建築技術2018年1月号買いましたか? その4 
 繋げる感覚 調湿から

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調湿が一時ブームになったが、最近あまり聞かれなくなった。しかしまだ根強く調湿にたいし興味がある・・・というのが巷の気持ちであると思う。そこで結露とは切っても切り離せない調湿について今企画内にも数ページの解説がある。

最初のブログ文面で「あれっ」と思われた方もいらっしゃると思う。今年から当ブログの標準的表現は「です」、「ます」調をやめることにした。理由は複数あるが今日からは助走として切り替えをスタートする。

まず調湿に対しての「緑の家」の考えだが、

「新潟県の平野部において超高断熱高気密がベースの家造りなら調湿素材を積極的に考えることはしない」

となる。ポイントは新潟県において・・・である。

まず調湿とは何か?だが、

空調機など電気製品を用いず、ある空間内でその構成する素材、物だけでAH(絶対湿度)、RH(相対湿度)を調整することと理解している。よって壁や天井は無論、設置している什器、家具等も含まれる。なぜ電化製品を除くか?がちょっと不明であるが・・・。元々技術は進歩するので、100年前にあり得なかったヒートポンプ式やデシカント式の除湿器、気化式加湿器ではあるが、調湿を広い意味で考えるなら一般的に入手出来るこれら電化製品は既に調湿の範疇にはいると思うが、なぜか住宅関係者は調湿から外したがる(住宅より大きいビルなどはエアコンが調湿の代表器機)。

上写真の解説から、調湿材がその空間にある程度あれば、調湿材がないときと比べ表面結露防止に効果があることがわかる。

また、

調湿があることで、吸放湿時に発生する熱(加熱、除熱)は、わずかにその空間内の温度上昇や下降を緩やかにすることもわかる。

これらは両方ともメリットである。ではなぜ私が「「緑の家」において新潟県で積極的に採用を考えないか?」

これは2015年からの継続読者さんならわかると思うが、

「緑の家」は冬期、夏期とも家中空調するので、調湿材の恩恵を特に必要としないためである。

また、吸放湿する素材は布団や座布団、昔の畳、洋服も同様で、その量が多ければ、壁や天井の素材に採用するより多くの湿気を吸放出する。しかし実測論文の多くではそれらを設置された結果が少ないといえる。生活感が何もない実験部屋で壁や天井材の湿気の吸放湿だけを把握しようとする。これはこれで大事な事だが、実務者はその結果と家具や衣類、ソファーや布団がある実際の状況をつなぎあわせなければならない。つまり家具やソファーがあれば同様の結果になる。

上写真のような技術解説は私たち実務者の基礎知識を得るには最も重要である。しかし家も他の器機もそうであるが、個々の性能、特性と共に全体のバランスが重要である。

そして・・・

吸放湿材の最もやっかいなことは、吸放湿量が多くてその現象が盛んなことである。

何を当たり前の事を言っているのか!

と、お叱りを受けそうであるがこの問題があるからこそ昔の土壁も強アルカリの漆喰を塗ることで、壁のカビ問題を緩和していた。

吸放湿部材として最も有名な身近な物は、誰もが知っている紙(ペーパー)である。薄い一枚の紙なら、吸放湿は殆どないので長期間カビないが、その紙が500枚も重なり本などになると吸放出量は単純に500倍となり、その効果は著しいがカビや虫などの餌食になる事は誰も否定しないと思う。これは吸放湿の性能が高いほど、長い期間の吸放湿があり素材表面のRH(相対湿度)が高い期間が多くなるため、カビが生えやすくなる(吸放湿がゆっくりの内部も同様)。

昔の壁に使われる土壁表面には強アルカリ漆喰で、珪藻土にはアルカリ物質と防かびケミカルを添加してカビから守っている。だから土壁の裏側ではカビが生えるし、アルカリ物質と防カビケミカルの防護期間がきれた自然素材の壁はカビがはえるのである。これは畳の床でも同様で、藁床を使った本物の畳(最近の畳はスタイロ畳)は、掃除などのメンテナンスをしなければ梅雨時にはカビが生える。ただし、藁床のタタミは最も優れた調湿効果を示す素材であることも事実である。

このように、ある実験だけをすればよい点がわかるのであるが、それを実際使用したときの事を(実測や理論と実務の環境を)「繋げる」ように考えないと失敗することになる。

さて最初の「新潟では・・・」を説明すると、

梅雨や高湿の夏期がない北海道や、それと同様な気候になる本州の高地、また東京のようなヒートアイランド現象の顕著な地域では、高湿外気によるカビ害が少ないため調湿材のデメリットは少ない。つまり地域によって違う事も「繋げる」一部となる。

最後に、

新潟であっても調湿材の多くは多孔質であることが多く、そのため音を吸収してくれたり臭いを吸着したりするので、これは大きなメリットであり、その効果を期待して使うならそれはそれでよいと思う。

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