2020年査読論文から  通気層と軒の出の重要性

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今年も査読論文を紹介する。このような専門分野の査読論文は一般の人には全く面白く無いであろうが、建築の論文は一般読者でも不思議と面白く読めると思う。それは日常生活に直結しているから。そして2020年初っぱなからドキドキの論文である。

これ以下にある参考文や図は全てこちらの論文からの抜粋。

もしかしたら過去にも似たような論文はあったかも知れないが、ファーストオーサーが住宅大手の研究室所属だとすると、この内容は日常感じている事などを題材としているはずで、そこからしても読む価値はあるかも。

論文の目的は長い文章でかかれているが、端的には通気工法の外壁の現状(経年時)を解明することだと思われる。

上の文は目的の背景部分の一部でまだまだ続く。

この目的にもあるとおり、「経年劣化の影響を踏まえたこと」が近年の論文に多い新築~数年時のみと違い優れているところであると考える。

ここで書かれているように、通気工法は外壁の作り方としては優れた工法であるが、近年の高断熱化により、軒の出のない建物やメンテナンスをしない建物、通気層がキチッと無い建物の時には経年劣化時のリスクが高い・・・と読み取れる。

そこでまず実際の事故の起きた実例をあげ、仮説をたててそれを検証している。

上の文でd)など今までは特に問題ないというよりよい外壁条件と思われることでも、メンテナンスやわずかなピンホールで外壁材から湿気が通気層に侵入し、その通気層も通気が少し阻害される条件が重なると壁内部に結露してしまい、それが内壁まで到達する現象が起きていたとのこと。またb)は金物で通気をとるサイディング施工法の欠点だろう。まさかタッカ(スティプル)の錆とは、と思った方・・・タッカーはさびるのである。

上の事例で仮説をたてそれを確認する実験を下の条件で行っている。

実験方法その他内容を飛ばしてまとめを紹介する。

読んで頂ければわかるが、外壁に劣化は避けられない。仮に塗装を8年ごとに行っても、ジョイント部分の構造によってはピンホールなどからの雨水の浸入はあり得る。この時に通気層さえしっかり機能していれば大きな被害になり難いのであるが、往々にして通気層も劣化する事がある(当初から機能していない通気層は論外)。継続的な通気機能が発揮できる設計手法を検討する・・・と結んである。
またこの論文を始め様々な報告書があるのに未だに軒の出のない建物(窯業サイディングを始めとする金属・ガラス以外の素材の外壁)が数多く造られるの事は残念としか言いようがない。更に言えば、日本を代表する大手のハウスメーカーであっても、通気工法の確実な通気機能を試行錯誤している。そのくらい家は複雑な条件が重なる。

・・・

我田引水となるが、

「緑の家」のクロス通気工法。これは多少手間がかかるが、まず間違いなく継続的に通気機能が保証される設計だと自負する。「緑の家」ではこのクロス通気を20年前から全棟標準で設計図に記載されている。また軒の出の少ない建物で水を透過性能がほとんどないガルバニュームの外壁以外はない。例外のモルタル外壁であるM2ハウスがクロス通気工法の初めとなった。

またこの論文の外壁は今の主流のサイディング時である。「緑の家」はこのサイディングより簡単に水分を移動しやすい無塗装の木の外壁も多い。なぜそれでもこのような事例がないかというと・・・プラスチック製板状の外貼り断熱のおかげである。この素材が通気層の湿気を内壁へ通しにくいので、内壁への湿気の移動が少ないのである。

「緑の家」のオリジナルクロス通気。外貼り断熱に行うから更に効果がある。

まずは基本が第一で、それをコスト共に追い続けると無難な家となる。だから「緑の家」は無難を大事にするのである。下のブログはその根拠にもなる国総研の話がある。

「無難」な愛される家を目指す「緑の家」⑥ 家の形 その1
まず・・・「緑の家」の2017年に建築中の模型をご覧ください。 古くからどこにでもあるような形・・...

紹介したこの論文は実質9ページであり家の外壁について興味深い論文である。読まれたい方は当方までご連絡頂ければお送りする。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする