換気を少し考察 その3 「緑の家」の常時換気方法

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「その2」では、⑨、⑩の第三種換気について「風上側の予期せぬ大量給気」について言及したが、気の利いた給気口には、流量抑制のフィンなどがついているので、風上側の大量給気のよる冷たい風の影響は少なくなっている。しかし、風下側の給気口の流入現象や逆流などは解決が難しい。とは言っても風には揺らぎがあるので、一日で見れば概ねOKという地域が多い。その2で申し上げたとおり・・・NGと考えられるのが新潟のような冬期の卓越風が安定して強風である地域となる。

その3では「緑の家」の採用している換気方式の説明をしたい。

その前にパッシブ換気について少しだけ取り上げたい。

パッシブ換気は北海道など寒冷地を中心に採用され始めている換気方法で、電気動力を全く使わない換気となる(夏期は使う事もあるらしい)。

この概念は煙突を屋根上に立てるだけで換気されるので、電気がない時代からあったようで、電気式の換気扇が普及した現在ではなくなりつつあった。しかしこの方式が見直されたのは・・・

電気式換気扇においてメンテナンスを全く行わない家が多くあることがわかり、換気がされていない事実が明らかになったことによる。メンテナンスをしなければ不安定な換気方式なら、動力使わない煙突による換気でも良いのではないか?温度差換気、外風換気ならメンテナンスをしない電気式の換気より安定するのでは・・・との発想もあったと聞いている(ただ思うのだが、どんな設備でも大小あれメンテナンスは必要だろうと思うし、メンテナンスをしない人住い方は何をしても矛盾がうまれると思う)。

そんな事を聞いても私はどうしてもパッシブ換気を採用するつもりはない。それは冒頭で申し上げたとおり、換気も無難がよいと思っているから。この無難という意味は何時も申し上げているとおり、

「難がない事」又は「限りなく少ない」であり、そのために多少のエネルギー消費もやむなしとう考えである。一部の地域を除いて暖房は人のつくった人工的環境であるから、暖房時に必要な気密性とセットで換気があり、それには動力を使ったほうが自然と考えている。

また、パッシブ換気の多くが給気口が基礎断熱を行った床下内にある事が多い。この場所については昨年複数の論文でも紹介されたとおり本州では危険側になる。

つまり町中のパッシブ換気は町中の通風と同じくらい難しいと思う。野中の一軒家であれば卓越風など外風要因と建物周囲における条件、および気候条件が整って考えやすくなる。しかし私たち実務者は、町の込み入った場所だったり、これから早急に変わりゆく分譲地(敷地60坪以下)だったりすることはザラにある。外風はこのような建物周囲の配置によって変化し、当初卓越風側に給気口を設ける計画をしていても、周囲の家の配置が変わっただけで常に風下(負圧)側になってしまうこともある。

さて・・・

「その2」をお読みになった方は、建物の換気は様々な要因で計画通りいかなくなる事が多いと認知されたと思う。その影響を受けにくいのが・・・

お風呂CF(循環ファン)を使ったA.静圧の大きい第一種換気システムやB.個別設置の第一種換気システム(上図①~⑥)である。

この影響とは人に対して不快になる冷風の流入過多と全体最小換気量の安定的確保のこと。

一方第一種換気システム(①から⑥)は気密性能が悪いと(C値1.0以上)、全体の換気量が増える時期があり(主に温度差換気の大きい冬期)その点は注意したい。

「緑の家」ではAタイプの換気扇は床下に設置される。

Aタイプの全熱交換型換気扇本体 アイレホームページより転載

まずAだが・・・

「その1」で示した換気扇で、大きな静圧をもつ機器であるので、設計時に本体の配置プランや給気口位置などをほぼ気にする必要がない。一方静圧が大きくとれる機種は騒音も大きいのだが、床下に設置できる床置き型が販売されてからは、床下内設置で本体騒音もクリアーし、15年後の取り替え易さもOK。唯一の欠点は室内のSA配管の汚れだけ。これはまだ実績や論文が少ないので様々な意見があるが、「緑の家」では夏季もほぼ乾いた空気が通るので深刻な問題にはならないと判断している。

