一年以上雨ざらしになっていた廃材。平板は簡単に壊れても枠は全く壊れない。
築100年の「て・こあ」には時代に取り残された様々な木の道具や品物が沢山あります。その殆どが天然木でできているので、ゴミとして捨てるのではなく、「て・こあ」の薪ストーブ燃料として最後の最後まで使い切る事ができます。この取り外されたカウンターも同様です。
建具と呼ばれる扉は、断面寸法がこれ以上できない限界のサイズでつくられているため、その木の接合部は人件費が高い現代でも丁寧な加工がされております。しかし扉枠や窓枠、テーブル枠は、大工さんが造るので簡単な仕口(接合部)加工です。そんな大工さんが造る枠でも古い建物の「て・こあ」の場合は・・・
半年くらい外に投げっぱなしだったのでカビだらけだが、その切断面は今だ手が切れそうなくらいのシャープさ。
上の写真は「て・こあ」にあった古い台の天板ですが、その接合部は建具の接合部と似たような加工がされておりました。薪として使うため分解しようとして金槌でたたいても簡単に壊れないので、変だなと思って見たら、一見大留(45度に全部切って繋ぐ加工)だけに見えますが、中にホゾがあって難しい加工がされています。明らかに寸分も違わないようにノミを使いこなさなければできない仕口ですね。
木目もつんでいない(密でない)ので、建具材ではなく普通の造作材の杉材と思われる。職人の「気」が伝わってくる。
こちらの仕口もホゾがありしっかりと接合されています。あまり重要でない小さな材なので、棟梁の弟子が和室の造作の練習に細工したのではないでしょうか?
「て・こあ」を造った職人は歴史に残る有名な職人ではないでしょうが、当時はみんなこんな気質で望んでいたのでしょう。私もそんな仕事ができるように心がけたいと思います。例え名が残らなくても建物が受け継がれるようなそんな仕事が目指す所です。