建築技術2019年1月号の「Ⅸ.換気の熱回収」において顕熱交換型換気扇と全熱交換型換気扇についての特徴が書かれたページがある。内容はごく一般的なことでもっと深掘りした内容を期待したが・・・。
内容は文字の通り潜熱まで交換できる全熱交換換気と顕熱のみの顕熱交換型換気となっているが、本当にそうだろうか?
確かに上の説明で概略問題ないはずであるが、細かくみると顕熱交換型換気扇でも冬期は潜熱まで交換しているのではないか?
なぜかは本文中にも記載があるが・・・
顕熱交換型換気扇は熱交換膜に樹脂製等の湿気を通さない膜を使用している。確かに水蒸気は通さないが、外気温が下がった時に樹脂膜に結露した場合はどうだろう・・・。結露とは気相である水蒸気が液相である水になる現象。つまりRA→EAになる課程で凝縮熱が放出されるがその時にその多くの熱は熱交換膜に伝わる。当然熱交換膜はOA→SAにその熱を伝えるはずである。となるとこれは潜熱の一部を交換しているとは言えないだろうか?メーカーはなぜこの事を全く語らないのか?結露=潜熱の移動と思われ熱交換素子が特に直行型熱素子にその傾向が高い。そうなると顕熱交換換気扇でも潜熱交換まで効率良く使われるのではないかと思われるが、実際は結露すると水膜によって顕熱の熱交換率が下がるので、そう単純ではないだろう。
上の図を見てもわかるとおり顕熱交換型換気システムは必ず結露水のドレン管が必要であるし、実際ドレン水が流れて来る。一方全熱交換型でもドレン管が装着されている機種はある。ただ全熱交換型で対向型の熱素子を持つ透湿抵抗が低いタイプにはドレン管の設置が必要無い。つまり全熱交換率が高い機種はドレン管がないのである(下図)。
ドレン管があるタイプの換気扇はドレンパンも必ずあり、長期間使用した器機にはドレンパンでカビ汚染の可能性が高くなる。ドレンパンのあるEA部分でカビ汚染があっても特に問題ないが、実は有効換気率※が低いタイプだと、カビの混じったEAがSAに混じることでカビ汚染のリスクが高まる。仮に有効換気率が90%の換気扇は、10%のOAが混じると思ってよい。
※・・・熱交換素子部分でわずかな隙間からSAにOAが混じり込む割合。
一方全熱交換型でドレン管がないタイプでも、熱交換膜自身が高湿になっている箇所が少なからず存在するので似たようなリスクはある。・・・と想像している。
だから私はカビリスクの低いダクト内部のメンテナンスに固執せず、カビが生えやすい換気扇本体のモーター寿命である12~15年で換気扇本体を全て取り替えて新規にする事をお勧めしているし、一般住宅での若干のカビ発生はやむないとしている。
今回は、「緑の家」では顕熱型の換気扇を使用していないので全て想定での書込みであり実際の現物は見ていないので、建築技術2019年1月号ではそのような突っ込んだ内容がほしいし、折角換気メーカーさんの書かれた記事があるので、そこでは15年経た両方式の換気扇内部写真などがあると、読者さんは諸手で喜ぶことになる。