2020年建築学術講演梗概 その2

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その2は「デシカント換気が夏期の室内温熱環境と睡眠時の人体に及ぼす影響」である。デシカント換気とは潜熱(空気中の湿気)をコントロールしながら換気する事である。

今日の明け方も窓ガラスの外側でびっしりと結露している。外気温が27度、室内温度が26~25度くらいだったので、外はRH(相対湿度)100%に近い。そんな気候の中でよむこのデシカント換気の有効性は気持ちがよい。そもそも何度もこのブログでお伝えしてとおり夏の外気は異常なまでに湿気を含んでいるのは上の写真で一目瞭然である。こんな外気をエアコンで空調されAH(絶対湿度)が下がっている室内に取り込んだら・・・不快以外なにものでもない。当事務所が全熱交換を標準的に使っている理由の一番は、超高断熱住宅の夏期のRH(相対湿度)を下げるためである。では論文を見てみよう。

住宅のデシカント換気又はデシカント空調は10年ほど前から行われてダイキンさんのデシカが発売されてから一般的になった。

愛知県の夏期は気温が高く湿度も高い地域の代表と言える。最近の朝の新潟でも事務所内で25度くらいで冷房しているとシングルガラスが曇る。これは結露であり当然ガラスの外側で結露しているのである。外気温は27度であるが、露点温度が26度位なのであるから、潜熱除去だけ出来る換気扇、空調機はこの時期有効である。

さてこの論文であるが、被験者は22名で全て女性。年齢は女子学生が16名で20才から50才代の女性6名と被験者としては偏っているが、逆にファクターを少し狭めることになるだろう。この22名を自己申告で寒がりと暑がり特性に分けて実験2条件と合せて4グループで行ったとのこと。

実験はエアコンをタイマーで深夜1時半に消し、通常換気とデシカント換気運転のなかでどのように被験者が感じ反応を示すかになる。まず温湿度結果では明瞭な差がみられた。

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低湿度が皮膚温上昇を抑制している結果が下の図3である。大事なポイントは暑がりのひとの皮膚温がデシカント換気にした時に下がる皮膚温の低下幅が、暑がりの人がデシカント換気にした場合の低下率に比べ半分以下に抑制されており、これは暑がりの人と寒がりな人が同じ空間にいたときに互いに許容できる領域が大きくなったと言える。

それを示すグラフが図5となり、デシカント換気のほうが快適感が上がっている。まあ普通に考えればデシカント換気の方が起床時の室温も低いので当たり前であるが、では何故室温が1度低いかは、もし換気の新鮮空気の温度が同じなら、デシカント換気では室内相対湿度が低いから壁や天井を始め家具や衣服に吸収されていた湿気が放出されその一部が気化し顕熱上昇を抑制したと思われる。

よってRH(相対湿度)がこの快適感を支えているのか、室温のわずかな1度が快適感の要因なのかはわからないが、デシカント換気の快適感はよいとの結果。

まとめとしては上のとおりである。ブラインド測定だったのかはわからないし、女性だけということもあるが、湿度管理をおこなう冷房空調の方が暑さに対する幅広い感性に適していると感じた。これは以前から当ブログでも申し上げていることで、冷房時は温度を下げるより湿度を下げることに重点を置いた方がより多様な人の感性にマッチできるとの考えに変わりはない。だから「緑の家」では4年前から日立の再熱除湿エアコンを推奨している。

注意:ここで紹介している論文の全文掲載は発表者の所属団体によって問題になる可能性があるので掲載は控えるが、メイルを頂ければお送りする。

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