「て・こあ」でのある一日 ⑥ 一本引き戸

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戸袋に引き込めば、柱間の全てが開口部となる。通風抜群の開口部である。

築・約100年の「て・こあ」は何回か手直しがされております。当初の「て・こあ」は雨戸だけで室内と屋外を区切っていたと推察できます。その名残が全ての開口部に見受けられます。

この開口部の全ての戸は同じレール(レールが一本だけ)にのっておりますが、これは所謂雨戸方式です。今時の新潟県の人には雨戸は珍しいと思いますが、私が子どもの頃(50年以上前)の家は殆どが雨戸付きでした。雨戸がないと台風が来たときには、当時の薄いガラスが割れるからです。そして更にさかのぼり約100年も前はガラスは特別な素材でそのガラスが一般的になる前、庶民の家は雨戸だけだったと思います(殆ど庶民の家は現存していない)。 100年前の家として金持ちの家や高貴な建物は現存している事が多いのですが、この庶民の家が残っていないところに、この「て・こあ」の大変な価値があるのです。この「て・こあ」はまさしく庶民の家(建物)でした。

白い所が抜け落ちた底部分

さて、この雨戸が収納されるところを戸袋と呼びますが、この戸袋の底板が全て抜けていて戸が収納できません。そこでその修理を依頼されました。戸袋を囲っている板を剥がすと上の写真の様に底がありません。そして辛うじて一枚だけ残っているこの板から底を復元しようと思いました。この作業程度なら私でもできます。

この土壁に美を感じる。戸袋の中の土壁のほうが内部土壁よりしっかりしているのはなぜ?

その前に・・・戸袋内の土壁です。中越沖地震(和島で余震で震度5強)でもこちらの方向の壁は殆ど無傷で綺麗な表情を見せます。多分半世紀以上は経過しているでしょう。もしかしたら築年数と同じ約100年かもしれません。

古木の方が似合うのであえて欠い解体時のタンスの木を使う。

残っていた底板一枚と同じ厚さの木を、リノベーション一次工事で行った時にでた廃材の中から探します。すると大正時代の杉でできたタンスの前板がピッタシの厚さです。それも杉なので素材も同じ。この木から材料を採取します。

一枚づつ切って5枚ほど作ります。

古い再利用の木がしっくりくる。

それを並べて底板の完成です。本当は釘で留めるところでしょうが、大変なのでビスで留めます(ビスの方が素人には楽です)。これで戸袋の表面を元に戻し完成です。

腐っている様に見える戸袋の表面板。厚さは6mm程度と薄く、決して腐朽はしていない。これだから木は凄い。

北面の柱は正面柱と違い使い回しの柱。ホゾがあるが、この家と全く関係ない位置や高さ。以前の米穀会館の移築品らしい。

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