続・CF(循環ファン)のこと 

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脱衣所に設置されたCF(循環ファン)とリターンの穴300角。

多くの施工者さんが「緑の家」のCF(循環ファン)の図面を見て取り付け間違うことがある。

それは風の向き・・・。

ちょうど「CF(循環ファン)のこと」に同様のコメントも寄せられたので少し補足説明をしておく。

CF(循環ファン)の風向きは排気用ファンと正反対

なにかというと・・・

排気用の換気扇は、

「汚い空気を屋外排出することが目的」

であるから、

室内空気を屋外へ移動させる向きのベクトルになる。

一方・・・

風呂CF(循環ファン)の目的は

浴室内の水分(液体のこと)を早く気化させて湿気に変えることがまず第一の目的。気化後の湿気を拡散させる事が第二の目的」

になる。

よって第一の目的のため気流を浴室にまんべんなくおこす必要があり排気型ではNG。必ず給気型として、気化させたい浴室内にベクトルを向けることが重要。物に付着した水分が気化するためには、水の表面張力や水を覆うRH(相対湿度)100%の薄いバリヤーを壊すエネルギーが必要。そのために乾かしたい場所にあてるように空気をいれる。だから原則浴室から排気用のファンのようなベクトルはNGなのである。

これは扇風機を考えてもらえばよい。汗をかいた時に扇風機の前にいれば、その早い気流により液体の汗の気化が大きくなり体が冷やされるが、扇風機の後ろにいてもあまり冷やされない(笑)。

ここを理解していないと、排気用ファンを浴室に付け、その行き先を居室にした循環ファンとしてしまう。これでは折角の大風量が液体の水分を気化させる為に効率良く使われていない。

浴室以外のCF(循環ファン)も同様の風ベクトルとする

「緑の家」は浴室以外も多くのCF(循環ファン)が設置される。

具体的には「緑の家」1件において浴室以外に4つほど設置されるのが標準。

浴室以外のCF(循環ファン)の目的は、液体の水を気化させる事を目的としていないのにどうして風ベクトルは同じなのか?

と思われるだろうが、これも目的を考えれば明らかである。

個室用CF(循環ファン)

個室用CF(循環ファン)は

「主に夏季の遮断された個室へ冷気を運び入れるのが目的」

超高断熱高気密の住いでは、キチンと夏の窓の日射遮断をすれば驚く程少ない冷気で個室冷やす事が可能。具体的には寝室で最大400W/h(下に示す)の熱負荷しかないから各部屋にエアコンを一台一台設置する事はナンセンス。よってでCF(循環ファン)を使って熱負荷分の冷気を与える。つまりここでも与える事が目的であるので風のベクトルは居室向きになる。吹き出される気流が生まれる事で、先日ご紹介した論文のようにその冷気が全空間へ行き渡りやすくなる。

個室(寝室)の熱負荷を推察

廊下に設置されたエアコンとその真正面にCF(循環ファン)がある。そのように設置すればCF(循環ファン)が小さな空調機となる。

仮に2階にある8帖の部屋で南西の角部屋とした場合(室温27度RH60%、外壁通気層で40℃)としたとき、

15時頃に壁、天井から流入する熱は50W/hが最大。

換気の熱流入は全熱交換型換気システムなら22m3/hで約45W/h。

窓から流入を20w/hに、日射取得を60w/h、

つまり人がいなければ175wで室温27度RH60%を維持できる。

もし日中ここに人が2人いてノートPC1台を使い、LED照明2個点灯させたとするとその熱の合計は230W。

つまりこの在室時の真夏の夕方の熱負荷は405W/hとなる。

この時部屋の戸が閉まっていても405Wの熱除去が出来れば人がいても室温27度RH60%を維持できる。

居室用CF(循環ファン)の熱除去力は概ね380Wくらいになるから、流石に冷やす事ができない。しかし夜間を考えると、窓からの流入はほぼ0となり、壁天井からは日中の蓄熱を半分程度の流入と考えると25w/hで換気が30W/h(潜熱負荷のみになる)、ここに人とPCと照明で230W/hで合計300W/h程度となり維持できる事になる。

仮に2階ホールにエアコンがあり、このホールで集中的に冷気をつくるとこのホールの空気は24度でRH55%くらいになる。このエンタルピーと個室の維持したいエンタルピーの差分のエネルギーにCF(循環ファン)の風量分だけの冷気をえる事ができる。よってCF(循環ファン)の風量は自ずと決まってくる。具体的に250m3/h程度で380w/hの冷却ができる。ただ顕熱比も関わるので複雑になるが・・・再熱除湿を使えば制御できる可能性が高い。

