個人の地震と政府の地震の違い

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全国ほぼ同じ確率で大地震はおこる。それを示す地図。国立防災科学研究所から転載

昨日27日に国立防災科学研究所が発表した、2017年版地震ハザードステーションにおける地震の予測図です。

この図を見て一瞬で

「あれっ?」

と思った方は・・・凄い方です。

そうですね。

何時も報道で発表される地震の予測図と大きく違います。

何時も皆さんが目にするのは、

こちら↓

プレート型地震からみた大地震の起きる確率。国立防災科学研究所から転載

そうそうこれ、これ。

太平洋側だけ真っ赤かのこの地図ですねよね。

この地図は両方とも

今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率

です。

で、どうしてこんなに大きく違う色なのか?

その違いは青く囲った楕円の条件になるからです。

すこし説明すると、

この二つの図はこの震度6弱が30年間に来る確率示しております。

震度5強までは家の倒壊または半壊が殆どないのに震度6弱以上と言えば、耐震等級1クラスの家は半壊となり、条件が悪ければ倒壊するほどの被害をもたらす地震の揺れです。

すると冒頭の図では日本国中(長野県除く)全て同じ色・・・。

一方二つめの図は太平洋側だけ真っ赤か。

実はこの二つ地震の発生原因がちがうです。

まず冒頭のこちらの図↓。

関東・東海だけに大きな地震が来るわけでは事がわかる。

こちらは直下型地震となり、地面の活断層などが動いて起こる地震です。この地震によって過去30年死者10人以上が発生した地震を列挙すると、

  • 日本海中部地震 1983年 死者104人
  • 北海道南西沖地震 1993年 死者230人
  • 阪神淡路大震災 1995年 死者6418人
  • 新潟中越地震 2004年 死者40人
  • 新潟中越沖地震 2007年 死者68人
  • 熊本地震 2016年 死者106人

一方こちらは↓は

プレート・海溝型地震であり過去30年死者10人以上が発生した地震は1回で、

  • 北海道十勝沖地震 2003年  死者48人(?調査中)
  • 東日本大震災 2011年 死者15690人(内津波と思われる死者13500人)

です。

プレート型の地震は、一大きな揺れが発生=津波となるので、広範囲に大きな被害をもたらします。一方直下型地震では大きな被害をもたらす範囲は震源地から数十キロ四方なので、大都市の直下以外被害※は大きくなりません。

※「被害=人の命」なら数の大小に関係なく大変な事なのですが、

※「被害=損害額」ならプレート型地震の方が比較にならないほどの被害額になります。

そこで政府はこのプレート型地震についての対応が主となります。これは政府の考えたかとして一方では仕方ありません。

ですので報道向けアナウンスはこちらのプレート型地震の起きる確率を使います。

実は地震研究者もこちらの地震発生の確率の方に興味があり、直下型だと日本国中ほぼ同じ確率なので、その予報研究に大きな意味があるとは思えなくなるからです。

つまり日本国中、いつどこでも同じ確率で大きな地震は発生することになるから、それ以上の研究と言えば、

「いつ、どこで地震が来る」のかという

地震予知になり、

それは現在の科学ではほぼ無理な事がわかっているからです。

つまり政府と研究する側の利害が一致しているので、プレート型地震の確率のほうに焦点が当たるように発表するのでしょう。事実直下型の確率の地図は、大手マスコミで発表される事はありません。

熊本地震でも、阪神淡路大震災でも、新潟中越地震でも、皆被災者は

「この地域で大きな地震が来るとは思わなかった」

と口を揃えます。

国民目線では直下型の情報の周知徹底がとても重要で、

もし国民の生命と財産を守る事が、政府の第一の目的なら、

生命=直下型でも被害は大きい

として直下型の発生確率ももっと周知徹底する事がもう一方の任務と言えます。

特にプレート型は津波による被害が殆どで、家の倒壊や火災による死者は圧倒的に直下型が大きいと言えます。

一方国民一人一人でみるとプレート型も直下型も関係ありません。どちらも大変な事です。是非同じようにアナウンスする事をお願いしたいですし、もしダメなら国民が賢くなり、

一人一人で情報を取りに行くしかありません。

その情報はこちら↓136ページあるのでこの連休中にでも目を通して頂ければ、如何に正しい情報が報道では少ないかがわかります。

http://www.jishin.go.jp/main/chousa/17_yosokuchizu/yosokuchizu2017_chizu_2.pdf

また全体の2017年版地震ハザードステーション情報はこちら↓です。

http://www.jishin.go.jp/evaluation/seismic_hazard_map/shm_report/shm_report_2017/

明日から9日間以上の大型連休に入る人もいらっしゃるでしょう。多分そのくらい連休が続けば地震について知識を深める(地震はまだよくわからないという)のも良いと思います。

PS
直下型地震は全ての地域に同じような確率で起こるので(実は解明されていないのでそうなるのか)、是非政府は全国の大学・研究機関に同じように地震研究の予算を配分してほしいものです。

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コメント

  1. 木原 より:

    > 政府と研究する側の利害が一致しているので、プレート型地震の確率のほうに焦点が当たるように発表するのでしょう。事実直下型の確率の地図は、大手マスコミで発表される事はありません。

    これは重要な事実です。

    阪神淡路大震災を経験し、その後のマスコミや政府、自治体の対応を見てきている身としては、現状では国民一人一人が少しでも勉強して自衛するしかないと考えます。

    といってもネット時代は情報の玉石混淆が問題です。浅間様が今回ご紹介なさった情報のように、出所の確かな情報をじっくり見極め、それすら鵜呑みにしないことも大事なことです。

    (1) 土地入手の前に地盤の揺れやすさを確認する
    以下は、施主が考えるための入口の一例になると思います。
    http://www.vic-ltd.co.jp/map/
    http://www.asahi.com/special/saigai_jiban/

    (2) 構造計算を自分でできる設計士に設計を依頼する
    意外にこれが難しいようです。でも安心を確保した上に、空間の豊かさ=暮らしの質の高さを構築するには大事なことだと思います。

    ご自分で最終の計算書が作成できる‥‥というのが理想かもしれないですが、諸般の事情でたとえ書類作成をどこかの事務所に外注するとしても、その前に自分でザッと計算できる力と経験がないと、おそらく勘が働かないので、第1にとても不自由な設計になるように思いますし、第2に設計監理もうまくいかないのではないかと思います。これは施主として大きな損失ではないでしょうか。

    • 浅間 より:

      良いサイトですね。
      今は様々なサイトがあり、昔と情報量が変わりました。

      そのほかも木原様のおっしゃるとおりだと思います。
      ある程度構造概要がわからないとコントロールもできませんし、他分野であっても専門的なことを知っていないと、その深みというか最も条件にふさわしい選択肢を大きく誤るかもしれません。