可能性が高くなる事です。この匂い粒子で湿気と同じような微細な物があれば、湿気と共に交換されます。従ってトイレの換気に全熱交換型換気扇はふさわしくありません。またお風呂の換気も、多量の湿気を交換する事になりあまりふさわしいとは言えませんので、別回路か顕熱換気をした方がよいでしょう。但し最近は交換膜の進化でお風呂換気も大丈夫のようです(上図)。
「緑の家」の換気システムはこれらの良い所だけを取り入れます。
具体的には居室はダクトレス型全熱交換型換気扇を使い、トイレやお風呂は個別の換気扇を使用します。また最近ではお風呂に循環扇を設置提案するようにしております。
この間のバス見学会ツアーでSSプランの家にお住まいの方がおっしゃってましたね。
「現在は湿度が50%くらいなので同じ室温20度でも寒く感じない」と・・・
これは体感していないとわからない住人の実体験談ですね。無論、加湿器無しで室温20度で湿度50%を維持できる家はSSプランの家のように全熱交換型換気扇を使っていないと難しいですね。
全熱交換型換気扇のカタログ
最近は多機能で一般の設計者には理解不可能。専門知識が求められる。
全熱交換型換気扇のカタログから
最近はキッチンのレンジフードまで熱交換型換気扇がある。但し使用にはメンテナンスを多くする必要や機種が少ない。
ここらか下はマニアックな内容ですので読み飛ばしてください。
上の写真のように最近は熱交換型換気扇までメーカーでは用意してあります。この換気扇はマニアックな人しか使わないと思います。
緑の家では、普通の換気扇ですが、レンジフードの専用給気口を、レンジの近辺につける事でなるべくショートサーキットによる低熱損失を期待しています。これはQ値の計算で見かけの換気回数にキッチンの換気回数を算定していないからです。多分算定に100%の完全攪拌で計算すると
キッチン換気風量平均400m3/h 90分使用/日 → 25m3/h相当で
Q値が0.1~0.05も下がります。Q値1以下の家ではQ値の0.1は相当な量です。こういった設定がQ値計算の難しさです。キッチン専用給気口が近辺になければこれをQ値計算に見込む必要はありそうです。