もの申す!やっぱりエアコンについては譲れない・・・

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昨日は栃木県足利市に着工する「家富町の家」の施工をして頂ける工務店さんへ伺って詳細の話をしてまいりました。ウインドで三国トンネルを越えるのは初めてで、トンネル入り口部分の土樽PAでは紅葉が見事です。

関東側の谷ヶ岳PAでも紅葉はしておりますが、土樽の方が鮮やかだったようです。

さて・・・

家富町の家はその字のごとく足利市の有名な鑁阿寺と同じ町内に建つ「緑の家」で、歴史的な香りが至るところで感じられ、その周辺環境はとてもすばらしいと思います。私は足利市に詳しくありませんので工務店候補は建て主さんが一生懸命に探されました。そしてその工務店さんはHEAT20という有名な技術委員さんであることわかり、帰るときにその委員会で作成されたガイドブックを頂きました。ありがとうございます。

とても有名なHEAT20・・・だからこそ反論覚悟で物申す。

そしてそのガイドブックに目を通し固まってしまいました。

「あれっ・・・少し変・・・」

他の所はわかりませんが、エアコンと住宅の関係についてだけは、異常に詳しい私ですから下の文に目がとまり・・・

「エアコン暖房は定格付近で長時間運転する事を想定して計画する」

・・・

「これって相当前のエアコンの性能特性では・・・」

と、つぶやいてしまいました。

赤い線引き部分が私が変と思ったところ。とても決定的なところ。写真はHART20からの転載。

15年くらい前から家庭用壁掛エアコンは、定格付近より低い位置でCOPがMAXになるように設定されている事が多いです(多いというのは機種によって特性に違いがあることが普通だから言い切れない)。特にAPF評価が始まった8年前からは、定格の半分付近で一番COPが高くなるように設定されている事が多いです。これは一番最新の実測論文でも明らかで、東京地域で評価するAPFでは定格の半分付近での暖房状況(外気によって負荷が変わる)が累計時間が一番多くなります。

10年前の博士論文で私が作った解析グラフ。

上のグラフは今から10年前の私の博士論文から引っ張り出してきた解析結果です。これはある年の東京新潟のアメダスのデータからJISのAPF算出で規定されているデグリディと同様に1時間ごとの暖房負荷を算出した結果です。部屋の設定条件はJISの6帖用エアコンとほぼ同様です。ここからわかるのは、無断熱の部屋の6帖用エアコンの瞬間最大暖房負荷は2.5kwになっておりますから、6帖用エアコンの定格を2.5kwに設定したことがわかります。しかし見ての通り、無断熱の部屋としてもボリュームゾーンは定格の半分くらいの負荷時であり、仮に半分より高い負荷時に消費電力が多くなっても(累計時間×消費電力)2/3程度ところにボリュームが来ます。つまり、APFを良くするためには(累計時間×消費電力)の一番大きい部分にCOPのMAXを合わせるような器機調整が良いことになります。ですので10年くらい前から一昨年までこの部分にCOPのMAXが来ておりました。

それを整理すると・・・

10年前の博士論文で私が作った解析グラフ。

このようなグラフになるのです。このグラフは私の自慢で、現在ではエアコンの特性を見る時に同じようなグラフが使われますが、このグラフを10年前にいち早く発表したのは多分私で、まさしくオリジナルです。

少し説明すると、
1時間の負荷を1年分累計すると青い累計時間が出来ますが、累計時間では外気温によって変わるエアコンのCOP特性による消費電力が入っておりません。ここに外気温におけるエアコンのCOPを入れた累計消費電力のデータに作り直すと・・・ピンク色の線になります。つまり、累計時間だけを見ると負荷が低いところも多い時間数になりますが、負荷が低いので(外気温も高いのでCOPは良くなる)時間が多くても年間のエアコンの消費電力に与える影響は低くなります。つまりCOPは低くても総消費電力に影響を与えない領域となります。一方累計時間が大きく消費電力も大きくなる部分でCOPを高くしないと消費電力は増えるので、エアコンの性能の山をここに持ってくれば一番APFが高くなる事になります。このグラフエアコンの定格暖房値は2.5kwなのですが、その2/3の1.7kw時のCOPを高くするとAPFが高くなるのです。

そしてその裏付けが今年の建築学会の論文にも最近のエアコンの実測として掲載されておりました。

下の図が2015年に建築学会で発表された図です。発表者は赤林研究室で、本来ならそういった図に手を加えることはしてはいけないのですが、・・・許してください。黄色い網掛けと線を入れました。黄色5kwがこのエアコンの定格暖房出力です。

床下暖房は強風で行うため、低温時最大暖房出力(2°)の1/2位がその家の最大負荷になるようにエアコン能力を選んでほしい。

上が強風モード時のCOP特性(3つの外気温ごと)で、下が自動風のCOP特性です。曲線の形はちがいますが・・・

2つとも定格暖房時ではCOPの落ち込みが見られ、
定格の1/2から2/3の所がCOPのMAXになっております。

これは私が10年前に解析したグラフを裏付けるもので、APFを良くするためには当たり前に技術者が考えるエアコンの設定です。私が過去見た家庭用エアコンの論文でCOPの特性は2/3はこのような曲線を描きます。

ですので・・・
影響力が大きいHEAT20のガイド本には
「エアコン暖房は定格付近で長時間運転する事を想定する」と断定してほしく無いと強く望みます。
特に準寒冷地では-2度時のCOPは定格の1/2が最高値となる事に注目してほしい。このエアコンはパナソニックの最高機種(2012年製)。

エアコンだけは譲れない「事実」が有ります。

PS・・・本を頂いた委員さんにはエアコンの話は全く関係ない立場の委員さんである事を申し上げ、このエアコンの内容はこの本を批判する物ではありません。エアコンの特性研究者の一見解ですがこれはじきに正しいか間違いか証明されると思います。

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