家族の間に取付けられたBのダクトレスの第一種全熱交換換気扇(ロスナイ)。

寝室は標準で2つ付く。2個あるのは1個あたり「弱運転」で風量を弱め騒音(28db)を防止しつつ2個で換気量を確保したいから。ここらは「緑の家」の小技である。

B.は三菱なら「壁付けロスナイ」と呼ばれて販売されている換気装置。これは過去ショートサーキットの恐れを指摘する考えがあったが、各研究機関で論文などが発表され、ある一定位置、風量以上(そのようにメーカーが製品として作っている)なら第三種型の⑩と変わりないことが報告されている。コストも安いし、取り替えもとても楽。欠点は音が大きいこと(そこそこの静圧がとれるファンなので)、目立つこと、年4回のフィルター掃除が数カ所になることである(2枚/個×5個=10枚)。一方外風や温度差がある程度あっても規定量の空気(熱交換も)が供給されることにメリットがあり、この機器の設置によって冷たい風を感じたとの意見がなくなった。

「冷たい風くらい我慢すれば・・・」との意見もあろうが、超高断熱高気密に住むと、冷たい風を感じるのは大変残念な気持ちになる。これは27年前に体感している拙宅でも同じ。

Bタイプの全熱交換型換気扇。三菱電機のホームページから転載

このAとBは決して消費電力は低くなく、この効率指標である比消費電力もAで概ね0.5w/m3/hで、Bでは0.41~0.6w/m3/hと少なくはない。しかし強い静圧や同面風圧によるキャンセル効果があり、換気量は至って安定している。ここがポイントでもし換気の安定化を最重要視するならこのAとBが良いと思われる。

B(⑥)の模式図。基本的に同一面からの給排気のため外風の影響を受けにくい。またお風呂のCF(循環ファン)も良い働きをしている。

B(⑥)の模式図2。部屋間がつながっていても個室にはある程度排気されるし、風下側でもファンの能力である程度給気される。

そしてもう一つ採用しても良さそうなのが・・・

③と④である。

この③と④はAとBの顕熱交換型であり、お風呂やトイレの排気まで一緒に換気する事が可能である。つまり下に示す☆を考えなければ一番無難な換気システムはこの③と④であると言える。では何故「緑の家」では現在採用していないかというと、

夏の外気湿気の除去が出来なくて、一般的なエアコンによる冷房空調ではRH(相対湿度)が高く維持されてしまう。新潟でこの方式で換気をおこなうとRH(相対湿度)60%前後にしかならない。再熱除湿を使えばRH(相対湿度)50%にはなるが、これをどう評価するかである。またSAダクト内が夏季に高湿になる(全熱交換型に比べ)のでダクト内のカビ問題が予想される。☆この問題は夏季の空気が乾いている欧州ではあまり指摘されず、その検証を行わないまま欧州から積極的に日本に輸入しているメーカーもある。ただしまだ温暖地域での実例が少なく明確な指摘はされていないので、今後この換気方式を採用する可能性がある。

顕熱交換時のSA内の湿度予想。32度RH(相対湿度)60%の外気が熱交換率90%程度の換気扇で室温26度の時にSA温度が27度に下がる。つまりRH(相対湿度)80%まであがり、この環境では2ヶ月くらいでカビがはえる可能性が高い。一方全熱交換型はSA内は低湿度だが交換膜境界で高湿度となる。しかし機械の交換は定期的にまた簡単なのでそれは良しとする。

そして冷たい給気の緩和ができれば⑥は大変お薦めである。がしかしこれが難しい・・・その説明は「その4」で・・・。

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コメント

  1. Asama より:

    はると様

    申し訳ありません。換気は法律で規定されていることと、第三種はお薦めしていないこと及び家の周囲環境によって変るので個別で考える必要があり、ブログでお伝えしているとおり大変難しいのでコメントを控えさせて頂きます。

  2. はると より:

    三種換気で質問させてください。
    30坪の2階建てですと、吸気と排気ファンはどのような割合にするのが理想でしょうか?
    トイレは局所換気、ふろor洗面所も局所換気がよいのでしょうか。