一方、個室の扉を開けておけばCF(循環ファン)がOFFでも冷却可能であるから必要無い時が殆どとなるので、個室用のCF(循環ファン)は保険のようなもの。

もう一度、浴室用CF(循環ファン)の目的

特に神経質に掃除しなくとも浴室の床にカビは見られないとのこと。既に4年経過の在来工法のお風呂(普通のタイル床)。

浴室の換気とは、カビ防止でありカビの胞子の発芽を防ぐことである。よってそのためには、水蒸気を含む湿気の拡散よりも、浴室内の液体の水分を出来るだけ早く気化させる事が重要である。つまり浴室の換気の目的は所謂乾燥であり、湿気の排除はつぎの第二の目的である。

「緑の家」ではこのCF(循環ファン)と共に、床下エアコン暖房が強力な床乾燥を半年間行ってくれるので、ボディーソープを使う限り、カビとは無縁の床環境が出来上がる。

さて何故このすばらしい浴室CF(循環ファン)が普及しないか不思議であるが、このCF(循環ファン)の開発・推進担当として今後も更に様々な例を紹介していきたい。

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コメント

  1. としちゃん より:

    我が家はこちらで拝見してからサーキュレーターで浴室へ風をいれています。
    従来型の換気扇ではなかなか乾ききらない時でも、サーキュレーターなら4時間回せばカラカラです。
    このやり方での唯一の不満は、サーキュレーターを置く位置が脱衣室の入口床になっているので、片付けが面倒なところですね。

    その点、CFなら片付けの必要もなく本当に羨ましいです。
    脱衣室に出てきた湿気はどうするのかな?と思っていたら脱衣室にもCFをつける、と。
    納得の解決法です。
    機会があれば導入したいと思います!

  2. Asama より:

    いっこう様、山本祐樹様
     
    コメントありがとうございます。

    >そこで、脱衣室CFと浴室CFの送風量バランスはイコールで良いのでしょうか。

    イコールでも良いですし、どちらが著しく違わなければ特に問題はありません。

    >リターンの300穴は、脱衣室にRAがないからでしょうか。

    そのとおりです。また脱衣所には床下エアコンもありますし、この脱衣所は戸が何時も閉まっているのでリターンは必須です。状況により穴がなくても良い場合があります。

    >堺の家は構造見学会などはされるのですか。

    申し訳ありませんがその予定はありません。
    工事監理の完成チェック時にどうしても・・・とのご希望があれば個別に見て頂く事を検討いたします。

    >差支えなければ標準的に使用しているCFの機種を教えていただけないでしょうか?
    また、設置するうえでの注意点などがあれば合わせて教示いただければありがたい。

    誠に申し訳ありません。CF(循環ファン)に限らず特定機種をかき込むとそれに伴う責任が発生しますので、オープンの場での記載は見合わせております。その点はご理解下さい。ただ山本様の選定されたシリーズを以前は使っておりました。

    設置の注意点は壁に設置するなら単純なので特にありません。

    以上です。

    • いっこう より:

      浅間様

      そうですよね。
      自分なりに色々あたってみます。

    • 山本祐樹 より:

      回答ありがとうございます。
      CFは合理的だと思うので是非採用したいです。

      できればシューズクロークに設置して、靴や雨具の水分を夜のうちに乾燥できるようにしたいな。

  3. 山本祐樹 より:

    浅間さん、こんばんは

    いつも楽しくブログ拝見させていただいてます。

    勉強させていただいている中で、CFファンについて興味を待ちました。
    三菱エコパスファンで120m3/h以上の送風ができる物を選定しようと考えています。

    そこで、脱衣室CFと浴室CFの送風量バランスはイコールで良いのでしょうか。

    また今日のブログに紹介されていたリターンの300穴は、脱衣室にRAがないからでしょうか。

    質問ばかりですみません。
    堺の家は構造見学会などはされるのですか。
    もしされるようなら一度見てみたいです。

    よろしくお願いいたします。

  4. いっこう より:

    浅間様

    いつも興味深く拝見させていただいています。

    新築する拙宅の浴室(一坪タイプ)にCFを設置すべく計画しています。
    差支えなければ標準的に使用しているCFの機種を教えていただけないでしょうか?
    また、設置するうえでの注意点などがあれば合わせて教示いただければありがたい。

    設備屋さんは、向きが反対じゃないんですか?と何度も聞いてきます。
    やっぱり不思議なんですかね。

  5. 四国の施主 より:

    浅間様

    いつも勉強させていただいております。

    昨年夏に完成、入居した自宅に、勝手ながら「施主責任」の下、浴室用のみCFを採用させていただきました。

    結果的には、「大正解」でした。
    特に、冬場は暖気と湿気をそのまま室内に取り入れられるので、浴室が早く乾くし、室内は冷えない上に加湿器いらずです。

    夏は、一時的に浴室のドレーキップを内倒しにして、別に設置した“標準仕様”の排気用換気を回すなどして使い分けています。

    導入コストも安いのに、何で普及しないんでしょう?笑