住宅の安易なリフォームやリノベーションに対し
・・・その1 アンカーボルト

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このブログを読んでいらっしゃる方は、「緑の家」ではリフォーム・リノベーションがないと思われるだろう。

そう・・・そのとおりで、私は積極的にリフォーム・リノベーションを薦めていない。理由は簡単で、耐震性の確保がとても難しいから。断熱気密は大概問題ないが耐震性がNGなのだ。

「緑の家」は耐震等級3認定や相当であり、「緑の家」の最低基準が耐震等級2となっている。
この耐震等級2でさえそれを確保するのはとても難しいと常々感じている。
許容応力度設計を自身で行う建築士(設計者ともいうが私は設計士という言葉は法的に根拠がないので使わない)は、その難しさを認識しており、同様の意見が多い。

何故か?

耐震性を確保するには床の剛性と鉛直面(壁面)の剛性でほぼ決まる。鉛直面は耐力壁と言われるが、耐力壁を一つでも追加・削除すると、耐力壁両端にかかる引き抜き力が変わり、それに見合ったアンカーボルト※の耐力がないとNGとなる。アンカーボルトは一本でも足りなければその等級にはならない。
※アンカーボルトとはWIKIへ

過去幾度と改訂された耐震性を決定するアンカーボルトと座金。これを知らずして住宅のリフォーム・リノベーションは出来ない。

今から15年以上前にはアンカーボルトの頂部に取付く座金は60角が販売されておらず、2013年以前の建物はアンカーボルトの座金が40角しかないので、アンカーボルト一本で支える事ができる引き抜き力はなんと6.4KN以下しかない。これが60角になると14.4KNと2.25倍も支える事ができる。しかも座金をかえただけではNGでアンカーボルトの深さも少ないと座金だけ60角にしても意味がない。当時はアンカーボルトの製品長さは400mmしかほぼ選べず、そこから土台厚さ120mmを引き、座金5mm、M12ナットの高さ10+4mmを引くと・・・11mmしか残らない。この11mmの精度でアンカーボルトをセットしていた職人がいるだろうか?現在はアンカーボルトは450mmが販売されており十分な遊びがとれる。

平成12年の国のマニュアルといってよい住宅金融公庫には、赤矢印M12のアンカーボルトの長さは1種類400mmのみ。またM12の座金も1種類で40角のみ。青矢印の54角は穴から見ればわかるようにM16用である。

平成28年度はM12のボルトは400、450、500と3種類。また座金もM12用は40角座金と60角座金の2種類になった。

私たちが構造設計を行うときに、アンカーボルトの埋め込み深さが250mm未満ならNGであるような設定となる。断熱基準ではある部位の断熱材が少し足りなくても他で補えばOKであるが、構造では個々にOKかNGしかないのである。1mmでも1kNでも足りなければNGとの判定だ。この点が「あまあま」の温熱計算との最大の違い。

平成24年までこのような使い方を「緑の家」はしてきた。M16用の54角座金にM12用の40角座金を重ねて土台めり込み耐力を確保。M12アンカーボルトは450mm品。400mm品ならNGとなるボルト頭の出。

私は平成10年から60角が販売されるまでの数年間は、M12のアンカーボルトにM16用の54角座金とM12用の40角を2枚重ねて使っていた。こんな使い方をしたのは「緑の家」だけであろう。

こんな使い方をしている20年前の建物があるだろうか。リフォーム前にアンカーボルトにかかる引き抜き力を一本一本算出して、非破壊検査でコンクリート内部のアンカーボルト埋め込みを確認できているだろうか?出来なければどのようにして過去の建物に現代の耐震性があると断言できるのだろうか・・・?

だからリフォームやリノベーションはやりたくともお勧めできないのである。アンカーボルトを直すコストがかかりすぎるから・・・というより基礎の再構築しかないがそれを行ってまでリフォームするのか? 基礎を再構築してリフォームといえるのだろうか?

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