この連載を通してお読みの方は、
建物は高気密高断熱だけに特化すれば良い家と思っていないはず。
設計者にとって建物で一番大事なのは常日頃から申し上げているとおり、
1.安全性(地震や台風に対し)
2.耐久性(上を30年以上維持)
であり、その次に
3.快適性(高気密高断熱など)と経済性(イニシャル・ランニングコスト)
となりこの順番で設計を行っている。
意匠・デザイン性はについては人それぞれ好みがあるので1から3を包括するようなものだと理解している。無論包括だから1から3の中で全てに関わり、それが無いとつまらない家にになるが、おのおのの好みというところで評価がむずかしい分野。で、本連載テーマは2.の耐久性についてのことである。
さて、
先日セルロースファイバーの吸放湿の感度の実験を行った。実験すると期待通りの結果でないことで驚いたり、ほっとすることもある。今回はその両方であった。
結果は・・・予想とは違い今回の条件ではGW(グラスウール)断熱材+木と同じくらいか穏やかな吸放湿感度であった。但しある条件でのほんのわずかな結果なので、全く違う特性を見せる可能性はある。
実験前は古紙から出来たセルロースファイバーだからもっと常温部分(20度から60度)での放湿感度がよいと思っていたが、やはり実験をしてみないとわからない。セルロースファイバーの添加剤のホウ酸が効いているのか、その他の撥水剤が効いているのか・・・。それとも古紙・新聞紙はこの温度での放湿の感度が低いのか・・・?
このように密閉されたセルロースファイバーの温度が60度まで上がったのに結露はGWと同じかそれより少ない。正しく比較出来ないが、GWの助走状態・実測状態ではポリ袋を密閉はしておらず小さな空気穴4個があいているのでセルロースファイバーより結露が発生し難い条件。つまりこの結果を素直に受け取る限りセルロースファイバーの放湿感度はGWより低い。
「緑の家」ではこのセルロースファイバーを天井に使う事が9割。その6で話したとおり天井面の状態は壁より厳しい温度や湿気状態。幸か不幸かその厳しい環境に湿気の放出感度の低いセルロースファイバーを使っていたことはよかった。ただ「緑の家」の標準設計で天井にセルロースファイバーを選んだのは感度が低いからでなく、コストと施工しやすさとブローイングGWがチクチクするので使いたくなかったことである。
セルロースファイバーは壁充填断熱に使用するときにGWと違い防湿フィルム(ポリエチレンフィルム)を貼らなくてもよい地域条件があるが、なるほどこの特性があるからかもしれない。ただし、私はやはり安全性の高まる防湿シートを省略する事は出来ない。
数回の実験ではある条件でのほんのわずかな結果しか見ることができなので、全く違う特性を見せる可能性はある。ただ、全体の概要を知るには今回の実験で得られた、GW、セルロースファイバー、フェノバボードの放湿の状態は参考になると考えられる。