この写真は、 7年位前のある家の設計と施工が同属会社の工事中の写真。
その2では、設計と施工の分離が完成後とても大事ということをご説明したい。
設計と施工が分かれていると瑕疵があった場合、責任の所在が明確にならないため良くないという不思議な主張がされていることがある。責任が明確にならないのは、しっかりした図面がないからの一言。施工と設計が違う会社だからではない(また付け加えるなら、工事監理者が施工側の人間だとさらに問題)。60枚以上にもなる図面があれば、その記録があるので責任の所在はおのずから明らかになる。なるから公共建築では設計と施工の分離が当たり前である。責任の所在が明らかにならないのは、記録が建て主側にはないということが一番。例えば設計や工事監理が施工と同じ場合の問題点は以前当コラムに載せた。まさにこの会社が設計と施工が同じほうが責任の所在が明らかになるといっているが、その写真の現場をどう説明するのだろう。「昔のことだから、釘の指定の記録がないので仕方ない」といわれた建て主はたまらないだろう。このころからしっかりと、専用釘以外は問題あると住宅金融公庫にも記載があるし、業界では常識。
また、一番感じるのは設計と施工が同じ会社であると、建築後(入居後)問題が起きたときに建て主側に立つ専門家がいないこと。設計者は、建物が図面どおり建築されるだけでその職務が終わることはない。建築後その建物に何か問題があった場合、設計の瑕疵なのか、施工の瑕疵なのかを一番わかる立場である。もし設計に重大な瑕疵があれば、施工中に普通は発覚し施工や建て主から是正を求められる。一方施工の瑕疵があり、それが工事監理中に見つけることのできないもの、例えば木材の品質(造作材や構造材も製品上の欠陥は、工事監理で見つけることは難しい)、設備機器や配管の品質等は専門性が高いので一般的に難しい。このような不具合が見つかったときに、第三者の立場(建て主さん寄りの)できちっと対処してくれる。ところが、設計と施工が同じ会社の場合、どちらの原因であっても経費(修繕費)が発生するので、なるべく両者とも穏便に済ませようとする。これは営利団体である以上仕方のない性である。全くの別会社であればそういうことにはならない。ましてや設計者は建て主に雇われた専門家である。間違いなく分離されたほうが、責任の所在は明らかになりやすいことは、冷静に考えればわかる。
また、設計と施工の分離の場合、コストコントロールが難しいというご指摘もある。これもう不思議な話。設計と施工の分離は、適正な価格がわかる最良の方法。万一、仮にどこに見積もりを出しても予算がオーバーするなら、その建物はその位の資産価値があることを、皆が認めたもの。予算オーバーなら、減額設計を行えば適正価格になるし、資産価値と同様の価格ということ。一方、設計と施工が同じ会社だとコストコントロールできるという主張は、昔の棟梁一括請負と同じ主張。予算があわなければ、建て主の気にしないところ(気づかれないところ)の仕様を削って予算を合わせる(利益を出す)ことになる。それが営利団体。勿論、図面と仕様がしっかりあれば(図面枚数60枚以上)こういうことにならないだろうが、ほとんどが少ない図面数(30枚程度)。
また、入札で建築後施工会社が安く受けたのことで倒産しやすく、その倒産後困る。などというのもおかしな話。しっかりした建物は、仮に造った会社が倒産しても特に大きな問題はない。建築後その施工会社が倒産して困るのと思うのは、無料の不具合修正がなくなるという恐怖感。しっかりとした設計で工事監理を行った建物は、不具合が少ない。先日倒産した大手マンションメーカーの住民は、建物自体では多きな問題はないはず(管理会社の倒産は大変困る)。
色々な言い方や主張がある。それは仕方のないことあるが、裏づけのない事象で「恐怖」をあおる様な説明は、あまり歓迎しない。