2020年査読論文から 全館空調VAV

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再び査読論文をご紹介する。最初は全館空調をVAVで行うシステムの有効性。VAVとはビルでは当たり前の空調方法で、空間に送り出す風量を変えることで負荷に応じた適正な空調制御を行う方法。住宅ではようやく全館空調が普及し始めたが、ビルでは当たり前のように使われる空調。一方固定風量はCAVと呼び、吹き出し温度(冷媒温度)の制御に頼るので個別制御はできない。

以下図は全てこの論文から。

この論文ではCAVの実測からVAVの効果を計算値で検証している。実は私は30年ほど前に恩師の新潟大学工学部(当時)と一緒にP社の気調システムというエアコンを使ったダクト配分による全館空調の実測調査を行ったことがある。当時はVAV等凝ったシステムはなく、たしか全館一斉調整だった。

この論文の実測された全館空調のシステムは下図のとおり。

図1は実測は床下をチャンバーとして使うよくあるタイプの断面図。

図3は図1の時の平面図。床下にはダクトで8カ所に2階で造られた温風を配っている。下図の7は上実測から求められた数値を使ってVAVのシステムに作り替えシミュレーションした時の模式図。

図7はVAVシミュレーション時のシステム断面図。ダクトによる送風であり床下はチャンバーではない。

実測および計算は冬のみ。このシステムは冬は良さそうだが夏はどうなるのだろう・・・と疑問がうかび、換気を空調の送風に突っ込むと、部屋の熱負荷に応じた換気量配分になるので?がつくこと。常時換気は第一に人が出す匂いと湿気の希釈が目的であるはず。寝室・個室がある以上どうしてもここが最優先されると私は考える。

まとめでは可変風量のVAVと固定風量のCAVを比較した場合、VAVのほうがムラのない環境が出来るとののこと。一般的にはそうだろう。VAV・CAVのエアコン制御は吸い込み温度と設定温度だけではなく、外気と日射の外因で負荷を予測しそれも因子として制御するらしい。各家ごとの対応の困難さはあるもののなかなか凝った制御である。比較したCAVとVAVはシミュレーションでその熱モデルをCAVの実測値を根拠に作成している。

図6はCAVの実測結果。大変申し訳ないが図が鮮明でないので青矢印を加筆させて頂きわかりやすくした。

図12はVAVのシミュレーション結果。ムラが少なくなっている。

建設地は長野県佐久市(標高650m以上)と高地内陸気候である。よって外気温は氷点下10℃になっている時間もあるので、この建物の性能UA値0.55w/m2Kだと少し厳しいのだろう。1階トイレで17度、2階トイレだと14度の時もある。これがVAVになっても改善はほとんどない。吹き出しがトイレにないためである。

様々な事を足早に確かめているせいか・・・この論文だけではよくわからなかった。興味があり読みたい人に論文をお送りするので連絡を。

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