天井に気密シートが貼られたと言う事で鳴和台の家に伺って来た。
気密工事は既に壁も始まっているのだが、筋かいや耐力壁合板の複雑に絡む2階の天井の気密が一番誤解されやすい。しかもセルロースファイバーが450mmも載るので下地組も重要である。このため気密チェックは天井が貼られた頃に伺っている。ここで施工に間違いが無ければ壁及び天井の気密工事はまず問題ない。
無論気密施工については全く問題なかった。
また外壁下地はほぼ出来上がっていて、「緑の家」自慢のクロス通気工法も全て終わっている。
この下地については2006年に書いたこのHPが詳しい。
上のリンク先でクロス通気胴縁の理由があるが今日は何故クロス胴縁が良いかを付け加える。
上の写真のとおり何もない平らなところは綺麗になるのが普通。
ところが建物はそんな所ばかりではなく、窓があったり電気配線があったり、換気扇フードがあったりする。特に「緑の家」ように窓位置を自由に計画したり、コーナーサッシのように普通では行わないデザインにするとその下地は複雑になる。例えば下の写真。
ピンク色のところ。
その左側をアップすると、
小さい外壁が「はまる場所」なので、下地をしっかり入れないと外壁が固定できない。するとピンク矢印のようになる。この時にクロス通気の良さが発揮される。
通常のたて胴縁だけなら混みいったこの場所の通気の確保など不安が残るが、クロス通気なら問題はまずない。ザルのような通気工法になるクロス通気の良さは必ずどこかに入り口と出口ができること。確かに他の綺麗な十字に組まれた部分よりは通気量は大きく落ちるが、通気胴縁の目的は
- 壁内の湿気の排出
- 外壁裏側の乾燥
- 通気内を外部と同圧する(雨漏れ防止)
- タイベックの保護
であり、このうち2を除く1から4はこの部分でも一般部分とほぼ同じ性能になる。2は全体面積に対する接触面識が相当大きいので、他の部分より劣るが必ず他の部分につながるので時間はかかるが外壁裏側乾燥を阻害しない。
完成時には下のような木が貼られる。
窓をこのような建物角に計画しなければ通気の下地が混まないのであるが、「緑の家」は内部空間を優先し周囲環境にあった位置に窓を計画するので角に窓がくることを許容する。そのため通気層を通常の2倍の手間を掛けクロスさせるのである。
ハウスメーカーの規格住宅はこのような事を考えてできる限り複雑にならないような窓配置する。特に建物角に窓を配置する規格住宅プランはまず無い。しかしそれでは限りある敷地の大きさにおいて窓配置が最適化されない。最適化したいから下地を考えるとクロス通気胴縁になるのである。
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次は意匠は構造という話。
黄色の矢印部分・・・これは邪魔な柱を無くして屋根が浮いている場所。設計積雪量が1.5mのこの地域では、これだけのはり出た屋根を支えようとすると下のような太い持ち出し梁になる。
しかもこの梁を他の梁より240mm下げることで2階の窓をより床に近づけて計画。鳴和台の家が瓦屋根ではなければ屋根勾配を緩くして梁を下げずに済むのであるが、瓦屋根のご希望でできる限り窓の高さも配慮したいため今回は240mm下げた。
もしこの梁が他の梁と同じ高さだったらこの2階の窓3つは窓下の高さが現在の床~860mmが240mmあがって1100mmになる。窓下高さが1100mmでは巻き尺で確認するとわかるとおりまるで納戸の窓みたい。
この高さの違いが部屋の印象を大きく変えることになり、開放感がまるで違う。「緑の家」ではその開放感だけで持ち出し梁を240mm下げる事がある。
しかし単に240mm他の梁より下げると2階床の高さが揃わず、耐震性の要である床の水平耐力が担保できない。そこで240mm下げた梁の上にもう一つ梁をのせる。
すると梁の背(せい)が600mmにもなるのである。これだけ大きいと一部家族の間の天井裏に入らず見えてくるのであるが、全部見せたいほど立派な合成梁になる。