「日経ホームビルダー9月号」で「初めての基礎断熱 ここが危ない」特集の中でカビ対策を行っている会社が10社中10社ということは、この紹介された会社では少なからず床下内にカビやシロアリなどの危険性があることで認識は一致しています。そして・・・
これは本音なのです。
紹介された会社さんは業界では何れも有名な会社さんで、その10社が何れも床下内は、一つ間違うとカビやシロアリに侵される事を何らかの体験や推測で知っています。
ではカビの発生やシロアリの侵入をどのようにして知るのでしょうか。
「カビは湿度計を床下に置いておけばよい」
とおっしゃる方・・・それは×です。
相対湿度は温度によって左右され、暖房空間から遠いお風呂やトイレなでの下では、居室下より相対湿度が高いと想像出来ますし、違う所で温度が低ければ湿度は高くなります。
「カメラがついたラジコンで見回る」
とおっしゃる方も・・・それも×です。
床下は束を始め配管や電線もあったりして簡単に全てを見回ることが出来ません。特に一番湿度が上がるトイレ下やユニットバス下は段差(構造スラブの区画)があったりして難しいでしょう。
上の事をおっしゃる方はご自身で床下に這いつくばって隅から隅へ入ったことが無い人がよく言う台詞です。低い床下を見回る事が如何に大変か一度やればわかりますから・・・。
これから建てようと思う人は完成見学会に行ったときに床下内に入ってみては如何でしょう。ユニットバス下からトイレ下又は玄関ホール下へ潜ることが簡単にできますか。
「床下暖房するから大丈夫。乾燥するよ」
これも×です。
カビは梅雨から夏にかけて増殖します。冬だけ床下暖房しても意味がありません。何しろ床下内を全てみていなければカビがないと断言できるはずは・・・普通に考えてみれば・・・いえませんね。
先日の「緑の家」見学会の床下。明るく清潔なるように使う場所には塗装までしてある。そして通風は原則なしの相対湿度60%台を維持できるようにする。
床下内を収納や床下暖房に使わなければ多少カビくらい生えても平気です。なぜなら1階と2階の間・・・この懐にもカビが生えたり汚れが溜まり虫がいるかもしれませんが、許容出来ますよね。それと同じで使わない空間で半密閉してあれば気になりません。それでも30年くらいでカビ臭がわかるようになるかもしれません。
さて・・・
人は都合の悪いことは見て見ぬふりをしたり、良い方向に考えます。
「床下内はカビがはえないだろう」とか・・・
「地震は来ないだろうから構造計算をしなくてもよい」とか・・・
「シロアリなんてこない」とか・・・
「高断熱高気密は夏も涼しい」とか・・・
この全ては完全に想定不十分です。
実際新潟県に大きな地震が3年間に2度もおきたし、乾燥した「緑の家」も初期にシロアリに加害されました。また通風で夏を過ごされその使い方が良くなくて床下にカビが生えたお宅もあります。簾をかけた超高断熱の家でも「暑い」です。
今こうして10社中10社がカビ対策をしていることはつまりそのような事が現実に起こっているのです。いつまでも
「床下内は床下暖房するし換気経路だから綺麗だ」
等と新築時の事だけを想像し幻想を抱くことは止めましょう。
そして最後に・・・
防かび剤をまいた床下に室内空気を循環させる床下暖房最悪の対応です。カビは止まっても人の具合が悪くなります。
おまけ==============
以下は何回か紹介している文科省HPカビの抜粋をコピペしました。一番下の赤字が結論です。
カビの生理生態と生育環境
カビの生育環境
<水分>
微生物の生育に水分が不可欠であり、水が全く存在しない環境では全ての微生物が生育不可能である。物質中に含まれている水は通常は遊離
水(自由水)、結晶水、水素結合水、水和水(タンパク質、糖質、脂質、その他との水和)および氷の状態で存在しているが、微生物が利用可能な水分は自由水
のみである。すなわち自由水とは、環境の温度、湿度の変化で容易に移動、蒸発および氷結が起こる水である。自由水が減少すると生育速度の低下や生育が停止
するなど自由水は微生物の増殖に非常に重要な因子となっている。自由水を定量的に表す指標として水分活性(Aw:water activity)が用いられている。Awは本によってはawと記載されている場合もある。
実際の測定は試料を入れた密閉容器内が平衡状態に達した時の湿度(平衡相対湿度:ERH、Equilibrium Relative Humidity)を測定することにより水分活性を求めることができる。
すなわち、試料を入れた密閉容器内の平衡相対湿度が90パーセントならば、Awは0.9となる。なお、大気中の湿度は相対湿度(RH:Relative Humidity)
で表される。一方、大気中の水分は温度が低下することにより飽和水蒸気圧が低下し、結露が起こる。この結露が起こる温度を露点といい、特殊な露点温度計や
電気抵抗値で自動計測することができる。資料等の収納庫や展示ケース内では環境中の水蒸気と常に平衡状態が保たれているため緩やかな温度変化には結露への
影響が少ないが、急激な温度変化により結露や水分活性が上昇し、カビ等の生育可能領域に入ると増殖が始まる。これらについてはカビの制御方法のところで解
説する。
細菌、酵母、カビの増殖に必要な最低Awは、表2に示すように細菌類は一般に高いAwを必要とするが、酵母ではそれよりやや低いAwである。しかしながら、特に耐浸透圧性酵母(塩分の多い環境でも生育可能)は0.61とかなり低い。カビは酵母よりもやや低めのAwであるが、特に乾性カビ(好乾菌)は微生物の中でも最も低いAw環境で生育可能である。博物館等での保管資料にはこの分野のカビが問題となる。次にAwが低くなるとカビ胞子がサブロー寒天培地(カビ培養用培地)上で発芽に要する時間(日数)にどのように影響するのかを図5に示した。クモノスカビや黒コウジカビの胞子はAwが低い場合には発芽に要する時間が長くなる。低いAwでも生育の可能な黒コウジカビでもAwが0.8以下になると極めて発芽し難くなる。
通常では対象とする物質のAwを0.6以下に保持するとカビは全く生育できない。これを維持するために環境の相対湿度を温度変化に拘わらず常に60パーセント以下に保つことが必要である。
==============抜粋コピペ終わり
新潟県で夏季に湿度60%以下を目指すには全館空調する以外に方法はなく、特に掃除がし難い床下は意識的にメンテや乾燥を必要とします。