大地震後の気密性は担保できるのか?制振と法律・続

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大地震後の気密性は担保できるのか?制振と法律
運動エネルギーを熱に変えるブレーキと制振装置は同じ。 近年、木造住宅でも地震に強い住宅として「制振」というキーワ...
2022年3月に書いたブログ。制振装置のことに触れている。

上は2年ほど前にアップしたブログである。その時に制振装置(制震としないのは、地震による振れを防止するだけでなくそもそも風による振れ防止としての制振装置が開発されているから)について少しふれた。今も変わっていないこの考えは最近の住宅系専門雑誌にもそのようにとらえている考えも多くなったので、当時としては尖った上の意見はやはり時が証明してくれたと思う。それが・・・

日経ホームビルダーが廃刊になってから住宅系の業界専門誌は多分ほぼこれ一択になっている。その中にあるこの誌の内容にはいつも感心させられる。

今回はその中で制振装置が触れられていたので、2年前の続きとしてブログで取り上げてみた。

上の雑誌からの抜粋。とても重要であるところだけぼかしフィルターはしていない。

この誌の中「制振装置は一般的な構造計算である許容応力度設計になじめず、限界耐力の計算で確かめなければならない」としているのは前半部分の「許容応力度設計になじまない」はとても同意する。後半部分の限界耐力は自身でおこなったこともなくわからないので「そうなんだ」ということになる。なぜ許容応力度設計に組み込めないかについては何度かブログにもあるが、木造の許容応力度設計がピン構造(厳密には少し違うが)が前提である以上、接合部の破壊が耐力壁の破壊の前に起きてはならないとして計算しているため、制振装置メーカーがその情報を公開し、また公の承認をもらっていない以上、許容応力度設計には組み込めないし、仮にデーターがあってもエネルギー吸収の仕組みが従来の耐力壁と違う以上、同等に計算できることはないためである。この接合部の破壊がない前提がとても大事なことは下のブログで解説している。

建築士が考える耐震性 その3
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このことが分かっている人(構造をまじめに取り組む人)はむやみやたらに制振装置を取り入れていなかったはずだ。しかし構造に対してまじめに取り組まないときは、制振装置のメーカーに「この家はどこ装置を設置したらよいかと」図面に設置場所を記載してもらいその責任をメーカーに押し付け、その制振装置の力学的な理解も行わず取り入れてしまったのであろうが、上の理屈で取り入れられた家が逆に弱くなる時もあり、そのような建て主さんにはどのように取り繕うのだろうかと心配になる。

上の雑誌からの抜粋。「軽敏な損傷で済んでいる」とあるが12枚の追加の耐力壁があれば当たり前。この図や文はとても重要であるのでぼかしフィルターはしていない。

また・・・度々制振装置の優位さを紹介するために用いられる上のような事例は、はっきり言って問題がある(詐欺的表現)。よく見れば明らかなのだが、まったく同じ家にかたや耐震等級1の耐力壁で、もう一方は耐震等級1に12個の制振装置をプラスした家としている。それは損傷が違うのは当たり前である。私に言わせれば、比較するならかたや耐震等級1にさらに耐力壁を12枚もプラスして(一階に8枚、2階に4枚)耐震等級3以上の家と、もう一方は耐震等級1に12個の制振装置をプラスし家の比較でなければ公平ではない。そんなことは誰でもわかる。が、なぜこんな比較して意味があるというのか?これにはいつも首をかしげてしまう。

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