追従型オートクルーズの疑問

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数年前から追従型オートクルーズ搭載の自動車が増えた。
先にお伝えすると私自身は追従型オートクルーズ搭載の自動車に乗ったことがない希少な人だからこの疑問は単なる杞憂に終わるかもしれない。

この図はあるメーカーであるがほとんどメーカーで同じような車間位置関係であるので代表として掲載させて頂いた。

上の写真はユーチューブでみたある自動車メーカーの追従型オートクルーズのデモ動画。
この動画で違和感を感じて調べて見た。

上の動画では高速道路ではないものの、自動車専用道路と思われ、日本ならこの状況では制限速度60km/hである。通常自動車学校及びほとんど自動車安全協会に紹介される推奨車間距離は60-15=45mといわれている。そこでもう一度この追従型オートクルーズを紹介している写真の白線から車間距離を計算すると25m程度・・・。明らかに45mではないことはわかる。

実はこれは時速40km/hの時と説明されれば納得。しかし次の同じメーカーHPにある動画が↓であるが、

スバル自動車さんのHPをプリントスクリーン。時速70km/hで17mの車間で追従型オートクルーズとなる。

この画には車速と車間距離がリアルに表示されている。見ると・・・

時速70km/hの時に車間距離は17mで追従型オートクルーズが機能していると見て取れる。

下の表はある自動車安全協会にあった推奨車間距離であるが、時速70km/hの時は車間距離は70mが望ましいとある。80km/h以上は時速と同じ車間距離が望ましいとある。

交通安全センターHPより転載

日本には安全な車間距離を確保する義務が法によって課せられている。しかも今後はあおり運転に対する強化法が立法されるとの報道もある。だからこの時期にその疑問がわいた。

まず現在の法律・・・

(車間距離の保持)

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

この法文を読むと一般道路では前車が突然何かに追突してストップ(時速0km/h)を想定している。とすればこの車間距離は上の表がやはり推奨されるだろうが、高速道路では前車が突然時速0km/hという壁に衝突する事はあまり考えられないため、自車100km/hの制動距離100mが車間距離になる必要は無いかもしれない。つまり前車が急ブレーキをかけ同時に自車がブレーキを踏めるとしたら(空走距離0)静止するまで自車が静止する距離と同じければ、車間距離1mでも前車に衝突はしない。しかし空走距離は必ずあり更に運転者の技能、注意力が常に理想的な状態とは限らないので、高速道路でも車間距離は30mほどは必要だと皆が感じている。多分これが空走距離でそのため実際の高速道路の車間距離は30m以上をよく見かける。30mとは白線の実線と無線の3セット分である。しかしこれでは上の推奨表と大きな乖離がある。

平成18年に「適正な車間距離のあり方に関する調査報告」という興味深い研究調査がある。高速道路での車間距離の研究調査で、実施者は自動車安全運転センター、各専門家による実験やアンケートを伴う調査書である。

調査研究書PDF

これによると、前車に続き急制動する想定で時速100km/hで40m、時速80km/hで30mの車間距離の時には、261回の急制動回数で11件の衝突があったとされている。つまり衝突率4%。前車も同様な制動距離があるにも関わらず30m又は40mの車間距離では間に合わない確率が4%あるということ。つまり一般道のように壁にぶつかる(正面衝突)のような停止でなくともこの車間距離では4%の衝突があった。普通に考えれば試験を行う意図を把握して望んだ運転者でも30m、40mで衝突は避けられないことが4%ある。となると普段衝突を意識しない運転では30m、40mの車間距離では2桁の割合で衝突すると思われこの1.5倍の車間距離は必要だと感じる。時速80km/hで45m、時速100km/hなら60mで白線3セット分と考えられる。

さて・・・この調査書は164ページ有るので様々な内容や分析が行われている。これらの結果に基づいて現在の追従型オートクルーズ車間距離がプログラムされていて、下のような図の車間距離なるなら法改正時に何らかの具体的な距離指針が必要ではないかと思う。

スバル自動車さんのHPをプリントスクリーン。

私を含む田舎のドライバーが首都高を走ると手に汗を握る。首都高では車間距離はまさしく上の図のとおり(17m以下も多い)であるから。だから追従型オートクルーズの広告でこの表現でも普通に感じる人が多いから違和感がないのだろう。法文では自動車教習所の教える上表が推奨値になるのだろうが、あまりにも現実と乖離している。その点を踏まえ今年中に立法される「あおり運転防止」で示される車間距離に注目したい。

ところで以前も紹介したが、これまで日本車のクルーズコントロールは、メーター表示で115km/hを設定速度の上限としていた。しかし2017年に入ってレクサスLCが180km/hとしたのを皮切りに、ホンダやスバルが135km/h、トヨタやマツダの新型車も180km/hを実現。これは高速道路の制限速度アップを受けての変化といわれるが、国内最高速度は120km/hであり本当に180km/hの追従型オートクルーズが必要なのか・・・。もしこれで事故がおこった場合、メーカーの責任はないのだろうか?これも追従型同様に現実乖離しており、法律違反のスピードを運転者の意思によらず勝手に車が出せる「半自動運転」の根拠はどこにあるのだろう。国内では120km/h以上追従しなくても問題無いはずなのに・・・。この追従型オートクルーズの出現で自動車の自動運転は既に始まっている。現実に追いついていない道路交通法であるがなし崩しではなく正論といわれる方法で是非進めて頂きたいと思う。

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コメント

  1. Asama より:

    換気マニア様

    >車間距離が短い時の安心感は絶大です。

    なるほど・・・。となると、
    やはり空走距離において絶大な安心感をが持てるわけですから、今後は追従型オートクルーズ等の電子機器の場合の車間距離と、それらがついていない車の車間距離は一応分けて考える必要がありますね。通常の空走距離が0.7秒なので0.3秒くらいに縮めて良いのかな~。今後の議論に期待したいと思います。

  2. 換気マニア より:

    阪神高速で写真の様な車間距離を取っていたら、必ず割り込まれます。
    私も追従型オートクルーズを使った事がありますが、車間距離が短い時の安心感は絶大です。